アルベール・サンビ・ロコンガの将来はアーセナルにあるか?
夏の移籍市場の最終版、トーマス・パーティが既に離脱している状態で、エルネニーのけがが明らかになった際にアーセナルがとった対応が、彼らのサンビ・ロコンガへの評価を表していた。
クラブはウイングを狙っていた方針を転換し、キア・ジューラブシャンのクライアントでもあるアストン・ヴィラ所属のMFドウグラス・ルイス獲得にかじを切ったのだ。
アーセナルが少しパニック気味だったのは見て取れた。
結果的にエルネニーは予定よりも早く復帰でき、パーティの離脱も移籍市場最終日から3週間程度だったが、アルテタがある程度長期間にわたってサンビ・ロコンガを今パーティがプレイしているアンカーの位置で起用するつもりがないのは明らかだった。
恐らく、監督はサンビの最適ポジションはアンカーではない、という決定を下していたのだろう。
昨季4月、アーセナルがブライトン戦とサウサンプトン戦で敗北を喫したのちアルテタはサンビをメンバーから外し、低い位置にエルネニーを起用することを決めた。このポジションでのエルネニーのポジションは契約延長を勝ち取るに十分なもので、エルネニーがパーティの控えであることが明確になった。
サンビ・ロコンガのスキルはより前目の位置、今のジャカのポジションの方が向いているとコーチ陣は考えたのだろう。
だが問題は、このポジションにおいても彼は序列が高いとは言えないことだ。恐らくジャカが起用できない場合の第二のオプションはファビオ・ビエイラになるだろう。もしかすると、スミスロウが怪我から復帰すれば彼がここでプレイする可能性もある。
そして、主軸の二人であるジャカとパーティが30代となっている今、アーセナルは更なる中盤の選手の獲得を狙っている。
考慮すべきはサンビをアーセナルが獲得した時点でグラニト・ジャカのローマ移籍はほぼ決定的となっていた、という点だろう。
だがそこから事態は変わり、今のアーセナルでロコンガにとって今のジャカのポジションで道が開かれているようには見えない。彼はELのチューリッヒ戦でこのポジションでプレイしたが、何とも言えないパフォーマンスだった。
サンビ・ロコンガは彼が一体どのようなポジションを本職とする選手なのか、というアイデンティティの問題を抱えている。
まだこれをだれもきちんと把握できないように見えるし、アルテタのシステムでは、ボール保持時に基本的にボールを追い越して上がっていく5人、後ろで待つ5人、という形でにきれいに分かれることが多いが、ロコンガはこのどちらにもはまり切らない。今のところ彼はボールの前に走りこむことも、後ろに控えて守備に備えることもそこまで好むプレイではなさそうだ。
ただし、サンビにフェアに言えば、どのような選手にとってもパーティの控えというのは非常に難しいものであるということは、考慮されるべきだろう。
実際のところ彼のアンカーとしてのパフォーマンスはパッとはしなかったが、そこまで悪かったというわけではないように思う。そもそも、パーティと比較して見劣りしないMFというのはプレミアリーグにはほとんど存在しない。
ロコンガは何度か出場機会の少なさに不満を募らせている様子を見せているが、確かに、アンデルレヒトでのキャプテンという立場からほとんど出場機会がないローテーション要員という変化は本人にとっては受け入れるのが難しいものであっただろう。
アーセナルに関してだけではなく、同様のコメントをベルギー代表監督マルティネスに向けてもインタビューでロコンガは発言している。
正直に言って、現状を見る限りサンビ・ロコンガの将来はアーセナルにないのではないか、と結論付けざるを得ない。恐らく冬あるいは夏にアーセナルはもう一人MFを獲得するだろうし、今季の後半はもうELのグループステージもリーグ杯もないことを考えると、ロコンガに出場機会が多く訪れるとは考えづらく、冬にローンに出る可能性すらあるかもしれない。
ただし、これはサンビ・ロコンガの獲得がアーセナルにとって失敗だったということを必ずしも意味するわけではない。
ここまでのところ彼は必要に応じてパーティの控えとして彼の負担を減らすことには成功した。22歳になり、自信のキャリアにおいて定期的な出場機会を必要とする時期が来たが、まだ若い選手でもあり、近いうちに売却となったとしても、アーセナルが獲得した時の移籍金を大きく下回る、ということはないだろう。
結果的に、比較的ローリスクのギャンブルがそこそこの着地点に落ち着いた、というだけのことだ。
これが最近のアーセナルの獲得方針の大きなメリットの一つでもある。ベテランとは違い、チームにフィットしないとなれば若手選手はより売却が容易だ。
一方で、若手の多くは成長し、活躍するには一定の出場機会を得てリズムをつかむことが重要となることも多い。それはエミ・マルティネスやジョー・ウィロックを見れば明らかだろう(彼らもまた、良い額の移籍金をアーセナルにもたらした)
散発的に出場する控え選手としてはエルネニーのようなベテランの方がよりパフォーマンスが安定する見込みは高いが、市場ではそのような選手の方が高額であることが多く、また給与も高いため、選手がフィットしなかった場合のリスクが大きくなる。
アーセナルはサンビを獲得した時点で、彼が戦力となるためにはある程度時間を与え、成長させることが必要だとわかっていたはずだ。パーティが在籍している間はクラブとしてはサンビがバックアップとして機能してくれればよい、と考えていたに違いない。
結局のところ、彼の将来はアルテタがマルティネッリをかなり時間をかけてコーチングしたように、サンビにも同じようなコーチングを施す用意があるかどうか次第、ということになるだろう。
だが、左サイドを務めることも多かったオーバメヤンがチームを離脱した際にはアルテタはマルティネッリを信頼し育成しようとし、代役を獲得はしなかった。一方で、パーティとエルネニーが離脱した際にアーセナルは代役を獲得しようとした。
これを見る限り、どうやらサンビ・ロコンガの将来はアーセナルではないどこかほかのクラブにあるのかもしれない。
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