【戦術分析】アーセナルのドリフティングを活用した相手チームの攻略法
アーセナルはトップ4を狙う上で非常に良い位置につけており、チームのパフォーマンスには大きな注目を集めている。ここの所アーセナルは毎試合2.5程度のxGを記録しており、最近の好調の一番の要因が攻撃面の改善であることは間違いない。
では、選手個人の好調や、対戦相手のクオリティといったファクター以外で、よりチームの基本的な部分で何が変わったのだろうか。
これはアルテタの戦術自体というよりも、選手がその中でどのようにプレイするか、という話なのだが、最近のアーセナルの攻撃の好調の理由として過小評価されているプレイの一つが流動的に選手たちが決まったポジションを離れること(ドリフティング)だ。
もしアーセナルファンではないサッカーファンがアーセナルの試合を始めてみたとしたら、なぜこのチームのストライカーは中盤まで下がり、MFは左サイドバックの位置に落ち、左サイドバックは中盤に向かって走り、そして攻撃的MFがライン際で何をしているのだろう、と思うかもしれない。
ミケル・アルテタは選手のユーティリティ性を重視しており、これは一試合の中で多くのポジションでプレイできる選手を求めているということでもある。
このポジションチェンジの多さを象徴していたのがリーズ戦だった。
上の図が示している通り、ラカゼットはかなり中盤の深い位置まで下がってくることが多いし、ウーデゴールはタッチライン際までサイドに出ていくこともある。
リーズはマンマークによる守備を採用しており、マークのターゲットをピッチ中ついていく。アーセナルの選手たちはポジション外に出ることでこれをうまく利用し、リーズの選手たちをつり出して空いたスペースを突くことができた。
上の場面では、ラカゼットが左サイドバックの位置まで下がっているが、コッホがついて生きている。画像内には映っていないが、この時空いたセンターフォワードのポジションをマルティネッリがとっており、ティアニーが左ウイングの位置に上がっている。
この時、コッホが前に出ているため、リーズの守備陣は一人人数が少なくなっているというわけだ。
同じように、こちらの場面ではウーデゴールがサイドに流れることでマーカーのアダム・フォーショーをつり出している。これにより冨安のプレイは少し楽になる。
このように、ポジション外へと選手が流れる動きはアルテタ体制下のアーセナルの基本的な特徴の一つで、アーセナルの選手たちは試合を通じてこのような動きを繰り返し、スペースを作り出そうとするだけではなく、またウイングでオーバーロード/アンダーロードを生み出すためにも用いられる。
下のサンダーランド戦の場面では、左サイドバックのタヴァレスが中に入り、一方センターフォワードのエンケティアは左のハーフスペースへと流れている。
これに対処するためにサンダーランドは右に選手を集める必要があり、逆サイドが手薄になっている。ここから素早くサイドを切り替え、アーセナルは得点に成功した。
サッカーの戦術の多くは、相手の構造を崩し、スペースを作り出せるような形でボールを動かすことを目的としている。
そして、これに効果的なのがアーセナルが行っているドリフティングだ。
アーセナルは主に中盤に2人しか起用しないが、ここにラカゼットが下りて加わることで、相手はもともとの数的優位を放棄するか、あるいは中盤での数的優位を維持するためには一人選手を加える必要が生まれてくる。
また、ウーデゴールがサイドに流れる際は、彼に時間とスペースを与えるのは危険すぎるので、誰かマーカーを送ってついていかせる必要があり、この結果中でスペースが空くのでジャカあるいは中に入ったサイドバックが活用できる。
ただ、もちろん誰かがドリフティングを行うと、守備時の形を維持するためには他の選手がカバーする必要がある。セドリックが上がっていきペペがその後ろをカバーするというような縦のポジションチェンジも見られることがある。
これまでのアーセナルの懸念点は、攻撃時に封じ込めるのが簡単すぎ、相手のゲームプランを乱すほどの動きを見せられないことだったが、最近はそれが変わりつつある。
特にジャカとラカゼットがカギとなる役割を果たしており、彼らがどういった場合はドリフティングを行うべきで、逆にどういった場面ではポジションを守るべきなのかを判断できる戦術眼を備えていることは非常に重要だ。
また、選手がポジション外にドリフティングを行うと聞くと、単に個人のアクションのように聞こえるが、実際にはそうではなく、チーム単位の戦術だ。
このようなプレイをきちんとしたコーチングなしに選手それぞれが行うと、大きな危機を招くからだ。例えば、ジャカが左サイドバックのポジションに落ちているにもかかわらずラカゼットが中盤に降りてこなければ、中盤で数的不利に陥ってしまうしタヴァレスが駆け上がっているのにジャカがカバーしなければ、サイドががら空きになってしまう。
もちろんアルテタの先にはまだ長い道のりが待っているが、ついにアーセナルは統率されたユニットとしてのプレイを見せ始めている。これはガナーズの攻撃陣にとって非常にポジティブな一歩だ。
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コメント一覧
異常なビエルサのマンマークで語られても。ドリフティング解説するのら別のチームの試合でやらないと参考にすらならん