アルテタアーセナルで変化するグラニト・ジャカの役割
グラニト・ジャカはミケル・アルテタにとってチームの鍵となる存在だ。2021年の9月21日には出場停止とコロナでの欠場を経て即座にノースロンドンダービーで復帰したし、去年の12月には3か月のけがを経て、途中出場での慣らし期間などもなくいきなり先発に復帰したこともあった。
ジャカはアルテタがアーセナルの監督に就任する前からチームの中心的な選手ではあったが、彼のチーム内での役割やポジションは変化している。
特に昨年は非常に大きな変化が見られ、今のジャカがチームで果たしている役割は今までになかったもの、かつ最も効果的なものだと言えるだろう。
もちろんジャカは欠点も抱えている選手だが、今日は今季のジャカのポジション面の進化の話をしよう。アルテタは彼の特性に合った形で効果的にジャカを起用することに成功している。
ボール保持時
現在ジャカはパーティをアンカーにおいた4-3-3でパーティの前、左CMFのような位置でプレイしている。ジャカより特にファイナルサードに侵入した際にはより高い位置を取ることが多いが、右CMFを務めるのはウーデゴールだ。
これにより変わったジャカのプレイは多くあるが、まず第一に以前と比べてジャカはより高い位置でボールを受けている。
昨季や今季の序盤を思い出してみると、ジャカは左の深い位置、ティアニーが上がっていったあとの左サイドバックのポジションでボールを受けることが多かった。
だが今はパーティよりかなり前の中盤の左側でボールを受けることが多い。これは数字にも表れており、昨季ジャカは90分当たり22本のパスをディフェンシブサードで受けていたが、それは今季は13本に減少している。
これにより、チームはより縦に早く、ボールを前に進めることが出来るようになっている。ジャカがボールを受けた時のポジションがより相手ゴールに近づいているため、彼の得意のプログレッシブパスがより攻撃に活きやすく、ゴールに直結する場面で用いることが出来るようになっているのだ。
それに伴って、ジャカのシュート創出アクション数も昨季の90分当たりの1.43回から2.5回に上昇しているし、シュートに繋がるキーパス数も90分当たり0.67から0.84へと増加している。
ジャカは高精度のパスでボールを大きく縦に進めたり、斜めのサイドチェンジを行えるユニークな能力を備えているが、ボールを受ける位置がより高くなったことで、ボールをより前に居るウイングに届けやすくなっているのだ。
今のようなポジションからであれば、一発でボックスのすぐ外、そこからカットインしてシュートにつなげられるような位置に一発でボールを届けることが出来る。今季サカの得点とアシストが増えているのはジャカのプレイエリアの変化と無関係ではないだろう。
また、ジャカは左ウイングにもより深い位置にボールをとけることが出来ている。ジャカがより前に出ることで相手のCMFはプレスをかけに出てこなくてはならないため、その分前の左ウイングのマークが手薄になる。後ろで守備をするDFの数が減り、かつ高精度のパスが前線に飛んでくるようになれば、得点が増加するのは当然だ。
ジャカのこの形でのプレイが増えれば、キーパス数はさらに増えることだろう。
ボールロスト
どんな選手にもあるように、ジャカもボールをときどきはロストする。
だが、ジャカが以前より前でプレイすることになったため、ボールを失ったとしても、チームにとっての危険度とカウンターのリスクは減少している。単にボールロストの位置も前になるだけではなく、ジャカより後ろにいる選手の数も増えるためだ。
スタッツで見ると、ジャカはボールロストの頻度が例えばマンチェスター・シティのロドリなどと比較すると若干多いが、シュートに直結するミスは今季ここまでの所ゼロとなっており、今のポジションの方が、ボールロスト時を考えてもジャカに合っているということがわかる。
ハイプレス
ジャカがより高い位置でプレイすることがもたらす攻撃面のメリットは大きいが、チームにとってプラスなのはそれだけではない。アーセナルのハイプレスにとっても非常に重要になっている。
ジャカが怪我から復帰してからアーセナルの90分を通してのハイプレスが大いに改善されたのは偶然ではない。 前線のアタッカーたちのプレスのサポートをより前から行うことが出来ており、90分当たりのファイナルサードにおけるプレス数は昨季の90分当たり2.75から3.7へと増加している。
以下のマンチェスター・シティ戦の一場面がその良い例で、ジャカはチームのハイプレス要員の一人となり、中に入ったカンセロを追うことで、パーティがプレスを継続し、結果的にボール奪取に繋がっている。
— MComps304 (@MComps304) January 2, 2022
今季のジャカの成長は非常に好ましいものだ。
彼は常に批判されることが多い選手だが、今季アーセナルがトップ4入りを争うにおいて、ジャカの果たす役割は非常に大きいものになるはずだ。
恐らく来季、あるいはその次のシーズンにはアルテタはもう少し若く機動性のあるMFをジャカの代役として獲得を目指すとは思うが、現状ジャカをよりうまく活かし、かつその前で若手スターたちが輝ける戦術的な変更を施したことは称賛されるべきだろう。
マルティネッリ、サカ、スミスロウ、そしてウーデゴールがアーセナルの攻撃の中心となり、アーセナルをチャンピオンズリーグに導いてくれるはずだが、それを支えるのはグラニト・ジャカなのだ。
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ディスカッション
コメント一覧
更新お疲れさまです。
いつも楽しく読ませていただいでいます。
さて、今回の更新について質問があります。
今回の要旨は「ジャカが前目にポジションを取るようになって、良い影響が出ている」というように感じました。
しかし、そもそもジャカは「プレス等プレッシャーがかかる場面でのプレイが苦手」、「スペースや時間があれば精度の高いキック(特にロングレンジ)が可能」という特徴から、対峙するのがウィングやSHで、プレッシャーのかかりにくい左SBの位置に落ちて高い精度のロングレンジのパスを活かしていたという認識をしています。
ジャカがよりプレッシャーのかかる前目の位置を取れるようになった背景にはどのような変化があったのか、考えを聞かせていただければと思います。
ありがとうございます!
仰る通りジャカが後ろ目のポジションでプレイのは彼の特性を活かすため、という側面があったように思います。ですが、今の時点でより前に出たジャカがプレスに苦戦しているという印象もありません。
今までのアーセナルとの大きな違いとしては、そもそも以前はジャカより後ろでプレイできるようなMFがおらず、現在はパーティがアンカーを務められる、ということが挙げられますが、そもそもではなぜ今までよりも前目の位置に出たジャカがのびのびとプレイできているのかということに関しては、前の位置でも後ろ向きではなく、相手に寄せられる前に前向きでボールを持てているということが大きいかと思いますが、それが本人の成長なのか、あるいは周りの選手たちの役割に変化があるのか、より戦術に詳しい方に聞いてみたいところですね。
全然答えになっておらず、力不足ですみません。
回答有り難うございます。
ジャカが、密集地帯でプレスを交わして持ち出すみたいなシーンが印象にあるわけではないので、外部に要因がありそうだなと思います。
近頃のアーセナルの特徴を鑑みて、仮説をたてるなら
・ホワイトやラムズデールなど、ジャカに渡す役割の人が長いパスを出せるようになったため、ディフェンス側が見切り発車的にプレスをかけにくくなった
・ラムズデールの足元しっかりしてるので、DFラインが押し上げられ選手感の距離が短くなっている
・パーティ等プレス耐性のある選手が困ったときの預かり先になっている、また逆にひきつけてから渡している
・ウーデゴールやラカゼットが引き付けて降りるので、前方にスペースがある
色々なことの積み重ねで、ジャカを前に出せるようになってるのだと思いますが、ジャカの位置取りや挙動など注目してみてみようと思います。勝ってる試合が近々にあれば気持ちよく見直してみるのですが…
試合を見る楽しみが増えました、ありがとうございました❗
次の記事も楽しみにしています!