ガブリエル・マルティネッリの変化と躍進
シーズン開幕前に、ジェズスが加入したことによって、マルティネッリのパフォーマンスのレベルも1段上がるのではないかという記事を書いたが、実際にその通りになっている。
とはいえ、これは別にそこまで難しい予測だったというわけではない。より動き回るタイプのストライカーが居た方が、サイドのアタッカーが輝くのは当然だ。
まだ出場分数がそこまで多くないため、導き出せることは限られているが、今回の記事では、マルティネッリの今季の数字を見て見よう(数字は全て90分当たりのもの)。
試合を目で見るだけで、今季のマルティネッリは一味違う、と感じるが、かなり驚きだったのは、今季ここまでのマルティネッリの90分あたりのxGがキャリアを通して最低の数字であるという点だ。シュート数や、枠内シュート数自体は昨季よりも増えているのにもかかわらずだ。
xG | シュート数 | 枠内シュート数 | |
---|---|---|---|
2019-20 | 0.31 | 0.41 | 1.63 |
2020-21 | 0.52 | 0.31 | 3.06 |
2021-22 | 0.34 | 0.29 | 2.42 |
2022-23 | 0.27 | 0.39 | 3.13 |
冒頭の記事内で私は、ジェズスがサイドに流れることでマルティネッリが中に入ってゴールに迫る場面が増えるのではないか、という予測を立てた。
だが実際には、確かにジェズスはサイドに流れ、それにより空いたポジションにマルティネッリが入る場面もあるものの、どちらかというとマルティネッリはジャカやジンチェンコとポジションチェンジを行うことの方が多い。
そして、ジェズスは左サイドに限らず自由自在に動き回っている。
今季のマルティネッリの数字は、ストライカー型のウイングというよりも、サイドで幅をとる役割を任された選手のそれに近い。シュートの距離の平均も今季は16.9ヤードとこれまでで最もゴールから遠い位置からのシュートが増えている(もっともシュート距離の平均が短かったのは20/21シーズンの13.1ヤード)。今季の彼は足元でボールを持ち、カットインしてのシュートも多い。
もちろんこれは、ジェズスが居ることで、マルティネッリは以前ほど積極的に得点機に飛び込む必要がそもそもなくなった、というのも理由の一つだろう。昨季ラカゼットはほとんど得点がなく、彼の主な仕事はサカとマルティネッリにチャンスを演出することだった。
今季はサカもどちらかというとより外寄りでプレイする機会が増えているが、マルティネッリの数字は今季はより純粋なウインガーに近づいている、と見ることが出来る。
非常に基本的な所で言えば、マルティネッリのパス数とボールタッチ数は今季かなり増えており、かなりビルドアップにも関わっていることがわかる。
パス数 | ボールタッチ数 | |
---|---|---|
2019-20 | 18.6 | 37.2 |
2020-21 | 24.5 | 38.9 |
2021-22 | 29.6 | 44.0 |
2022-23 | 37.3 | 56.0 |
まだアーセナルはシティとリバプールとの試合を計4試合残しているため、これらの数字は少し下がるかもしれないが、チーム全体としてもよりボールを保持できるようになっているし、この兆候はかなり明確にこれまでとは異なるものだ。
そして、マルティネッリのボールタッチ数が増えているのは単に後ろに下がってビルドアップに加わっているから、と言うわけではない。昨季は左サイドバックとしてタヴァレスがプレイしていた時に左ウイングのサポートを必要とすることも多かったが、今季はジンチェンコが加わったため、このエリアでのボール保持は安定している。
守備サードでの タッチ数 | ミドルサードでの タッチ数 | 攻撃サードでの タッチ数 | ボールを運んだ距離 | |
---|---|---|---|---|
2019-20 | 8.38 | 15.0 | 17.7 | 179.5 |
2020-21 | 5.35 | 10.9 | 24.3 | 151.8 |
2021-22 | 5.02 | 14.1 | 28.3 | 218.0 |
2022-23 | 2.60 | 15.8 | 35.7 | 244.9 |
各サードごとのボールタッチ数を見てみると、マルティネッリがファイナルサードでボールを受け、相手の右サイドバックに勝負を仕掛ける場面が増えていることがわかる。
アーセナルがチーム全体で向上したことに加え、左サイドにジャカとジンチェンコというボール保持が得意な二人が今季はいるため、多少リスクがあってもより積極的にドリブル突破を仕掛けていけるということだろう。
そして、これがマルティネッリがよりウイングらしいプレイを見せていることにもつながっているはずだ。
クロス数 | サイドチェンジ数 | |
---|---|---|
2019-20 | 2.16 | 2.16 |
2020-21 | 2.15 | 2.15 |
2021-22 | 2.32 | 2.32 |
2022-23 | 4.16 | 4.16 |
マルティネッリ自身が得点を挙げなくてはチームが回らない、という負担が減っただけではなく、中に飛び込むのが得意なストライカーがチームにいることで、彼のクロス数も増えている。
サイドチェンジの数(ピッチの横幅換算で40ヤード以上の距離があるパス)もかなり増えているが、これはマルティネッリがより外でボールを受けることが多いことの証明だろう。アーセナルは今季チーム全体でサイドチェンジを上手く活用できているが、マルティネッリもそれに一役買っている。
シーズン前の時点では、ジェズスがマルティネッリのセカンドストライカーとしての素質ではなく、ウイングとしてのポテンシャルを存分に引き出し彼を輝かせるとは予測していなかったが、何にせよ、ジェズスのおかげでマルティネッリが今季ワンランク上の活躍が見せられていることには違いはない。
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