アーセナルが今季解決しなくてはならない二つの課題
今回の代表期間を終えて、次回の代表ウィークは3月までなく、プレミアリーグのシーズンは非常に重要な局面を迎えることになる。
今季ここまでのアーセナルの出来は完ぺきではないものの及第点といったところで、勝ち点的にはシティに肉薄しているが、いくつかの課題を抱えているように思われる。
もちろん、世界中のクラブが課題を抱えており、シティも同じわけだが、彼らが抱えている課題というのは『今度のクルーザーパーティにシャンパンを多く注文しすぎてしまっただろうか?』といったタイプのものだ。一方で、アーセナルが抱えている悩みは『カイ・ハヴァーツは単に自信を失っている才能のある選手なのか?それとも大きく過大評価されており、アーセナルは明らかに移籍金を多く支払いすぎたのか?』『ダビド・ラヤは相手のストライカーにパスをプレゼントすることがなければ最高のGKなのだが…』などといったものだ。
アーセナルは攻撃を機能させられるか
今季のアーセナルを語るうえで非常に頻繁に『コントロール』という言葉が使われている。アーセナルが昨季のスリリングなサッカーではなく、より相手にチャンスを作らせないことを重要視しているのは明らかだ。
確かに昨季はリース・ネルソンの決勝点のような非常に記憶に残る瞬間も見られたが、ホームでブライトンに3-0での敗北も喫している。
アーセナルは100m£を支払ってリーグナンバーワンの守備的MFの獲得を行い、今季ここまでプレミアリーグでの被xGを一試合当たり0.76に抑えている。これは去年の1.1と比べて大きく減少している。
同時に、昨季よく見られた試合開始直後の得点も今季はほとんどなくなっており、これは意図的なものだろう。一試合を通して戦い続けられるようにスタミナをセーブし、かつ4月には完全に疲れ切っている、という状況に陥らないための策だ。
だがその結果として、アーセナルの得点力は下がっている。一試合当たりのxGは昨季の1.89から1.75へと下がった。
問題は、試合をコントロールすることは得点力とトレードオフなのか、という点だろう。
特にアウェイの試合でアーセナルは一点差で勝利を収める試合が増えている。確かにクリスタルパレスやエヴァートン相手の1-0での勝利は完全に試合をコントロールできていたが、一方で、どれだけ試合をコントロールできていても、得点が少なければ予想外の同点弾や逆転弾のリスクがある。
相手にほとんどシュートを打たれずとも、素晴らしいストライカーに点を決められる可能性はあるし、少し不運な出来事があれば失点し、勝ち点を落とす可能性がある。ニューカッスル戦がまさにその例だろう。
個人的にはアーセナルの攻撃力不足と守備力の向上は必ずしも戦術的なスタイルだけでなく、プレイする選手の質も影響しているように思う。
今季ガブリエル・ジェズスはプレミアリーグの試合で一試合しかセンターフォワードとして先発しておらず、彼がいないアーセナルの前線はどうしても流動性を欠いてしまう。
ジェズスが率いるアーセナルの前線は昨季だれにも止められないように見えた一方で、彼不在時はより単調に見えた。
日程の都合もあってジェズスはCLの試合では3試合をストライカーとして先発しているが、これらの試合で素晴らしいパフォーマンスを見せ3戦全てで得点している。
サッカーの分析が必ずしも複雑で何回であるとは限らない。単純にジェズスの不在がアーセナルの攻撃を緩慢なものにしているのかもしれない。
カイ・ハヴァーツを輝かせることができるか
攻撃陣の人員に関して言えば、昨季のアーセナルとの大きな違いがグラニト・ジャカの不在だ。
そして、ジャカの代役としてのハヴァーツの獲得に関してのアーセナルのロジックを理解するのは簡単だ。ジャカは昨季チームの誰よりも頻繁にボックスに飛び込み7ゴール7アシストを記録した。であれば、彼の代役として必要なのは同じようにボックスに飛び込んで得点やアシストが挙げられる選手だ。
ハヴァーツがボーンマス戦で調子づけのPKを譲ってもらったことからも見て取れる通り、彼の役割に得点やアシストは必須だとみられているようだ。
実際の所、興味深いことに、ハヴァーツは昨季のジャカの役割を比較的よくこなしている。中盤におりてのプレイもできるし、より前で体を張ってボールを収めることもでき、プレスやボール奪取など守備にも積極的だ。
だが問題は、おそらく最も期待されていたであろう得点とアシストの部分が昨季のジャカの数字とは比較にならないという点だ。
そして、先ほどの話と通ずるものがあるが、なぜアーセナルが昨季ほど得点を挙げられていないのか?という問いを考えた際に、去年得点とアシストを挙げていた選手の代わりにチームに入った選手が得点とアシストを挙げられていない、という問題を無視するのは不可能だ。
だが、ハヴァーツが結果を残せておらず、2番手3番手のファビオ・ビエイラやエミール・スミスロウにもチャンスが訪れているが、この左の8番のポジションをものにするようなパフォーマンスは見せられておらず、むしろジョルジーニョを中盤の底においてライスを一列前で起用するという形に監督は信頼を置き始めている。
だが、得点力を上げる、ということを考えたときに、ジョルジーニョ(もちろん彼は素晴らしい選手だが)に代えてハヴァーツあるいはビエイラ、スミスロウを起用した方が効果があるはずだ。
さらに、この布陣の調整はピッチのほかのエリアにも影響を及ぼす。スピーディなアタッカーを揃えているチームに対してジョルジーニョとジンチェンコを起用するのは現実的ではなく、この形を採用するのであれば、冨安がプレイすることとなり、ジンチェンコのビルドアップへの貢献はチームから失われる。
また加えて、トーマス・パーティとガブリエル・ジェズスの不在がマルティン・ウーデゴールに大きく影響を与えており、チームは攻撃においてサカとマルティネッリの二人に頼りきりになってしまっている。出場分数という観点で見てもこれは懸念事項だ。
もちろんだからと言ってアーセナルは今のコントロール重視の方針を捨てる必要はなく、細かな調整でチームを機能させることは可能かもしれない。
だが結局昨季のシティがどのように彼らのクルーザー&シャンパン問題を解決し、調子を取り戻したかというと、素晴らしいCB4人とロドリを並べる、というのが大きくものを言った。
結局のところ、アーセナルに必要なのは継続してプレイできるガブリエル・ジェズス、そしてハヴァーツ、ビエイラ、スミスロウのうち誰か1人が安定して左の8番のポジションでプレイできるほどのパフォーマンスを見せてくれることを願うことなのかもしれない。
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