ジンチェンコとティアニーのポジション争いがアーセナルにもたらすもの
この夏のマンチェスター・シティからのオレクサンドル・ジンチェンコの獲得は様々な理由で非常に好ましいものだった。
彼の年齢と勝利を重ねてきた経験は今のクラブが必要としているプロフィールに当てはまるし、ティアニーはアーセナル移籍以降プレミアリーグの50%強程度にしか出場できておらず、クラブは彼のポジションでプレイできる選手を必要としていた。
ティアニーとジンチェンコは二人ともA代表でも経験豊富な選手であり、一つのポジションにこのような二人を揃えられているクラブは多くはないはずだ。
だが一方で非常に興味深いのは、ジンチェンコはクオリティの高い選手だが、スタイル的にはティアニーとは大きく異なるという点だろう。
大雑把に言えば、ティアニーはアシュリー・コールのように、元ウイングの選手がサイドバックにコンバートされたようなタイプだ。彼は大外で幅をとり、中に向けてのクロスを得意としている。
逆に、ジンチェンコはサイドバックでプレイするMFだと言っていいだろう。彼は中に入ってのプレイが持ち味だし、トーマス・パーティに加わってダブルボランチのような形になることもある。
このような彼らのスタイル面の違いがチームにとってプラスの影響を与えるのか、それともマイナスとなるのかは注目したい。
わかりやすい第一のプラスの点は、ジンチェンコは中盤でプレイすることも出来るため、ティアニーだけではなく、ジャカの競争相手にもなることが出来ることだろう。この二人はここまでの所自動的なスタメンとなっていたと言っても良く、ジンチェンコの加入によりチームがよりフレキシブルになったのは間違いない。
クリスタル・パレス戦ではガナーズが圧倒した試合前半のパフォーマンスは素晴らしかったが、後半より相手が勢いを強めた際には、途中から登場したティアニーの方が、技術的にはジンチェンコの圧倒性はないものの、より対人守備力が高い所を見せ、また、ティアニーの方がカウンター時の脅威になった。
しかし、この二人の存在はこのようにアーセナルに状況に応じて柔軟に異なるスタイルの選手を使い分けることを可能にする一方で、チームに混乱を引き起こす可能性もある。
2週間前の記事で、ジャカとジンチェンコのポジションについて解説したが、例えばジンチェンコが出場できなかったフラム戦では、ティアニーは中に入ってポジションチェンジを行う頻度がジンチェンコと比べてはるかに少なかった。
もちろん、外でプレイすることは中に入ることと比べてどちらが良い、という話ではない。ただし、それに応じてアーセナルは少しプレイのやり方を変更する必要が出てくる。これはバリエーションが出てポジティブだととらえる事も出来るし、チームが混乱してしまうと見ることも出来るだろう。
ただし、これらのスタイルは完全に固定されたものではなく、特にティアニーはジンチェンコを参考にして成長できる部分はあるだろう。
Zinchenko On The Ball 😎 pic.twitter.com/T3HUPIiLya
— Copa (@copa8t) August 20, 2022
ジンチェンコはプレッシャーがかかった場面でも落ち着いてボールを保持することが得意だが、フラム戦でティアニーはこの点に関してまだ成長の余地がある所を見せた。
以下の画像の場面でロングボールの軌道をティアニーは完全に読み切っていたが、彼はボールを収めるのではなくヘディングでクリアすることを選択した。結果的にボールはフラムのスローインとなった。
確かに危険を防ぐことには成功したが、ボールはフラムボールになった。
ただ、このようなプレイはどちらかというとティアニーのより安全を志向する性格によるもので、今後の指導次第で改善することはできるだろう。ティアニーにとっての挑戦は、彼自身の強みを消さずにより強いボール保持意識を持つことが出来るか、というものになるはずだ。
中に入って中盤のようにプレイするサイドバック一般的になったのは比較的最近のことで、彼らがユースチームで練習していたような時代には、そのようなコーチングは受けていなかったに違いない。
また、アストン・ヴィラ戦ではフラム戦と比べてもティアニーが中に入る場面がさらに少なかったがこれに関しては恐らく監督の指示だろう。
ロコンガが中盤の底にいたことで、ジャカが彼をサポートするために近い位置にいることが多く、ティアニーがその位置に入る必要がなかった。
逆に言えば、このようにジャカが中盤をケアしている状況であれば、ティアニーのようなサイドでのプレイを得意とする伝統的なサイドバックの方がアーセナルには向いているだろう。
昨夏アーセナルがヌノ・タヴァレスを獲得したことから、アルテタがより中でもプレイできる左サイドバックを欲しがっていたことがうかがえる。彼は左利きのサイドバックとしては非常に珍しいことに逆足が非常に上手く、中に入ってもサイドでも遜色ないプレイを見せられた。
ただし、彼は守備時に気を抜いてしまう時があること、そしてボール保持時にルーズになってしまうことが問題だった。
ティアニーはアルテタ体制で3バックの左CBとしてプレイしたこともあり、この時は左ウイングバックが中に入った時は外に出て行ってサイドバックのようにプレイしていた。スコットランド代表でもティアニーはこのような役割を担っている。
したがって、中と外をスイッチするようなプレイはティアニーにとってはお手の物と言っていいだ折る。
だが、これまでは主にサイドバックからより守備的な中央のエリアでのプレイが多かったが、今季からは、よりボール保持時にプレスがかかることが多い中盤に出てのプレイが求められることになる。
彼はスペースの理解力は高いし、SB-CBのスイッチングは器用にこなしていた。ボール保持の意識を身に着け、さらに重要なことに怪我を減らすことが出来れば、ティアニーはポジション争いの場にジャカを引き出すことが出来るだろう。
ジンチェンコは中盤でも左サイドバックでもプレイできるし(今季ここまでジャカは素晴らしい出来だが)、ティアニーを左サイドバックにおいてジンチェンコをジャカの代わりに起用する、というシステムもありえるはずだ。
昨季、左ウイングのポジションをマルティネッリとスミスロウの二人が争っていた。この二人はかなりプレースタイルは違ったが、二人とも切磋琢磨し、スミスロウは圧倒的な得点力を見せた一方で、マルティネッリはより洗練されたオールラウンダーとなった。まるで、スミスロウはマルティネッリの良さを少し取り入れ、マルティネッリはスミスロウの良さを少し取り入れたかのようだった。
恐らくじんちぇんことのぽじしょんあらそいはティアニーにとっても同じような影響を与えてくれるだろう。サイドを駆け上がるティアニーらしさが必要となる場面もあるだろうし、彼は今季よりオールラウンドでモダンなサイドバックへと進化しようとするに違いない。
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