グラニト・ジャカと受け渡された中盤の鍵

分析Tim Stillman,海外記事

近年のアーセナルにおいて、グラニト・ジャカほど興味深く、かつ不可思議な選手はなかなかいない。彼は矛盾を大鍋に入れて煮詰めたような選手で、非常に頼りがいがあるかと思えばその真逆の時もあり、チームの足を引っ張ることもあるリーダーだ。

特に、彼の性格はとても興味深い。ジャカは鋼のように固い自身への信頼を抱いており、これは彼という選手にとって欠かせない一部となっている。このような気質があるからこそ、ジャカはいざという時に頼りになる選手となっているし、一方で、これは同じようなミスを繰り返す要因にもなっている。

だが同時に、彼はメンタルが強いため、ミスを引きずったりはしない。そのため、同じようなミスを何試合も連続で見せるというよりも、定期的に一定の間隔を置いてそれらは訪れる。

ミケル・アルテタ、ウナイ・エメリ、アーセン・ベンゲルの3人のアーセナルの監督は全員がジャカに信頼を置いてきた。これは怪我の少なさも影響しているだろう。常にスカッド入りできるというのは過小評価されがちだが非常に重要な素質で、ジャカは怪我で離脱することがキャリアを通して非常に少ない。

もちろん対戦相手が絡む怪我など、ある程度運の要素や生まれつきの者はあるだろうが、それでも彼の怪我の少なさはジャカのプロフェッショナリズムを示している。2016年にアーセナルに加わって以降継続して毎週のように彼はプレミアリーグへの出場を続けている。これは、きちんとした体のケアなしには不可能だ。

ミケル・アルテタがアーセナルの監督に就任するにあたって、対処しなければならなかった多くの課題の一つがジャカの去就だった。

通常、公然とスタジアムでファンを侮辱するような選手がクラブに留まることはなかなかない。

ジャカを残留するよう説得するのはアルテタのコーチングというよりもマネージメントスキルが試される仕事だった。

ジャカは結果的に残留を決めたが、キャプテンはく奪に至った件に関してはあまり後悔はしていなさそうだ。

恐らくジャカは元来埋め合わせのために何かしよう、といったことを思う性格ではないし、この時期のファンからの自身の扱いに関する意見はかなり正直に表明している。これ以降、そこまで目立ってファンから批判されたことはないが、ジャカは今でもこの件を忘れるつもりはあるものの、許すもりはないかもしれない。

だが、恐らくこれはジャカのサッカー面にとって必ずしもマイナスではないだろう。ジャカはこういった出来事をモチベーションに変えることが出来る選手に見える。もちろんファンからの批判は好ましいものではないだろうが、それも彼を奮い立たせるものの一つだろう。

今季ジャカはアルテタにより新しい役割を与えられた。彼はアーセナルでのキャリアを通して担ってきた低い位置でのプレイをもはや要求されていない。中盤の底の役割は代わりにトーマス・パーティが務めている。

現在の布陣はダイアモンド型と言ってもよく、その頂点にいるのは最前線から降りてきたラカゼット、右にウーデゴール、そして左にジャカ、と言える形だ。

そして、今季のシステムの移行を考えれば、なぜジャカが(アルテタが高く評価していたとはいえ)昨夏移籍を許可されていたのかが見えてくる。

結局ローマが何か月も交渉を引っ張った挙句にアーセナルを納得させられる額を捻出できず、移籍は破談になったが。

そして、その直後にジャカはアーセナルと契約延長することとなった。これもジャカを巡る奇妙なストーリーの一つだ。

夏の移籍市場の大半の間放出リスト入りしていたかと思えば、その直後に契約延長となるような選手はジャカくらいのものだろう。

だが今のアーセナルを見れば、恐らくアルテタはジャカをチームの中心としないようなチーム作りを目指し始めていたのだろうということがわかる。

アルテタのジャカへの評価は監督就任当初からかなり明確だった。アルテタはチームにとって、ジャカをどうしてもアップグレードが必要なほどの課題だとは考えていない。だからこそ、他のポジションの強化を優先したのだろう。

そして、移籍の可能性が浮上した際にも、破談になることも辞さずにそれなりの移籍金を要求した。

とはいえ、比較的近い将来今のジャカの左CMFの役割は誰か違う選手に取って代わられることは避けられないように見える。恐らくジャカ自身もそれは感じているだろう。それでも何の問題なく今の役割を彼が務めているのは称賛に値する。

彼に与えられたタスクは必ずしも彼が備えたスキルと完全に一致しているとは言えないが、それでも悪くないプレイを見せられている。

しかし、以前ほどジャカがアーセナルのパス回しの中心に居ないのは明らかで、今季彼は90分当たりのパス数が46.2本と昨季の69.5本と比較して大きく減少している。これまでジャカが担ってきた中盤の鍵となる選手の役割は今季トーマス・パーティに引き継がれている。

だが、それにも特にジャカは不満などを見せる様子はない。

ジャカが今年の夏どうなるかはまだ不透明だ。恐らく補強の優先度としては彼の代役よりも新たなストライカーの方が高いだろう。どちらにしてもアーセナルはMFの補強も必要だろうが、仮に新たなMFを獲得したとしても、ジャカの売却をクラブが目指すことになるかどうかはわからない。

ただし、もしそうなれば、ジャカは誇り高い選手であり、自身がローテーション要員となるよりは移籍を望む可能性は大いにある。そして、その誇り高さ、モチベーションの高さは彼の強みでもある。

ジャカがいつかアーセナルを去り、そこから何年か経った際に、アーセナルファンが彼のことをどのような選手として記憶しているかは非常に興味深い所だ。

もちろん、往々にしてこれは後継者のクオリティにも影響される。もしジャカの後任がスーパースターであれば、彼がチームに残したインパクトはあまり記憶されないかもしれないし、一方で、もし後任がぱっとしなければ、のちになってファンはジャカをより高く評価するようになる、ということもありうる。

ジャカについて語る際に彼の欠点について話すのは避けては通れないことではあるが、同時に彼が選手として抱えている矛盾は、それらの欠点と、彼をサッカー選手として秀でたものにしている素質の出発点が同じということなのだ。

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Posted by gern3137