【戦術コラム】エンケティアが示す現代のストライカーの在り方

スタッツ・戦術Lewis Ambrose

ウエストハム相手の試合で、エディー・エンケティアはボールタッチ数46を記録し、これは、今季ラカゼットが記録した一試合での最大ボールタッチ数を上回る数字だった。

さらに、これらは単にボールに触っただけのものではなく、エンケティアはこの46度のボールタッチを有効に活用した。一試合を通してエンケティアはボールを346ヤードドリブルで運び、10度のボール回収を記録した。

彼は枠内シュートを4本放ち(ラカゼットが今季枠内シュートを3本以上記録したことはない)、25本のパスを成功させた。

この試合でエンケティアはゴールこそならなかったが、それ以外ではほぼ完ぺきなパフォーマンスといって良かった。

この試合の前半ではエンケティアはウーデゴールが右サイドに流れたのに伴って、デクラン・ライスを引き連れて中盤まで降りると、パス回しに参加した。

エンケティアはバックラインからのパスのオプションになるためにしばしばライスとノーブルの間のスペースをうまく利用した。

ウエストハムのMFはエンケティアに誰がついていけばいいのかわからず、かなりフラストレーションをためていた様子が見て取れ、いらだちを募らせたクレスウェルがハーフタイム前には後ろからエンケティアをファウルしてまで止めなくてはならなかった。

エンケティアはそこまで特別なプレイを見せていたわけではないが、彼が後ろに降りてチームメイトにレイオフを渡すプレイはアーセナルを何度も前に進めることに成功し、ウエストハムはこれにどう対処していいかわからない様子だった。

アーセナルのビルドアップの逃げ道となったり、相手のGKにプレッシャーをかけてボールを奪取したりと素晴らしいセンターフォワードとしてのプレイを見せた。

エンケティアはプレミアリーグ基準でフィジカルに恵まれているというわけではなく、身長も高くはないのだが、今季は自分の体の使い方が非常に上手くなった。体を上手くかわして、より体格で勝る相手にもロングボールの競り合いで勝利を収められるようになっている。

エンケティアが見せたこのような成長はアーセナルファンにとっては少し意外な嬉しいサプライズだったわけだが、シュートチャンスがあると見るや活き活きと最終ラインと駆け引きを行ってスペースに走り込むのは、彼がユース時代から得意としていたプレイだ。

彼のこの試合の最初のシュートはクレスウェルを相手守備陣からつり出して自身がショートパスのターゲットとなったのちに、そのまま彼をかわしてサカが作ったスペースを活用するところから生まれた。

クレスウェルがサカの走りに気をとられたせいで、エンケティアはフリーになっていることがわかる(その後のシュートの精度に関してはもう少し改善の余地はあったかもしれないが)。

これらは全てエンケティアが備えた素晴らしい素質だが、この試合で他の何よりもひときわ目を引いたのは、エンケティアがシュートに辿り着くまでの間に非常に長くボールを運ぶことが出来たという点だろう。

その兆候はチェルシー戦での得点でも既にみられていたが、ウエストハム戦でも、彼は何度かゴールに向かって一目散にボールを運んで自らに惜しい場面を作り出した。

上の場面では、ここから彼は20ヤードほどボールを運ぶとファビアンスキーにセーブを強いることに成功し、その後のコーナーからホールディングの得点が生まれた。

この後アーセナルはガブリエルの得点でリードして以降はボール保持率が40%を切り、ウエストハムがボールを持っていた時間帯が多かったが、相手のシュートを1本に抑えつつ、7本のシュートを打つことに成功した。

そのうちの4本がエディー・エンケティアのシュートで、これらはどれも皆ほぼ同じパターンだった。

カウンターの隙があると見るや否や、自身がスピードで勝ると踏んだズマ相手にレースを仕掛け、左に流れながら走るという形だが、この位置のエンケティアに何度もボールが届いた。

これらのシーンでエディーが何度も見せた、長いボールを相手に奪われない丁度良い位置にコントロールしつつ、その後シュートが可能な位置までドリブルで運ぶ技術はとても素晴らしいものだった。そして、得点に繋がらずとも、チャンスに繋がっている走り込みを繰り返し行う姿勢も見せた。これには、ズマを押し下げるという効果もあった。

この試合でのプレイはゴールという結果にはつながらなかったし、この数試合のプレイでエンケティアがアーセナルでの将来を勝ち取る、ということもないだろう。

エンケティアはもう移籍を心に決めているように見える。

だがそれでも、この試合の彼のパフォーマンスが素晴らしかったことには変わりはない。

彼は低い位置まで下りてパスのオプションとなることと、ロングボールのターゲットになり、そこから相手DFに勝負を挑んでシュートまでもっていくプレイを両立させて見せた。

エディー・エンケティアの新天地がどこになるにせよ、彼の能力があれば輝けるだろう。この試合で彼は現代のセンターフォワードにはどれほど万能なプレイが求められるのかを示しているように見えた。

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Posted by gern3137