キーラン・ティアニーと冨安健洋に関して 後編

分析Tim Stillman,海外記事

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一つ興味深いのは、今季序盤に、アルテタはティアニーよりもジンチェンコを優先的に左サイドバックとして起用していたという点だ。中盤に入ってプレイさせるのであれば、確かに、ジンチェンコはよりこの役に適している。

ジンチェンコは守備では若干不安もあるが、それよりもボール保持力を高め、試合をコントロールすることを優先する、ということだろう。

ティアニーは大外を駆け上がり、タッチライン際から攻撃に貢献するのが得意な左サイドバックだが、恐らく、ティアニーが絶対的なスタメンの座を勝ちとれていない背景には、アルテタがそもそも彼の備えた攻撃面のクオリティをそこまで重視していない、という点がある。

一か月ほど前にマルティネッリの今季のパフォーマンスをデータから考察したが、今季の彼に関して非常に興味深かったのは、昨季と比べて、彼がかなり大外のワイドな位置でのプレイ機会を増やしている、という点だった。

それはサカに関しても同様で、今季のアーセナルの左右のウイングはビルドアップ時には外に開いて幅をとる役目を担うことが多い。彼らはアルテタがコーチを務めていた時代のスターリングとサネの2人を思い起こさせる。

そして、このような形であれば、サイドバックのオーバーラップはそこまで必要ない。

アルテタが前線の5レーンに配置するのはマルティネッリ(ジェズスとマルティネッリはポジションチェンジを行うことも多いが)、ジェズス、ウーデゴール、サカの4人に加えて、後ろから駆け上がってくるグラニト・ジャカであることが多い。

今季のアーセナルでは、サイドバックはこの5人に加わらないのだ。彼らはアタッカーというよりもMFとしてプレイすることを求められている。だから、ティアニーのファイナルサードでのクオリティはそこまでアルテタは求めていないのだろう。

実質的に今季のアーセナルでアルテタがDFに求めているのは、ボールロストした場合に即座にボールを再回収し、新たな攻撃の起点となる、あるいはそれが出来ないのであれば、カウンターに備えてスペースを埋めて守ることだ。

そして、この枠組みの中では、マルティネッリとティアニーという組み合わせは最適とはいえない。

もし左サイドでプレイするのがスミスロウであれば、ティアニーとの相性はもう少し良さそうだ。スミスロウはマルティネッリほど一対一でのドリブル突破を仕掛けることはしないし、よりオーバーラップしてくるサイドバックと連携して崩すことと好む。

だが、今季スミスロウは怪我で離脱が続いている。

左利きのティアニーが明確に冨安に勝っている点は大外からのクロスだが、これもアルテタはそこまでサイドバックに求めているクオリティではないに違いない。逆サイドのセドリック・ソアレスも全く出場機会を得られていない。

今季のアーセナルのクロス数はリーグ15位となっており、クロスはアーセナルの攻撃の主要な一部ではないのだ。左右のウイング共に攻撃の最終局面では中に侵入することも多いし、ウーデゴールは右に流れてプレイするが左利きだ。

現在のアーセナルで攻撃時に選手が外に流れるのは、そこから再び中に入るためなのだ。

もちろん、今後この状況が変わる可能性も十分にある。リバプール戦の前には冨安は出場機会を得るのに苦戦していた。チームは進化するし、連携も変わる。ティアニーのクオリティがチームにとって非常に重要となる日も来るかもしれない。

だが、現時点では、冨安のクオリティこそがアルテタが今のアーセナルの左サイドバックに求めているもののようだ。

リバプール戦前にティアニーにアルテタは、彼が先発を外れたのはティアニー自身のパフォーマンスが理由ではなく、戦術的な理由だと告げたそうだが、もしかすると彼はリバプール戦だけのことを話していたわけではなく、もしかすると、今季アーセナル全般についてを話していたのかもしれない。

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Posted by gern3137