ジンチェンコの最大の懸念は対人守備力の不足ではない

分析Tim Stillman,海外記事

オレクサンドル・ジンチェンコはアーセナルにもたらすものも大きいが、そのトレードオフも大きい選手だ。タイトルレースのプレッシャーが高まるにつれて、アーセナルファンは徐々にジンチェンコがチームに与えるネガティブな影響にフォーカスし始めた。

そして、それはリバプール戦を経てさらに高まっている。

もちろんジンチェンコに関する評価は様々なものがあるだろうが、いずれにせよ彼の強みが1対1の守備でない、という点に関しては誰もが同意するだろう。そして、それは今後も変わらないに違いない。

このジンチェンコがボール保持時にもたらすものと、ボール非保持時の守備の不安のトレードオフについてはアルテタも承知しており、もし冨安あるいはティンバーのどちらかがフィットしていれば、この試合ではジンチェンコではなく彼らが左サイドバックとして先発していた可能性が高い。

ただし、ジンチェンコに関しては彼がボール保持時にもたらすクオリティと守備の不安をフェアに見て評価を下す必要があるように思われる。

アーセナルは今季リーグトップクラスの堅守を誇っているが、これをバックラインにジンチェンコを起用しながら成し遂げているのだ。

リーグ最高の守備というのは90分間タックルをし、シュートを止め、ブロックを行いヘディングでクリアし続けることができる最終ラインを備えているという意味ではない。

もちろん、いざというときにはこれらも重要となり、これらの守備アクションに関して言えば、ホワイト、サリバ、ライス、ガブリエルといった選手たちはジンチェンコとは異なる次元にある。

だが、実際の所リーグ最少失点を誇るチームはそもそも我々が"守備"と呼ぶようなプレイを見せないことが多い。

ずっとボールを保持し、相手を自分たちのゴールに近づけさせなければ自然と失点は減るからだ。そして、それに関してジンチェンコの貢献は誰よりも大きい。アーセナルはジンチェンコに代えてよりソリッドな左サイドバックを起用することもできるが、ジンチェンコを起用した方が良くポゼッションをコントロールできるはずだ。

また、我々はアルテタがジンチェンコに要求しているタスクの難易度を少々過小評価しているように思える。

彼は左サイドバックと同時にMFであることを求められており、これはかなりの離れ業だ。リスクも高く、このような選手を起用してスムーズにプレイできるチームは少ない。

ジンチェンコはメンタルも強く、この役割に適している。

アンフィールドでの後半の最初の15分間、アーセナル、そしてジンチェンコのパフォーマンスは残念なものだった。私のタイムラインはジンチェンコの交代を願う声であふれていたが、アルテタはそれをせず、ジンチェンコはプレッシャーを受けながらも中盤に入り続けた。

結果的に時間が経つにつれアーセナルは試合のコントロールを取り戻し、ジンチェンコもそれは同様だった。チームと彼自身がパニックを起こすことなく当初のプランを遂行したからこそこれは出来たことだ。

これは非常に勇敢なプレイであり、このような高いプレッシャーがかかる場面でハイリスクなプレイを続けるという選択ができる選手は多くない。

ジンチェンコは恐らく今のアーセナルで最も強心臓な選手の一人だろう。そして、チームはそのような選手を必要としている。ジャカとパーティがいない今のアーセナルにおいて彼のボール前進力の重要性もより高まっている。

もちろん、自信にあふれたプレイやプレッシャーに動じないのは時としてリスクとなる。自信を持ちすぎたGKは時として失点につながるミスを犯すかもしれないし、例えばパトリック・ヴィエラは非常に頼りになるキャプテンではあったが、何度もレッドカードを食らい、出場停止となっていた。

より最近で言えばグラニト・ジャカは非常にメンタルの強いリーダーだったが、それがどのようなプレイに繋がったかはまだ記憶に新しい。ティエリ・アンリは勝者のメンタリティを持っていたが、時としてパスが届かなかった際に若手のチームメイトを睨みつけることもあった。

もちろん、こういったメンタリティのバランスをとるのも監督の仕事だ。

ジンチェンコに関して一番の懸念点は1対1の守備力の不足というよりも、むしろ軽率にボールを失ったり、試合の温度感を読み違え、単に前にボールを送ればいい時に中にボールを返してチームを危険にさらすようなプレイの頻度が高いことにあるように思われる。

もちろん落ち着いてボールを中に返すようなパスは機能すれば試合を落ち着かせる効果的なものとなりうるが、失敗してしまうとファンは彼は一体何をやっているんだと頭を抱えることになる。ジンチェンコはこの判断のバランスを少し修正する必要があるだろう。

今季のフラム戦はジンチェンコがもたらすものを象徴するような試合だった。キヴィオルを左サイドバックに置いたアーセナルは左8番のハヴァーツの不調もあって試合をスムーズに展開することに苦戦していたが、ジンチェンコとビエイラが投入された途端に試合は大きく変わり、1-0のビハインドから2-1にもっていくことに成功した。

だが、そこからジンチェンコの不必要なボールロストからのコーナーキックでアーセナルは失点した。

ただし、トップレベルのチームはこういったリスクを計算して許容しながら攻撃に貢献できる選手を守備陣に組み込むものだ。

ジョン・ストーンズは守備はワールドクラスとは言えないが、それ以外の部分が評価されグアルディオラは起用している。トレント・アレクサンダー=アーノルドが抱える守備の不安は常に注目されるが、彼がボールを持った時に見せるプレイのおかげでクロップは彼をベンチに置こうと考えることはない。

このような選手に関して、ファンはどちらかというと不安や懸念が先行し、より保守的な起用を求める傾向にはあるが、監督はそのようには考えず、メリットとデメリットを天秤にかける。

とはいえ、今季のジンチェンコがリスクとリターンのバランスを少々修正する必要があるのは間違いないだろう。昨季ジンチェンコはフィットさえしていればほぼ常に先発していたが、今季はそこまで絶対的な立ち位置にはない。

彼がストーンズやアレクサンダー=アーノルドのように、守備よりもそれ以外の部分の貢献が評価され、常に起用されるような存在になるためには、1対1の場面でパオロ・マルディーニのような守備の名手になる必要はない。だが、危険なエリアでチームメイトを困らせてしまうようなパスを出す頻度を減らす必要はある。

これはある程度コーチングで何とかすることができる問題のように感じられるし、そこまで大きな修正は必要ないように思える。あとはジンチェンコがこれにどう向き合うか次第だろう。

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Posted by gern3137