ベン・ホワイトに関して
クリスタル・パレス戦後、セルハーストパークからの帰り道、ファンの間でベン・ホワイトのパフォーマンスに関して、手厳しい意見も見られたのはかなり意外だった。
セルハーストパークはダントツでプレミアリーグ1アウェイ席の視界が悪く、ピッチ上を見渡すのは不可能なため、多少割り引いて考える必要はあるが、私が家に帰ってより視界がよく、ビールの影響があまりない状態で再び試合を見返しても、彼はリーグ屈指のトリッキーなウイング相手に落ち着いて対応し、ソリッドなパフォーマンスを見せた、という現地で抱いた意見は変わらなかった。
50m£で獲得されてきたDFの貢献が注目されないというのも少々奇妙ではあるが、彼が2021/22シーズンの守備の改善に果たした役割はあまり話題にはなっていない。
ホワイトは冨安の不在に伴い2022/23シーズン開幕を右サイドバックとして迎えることにはなったが、チーム内での役割としてはそこまで大きく変わったわけではない。
先日Tifo Footballのポッドキャストでアルテタのボール保持時の2-3-5システムの素晴らしい説明が行われていたが、現代のサッカーにおいては試合開始時のポジションというよりも、ピッチ上のエリアと役割に基づいて選手の貢献が話されるべきだろう。
Palace 0-2 Arsenal: The Importance of Control#AFC
— Tifo Football (@TifoFootball_) August 5, 2022
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ホワイトが右CBとしてプレイしようと、右サイドバックとしてプレイしようと、そのプレイ内容はあまり変わらないし、恐らく今季のジンチェンコにもそれは言えるだろう。彼が左サイドバックとして先発しても、左CMFとして先発しても、要求されるプレイは概ね同じはずだ。ジャカにもそれは当てはまる。
アーセナル加入前はホワイトはビエルサのリーズ、ポッターのブライトンでプレイしており、彼らのような戦術的に特徴のある監督の下でプレイした経験があるというのは特筆すべき点だろう。
この期間中ホワイトはスリーバックの右CBや右サイドバック、守備的MFとしてもプレイしており、まさにアーセナルで彼は今、プレイのフェーズに応じてこれらの位置でプレイしている。
クリスタル・パレス戦では、持ち味の技術の高さはそこまで光らなかったが、一方でザハ相手に泥臭くプレイできることを彼は示した。ザハのような選手が相手にいる場合は、手段は問わず彼の影響力を減少させることが最優先課題となる。
彼はアーセナル相手に4度PKを得るなど、過去には何度もアーセナルをてこずらせてきたが、今回の試合ではシュート一本(昨季ザハは90分当たり2本以上のシュートを放っている)、ドリブル突破も6度トライして2度しか成功できず、成功率は33%(昨季の彼の平均は52%だ)に留まった。
ただし、ホワイトはこのような仕事をこなせることを示しはしたが、やはりアーセナルがブライトンの要求額を支払って彼を獲得することを決めた一番の理由は彼のビルドアップへの貢献だろう。
昨夏のアルテタの目標の一つは、アーセナルがより高い位置でボールを持つ時間を増やすことだった。アルテタのアーセナル監督就任から18か月間の間は、チームのビルドアップは非常にスローで、苦戦するところが目立っていたからだ。
21/22シーズンのアーセナルは20/21シーズンよりも平均パス数は減少したが、ファイナルサードでボールを保持する時間は増えた。
これにはラムズデールとホワイトの加入が大きく影響しているはずだ。アーセナルは昨季も後ろからボールを繋ぎはしたが、以前と比べてはるかにキビキビと、スピード感をもってボールを前に進めるようになり、状況に応じてロングボールを用いることも出来るようになった。
昨夏クラブには冨安とウーデゴールも加わったが、彼ら二人とホワイト、そしてサカの4人は右サイドで素晴らしいボール前進のネットワークを構築している。
近年のDFでは最もロングボールが上手い選手の一人であったダビド・ルイスがアーセナルを2021年に退団したが、彼は、チームがプレッシャーに晒された場合に、低い位置に下がろうとすることが多く、これにより守備のラインが下がってしまうことが多かった。
だが、ホワイトはルイスのような長距離パスの精度と同時に、ラインを高く保てるだけの走力、そして保とうというメンタリティを持ち合わせている。
確かに21/22シーズンのアーセナルは20/21シーズンと比較して失点数は増えたが、これはアーセナルがいくつか大敗を喫した影響が大きく、ホワイトは2-0のチェルシー戦での敗戦と、5-0のシティ戦ではプレイしていなかった。
アルテタの2-3-5のシステムではサイドバックの裏のハーフスペースが穴となりやすいが、昨季中に入って数的有利を作った冨安と共に、ホワイトはこのエリアに向けて飛んでくるロングボールに良く対処した。
今のアーセナルのシステムでは、対戦相手が裏を狙った場合にCBは運動量が必要となるが、ガブリエルとホワイトのコンビはこれらのスペースを埋められるアスリート力を持っていることを示した。
そして、このような走力を備えていることが部分的には彼が右サイドバックとしても問題なくプレイできる理由だ。セドリックよりも優れたオプションであるように思われるし、彼のような複数のポジションで、同じ役割を遂行できる選手はアルテタに重用されるだろう。
振り返ってみると、2021年の夏をアルテタのプロジェクトの転換点とするのであれば、その先陣を切ったのはホワイトだった。まだ彼は24歳と若く、成長の余地があるし、彼はまさにアルテタがチームに求める技術・戦術面の素質を象徴するような選手だ。
ディスカッション
コメント一覧
記事に敬意を払います。
私の意見は以前に言ったとおりです。
それだけだとつまらないので、富保について。ホワイトの弱点を補う、という存在理由がなくなり、右サイドバックとして、より一層存在意義を発揮しないとならなくなった。落ちた方が、便利屋的控えになる。
アーセナルのポジション争いは、健全だが、だからこそある種の残酷さもある。
私はアーセナルファンとして、そうした事もしっかり受け止めたいと思う。