アーセナル新戦力分析: リカルド・カラフィオーリ

分析海外記事

少し時間はかかったが、アーセナルがついにボローニャから新戦力のカラフィオーリの獲得を完了した。彼がどのような選手で、何をチームにもたらしてくれるのか、解説していこう。

アーセナルファンは何度か『この選手に怪我さえなければ・・・』と思ったことがあるかと思うが、カラフィオーリは6年前、まだ自身のキャリアが本格的に始まる前にローマでのUEFAユースリーグでの試合でキャリアの継続が危ぶまれるほどの怪我を経験している。

地元紙によると、医師はモトクロスで見るような怪我だと話し、10年に1度しか起きないようなものだったそうだ。だが、カラフィオーリは3度の移植手術と10か月のリハビリを経て復帰し、今や世界でも有数のビッグクラブの一つに加わることとなった。

彼はもともと背は高いものの痩身で、故郷のローマでは左サイドバックとして頭角を現した。体格は今とはかなり異なっていたため、これがモウリーニョのもとローマでチャンスを得られなかった大きな要因の一つかもしれない。

その後のジェノアでのローンも上手くいかず、カラフィオーリと代理人は再チャレンジの場を求めてバーゼルへとクラブを移ることを決めた。

監督のフォーゲルはカラフィオーリを3バックの一角として起用し、彼の高い技術を最大限生かそうとした一方で、最終ラインの裏と中盤両方において、更に広いスペースをカバーできるように、フィジカル面での工場を要求した。

今のカラフィオーリの原型が出来上がったのがこのシーズンで、その後昨シーズン、セリエAで5位となり、60年ぶりにCL出場権を勝ち取ったボローニャで本格的にブレイクを果たすこととなった。

カラフィオーリの強み: ボールの持ち上がり

カラフィオーリのプレイで真っ先に目を引くのはやはり、彼がいかにやすやすとボールを持ちあがるかだろう。現代ではボールを持ち上れるCBというのは少なくないが、彼はスペースと見るやドリブルであがり、危険なエリアで数的優位を作り出す。

昨季彼が記録したドリブルからのチャンス演出14というのは欧州5大リーグで最多の数字で、比較的落ち着いたビルドアップを志向するチアゴ・モッタのボローニャでは切り札のような存在だった。

ただし、持ち上がりのタイミングはもう少し洗練する必要はあるだろう。カラフィオーリの隙あらばボールをもって上がろうとする姿勢は彼の強みだが、一方で、少しボールを持ちすぎ結果的にロスとしてしまう場面も何度か見られた。

最終ラインからチャンスを演出できるのは非常にユニークな存在だが、一方で、相手にカウンターのチャンスを与えてしまえば、プレミアリーグでは大ピンチにつながる可能性も高い。

ボール配給

また、ボール配給という面では、彼のショートパスは非常に安定感がある。カラフィオーリの昨季のパス成功率は90%とイタリアで2番目に高い数字だった。

ボールを受ける時の態勢もよく、ラインを突破するパスも状況に応じて出すことができる。ただ、カラフィオーリのロングパスは正確ではあるがふわりとした軌道であることも多く、もう少し低めの弾道で速いスピードのパスを練習する余地はある。

守備

守備面では、カラフィオーリは最近のアーセナルの選手たちと似た素質を備えている。積極的に前に出て相手にタイトについていくことを好み、試合の読みや予測を武器に、相手のパスの勢いが足りていない場面や少しストライカーの反応が遅れたとみるや、ボールを奪いに飛び出していく。

アルテタがデュエルに勝つことを愛しているのは周知のとおりだが、カラフィオーリ昨季欧州でデュエル勝率が最も高い選手の一人であり、ボローニャで最もデュエル勝利数が多い選手だった。

また、彼の90分当たりのボール回収数は7.63と欧州トップ1%の水準で、これもまた彼の積極性とピッチ上で何かを起こそうという姿勢を示している。

そして、このデュエル勝率の高さは地上でだけ見られるわけではなく、空中戦も同様だ。カラフィオーリは昨季70%の空中戦に勝利しており、ジャンプ力があるだけでなく駆け引きにもたけている。

カラフィオーリに最適なポジションは?

カラフィオーリはアーセナルでは左サイドバックでプレイするのではないかともみられており、ベン・ホワイトと比較する声もあるが、カラフィオーリはスタイル的にホワイトほどはスムーズなプレイが得意な選手ではない。

ホワイトは長距離走が得意でよりスリムで前掛にプレイするのに適したテクニックを備えているが、カラフィオーリの方が少し体格が良く、そこまでの敏捷性がない。

そういった意味では、プレミアリーグやチャンピオンズリーグでスピードを備えたウイングと対峙することを想定すると少しカラフィオーリは苦戦するかもしれない。

アタッカーについていくのではなく飛び込むことを選択してしまい、ファウルを貰ってしまう所は想像がつく。だが、それはサイドバックの位置でカラフィオーリのような選手を起用するにあたっては致し方ないトレードオフだろう。

彼は少しネマニャ・マティッチやラビオを思い起こさせるところがある。細かな動きはそこまで得意ではないかもしれないが、一旦フルスピードで勢いに乗ってしまえば、止めるのが非常に困難だ。

逆に、CBとしてはこの点はそこまで問題にはならないだろう。今のガブリエルのように、必要に応じてサイドに出ていきながらも、ストライカーとのバトルをこなすCBの役割をこなせるはずだ。

昨季カラフィオーリはオシムヘンやヴラホヴィッチ、テュラムといった素早くパワフルなストライカーたちに後れを取ることはなかったし、ハイラインを敷くガナーズにとって理想的な人材といえるはずだ。

彼に最も合ったポジションはどこなのかと問われれば、個人的にはCBではないかと思う。だがここまで彼は様々なポジションでプレイしてきており、現時点で一つのポジションに適性を限定するのが難しいのも事実だ。

また、現代サッカーでは選手が試合を通してずっと一つのポジションでプレイすることはまれで、そのように考えること自体があまり意味がないのかもしれない。

ユーティリティ性

彼の魅力は2-3ポジションで良いプレイを見せられることで、これによりアーセナルの戦術の幅は広がるだろう。最近のアーセナルはガブリエルにほとんど怪我がないという意味で非常に幸運だが、カラフィオーリはガブリエルの控えを務めるあるいはポジション争いをできるはずだし、左サイドバックでは、よりパスが上手くボール前進力の高いキヴィオル、あるいはより守備力があるがジンチェンコのように中盤でプレイすることを苦にしない選手としてプレイできるだろう。

ボローニャやイタリアのU-21の試合ではかなり頻繁に中盤の底や更にその前、相手のライン感にまで顔を出していた。

もちろん、長期的に見て彼のポジションがMFである、ということはないだろうが、彼が中盤でのプレイを全く苦にしないというのはデクラン・ライスがより自由にボールを追い、プレスに出ていくことを可能にするだろう。そして、カラフィオーリがボールをもって前線に上がっていく際には逆にライスが下がってバランスをとってくれるはずだ。

まとめ

アーセナルがカラフィオーリ獲得に成功したのは称賛されるべきだろう、競合が多くおり、また50%の再売却条項をバーゼルが保持していたりと、交渉を複雑にする要素もあった。だが、カラフィオーリ本人の意志が交渉をスムーズにしてくれたというのあったに違いない。

これまではイタリアでのプレイがメインで、まだ今後成長も必要となるであろうDFに払うにしては中々高額な移籍金だが、カラフィオーリはアーセナルの最終ラインにとって非常にエキサイティングな補強になるだろう。

彼の技術の高さとフィジカル、積極的なプレイスタイルはアーセナルの左サイドを活性化してくれるに違いない。

DFの獲得が今のアーセナルにとって本当に必要なのかという疑問の声も上がるかもしれないが、マンチェスター・シティとタイトルを争うにはほんの少しの違いが重要となる。チームをがらりと変えた存在であったジェズスとジンチェンコ今のチームでは絶対的な存在でなくなってしまっていることが示している通り、アルテタのアーセナルはすさまじいスピードで進化しており、そのためには、常により良いオプションをチームに加える可能性があればそれを逃すべきではないのだろう。

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Posted by gern3137