ラカゼットが可能にするアーセナルの前線からの守備
ミケル・アルテタにとってラカゼットの起用法に関して難しいのは、ほんの少しの違いで彼のパフォーマンスが相手にとって非常に危険なものとなることもあれば、逆に非常にがっかりさせるようなものになってしまうこともあるという点だろう。
リーズ戦で示されたように、その違いは単純に、相手チームのCBがラカゼットについていくかどうかだけ、という時も往々にしてある。この試合ではマルティネッリとサカが空いたスペースをうまくつくことが出来た。
だが逆に、エヴァートン戦のようにこれがうまくいかないと、ラカゼットのプレイ自体はほとんど変わっていないのに、深い位置や右サイドバックのような位置でのタッチ数だけが増え、試合から完全に消えてしまうこともある。
最近のラカゼットをストライカーとして起用した試合では前者のパターンが多いのはアルテタにとって朗報だろう。
部分的にはこれは、アーセナルのボール非保持時のプレイが要因だ。アルテタ体制下でアーセナルのアイデンティティは揺らぎがちで、深く構えて守るときもあれば、前から相手CBにひたすらプレスをかけたりするような試合もある。
確かに、対戦相手のせいで守備的に構えざるを得ない試合もあるにはあるが、そもそも自然とハイプレスをかけたがる傾向にある若手たちと、逆にそこまででもないペペのような選手が前線に混在しているせいでこのアイデンティティの危機は生まれているように見える。
現状アーセナルがボールを保持していない時に、どのようなプレイをするのかの統一された方針のようなものは見当たらず、プレスの有効性を示す指標である守備アクションあたりのパス数ではアーセナルはプレミアリーグで12位となっている。これは昨季と全く同じ数字だ。
しかし、平均値を出すとこの順位になるものの、実際のアーセナルのアプローチは各試合ごとに大きく異なり、特に最近はラカゼット起用時に、一貫性が生まれ始めている。
ラカゼットはセンターフォワードの仕事のうちそこまで得意ではないものもある(例えば、彼はシュートを64分ごとに1本しか打たない。これはプレミアリーグ102位という数字で、アーセナルではタヴァレスにも上回られている)が、彼の前線からの守備は非常にハイレベルだ。
インターセプト数は多いし、最近プレスのスタッツも上昇しており、リーズ戦ではなんと30ものプレスを記録した。プレスの成功率では直近の365日で欧州5大リーグのFWでは上位5%に入っている。
そして、プレスを得意とするのは今のアーセナルのシステムではラカゼット一人ではない。彼は若さにあふれる2列目を率いており、彼らは皆出来る限りボールを自陣に入れず、相手陣深い位置までプレスをかけてボールを奪おうとするアプローチを苦にしない。
特にこれが効果的だったのは2-0で勝利を収めたウエストハム戦で、ラカゼットとマルティネッリの二人で14のプレスを成功させ、9度タックルでボールを奪取することに成功した。
この試合後アルテタはチームのリズムとインテンシティに満足しているとコメントしていたが、確かにアーセナルはこのようなパフォーマンスを少しずつ定期的に見せられるようになってきている。
ラカゼットのプレス数がその前の二試合と比べてかなり少なかったサウサンプトン戦ですらも、ラカゼットとウーデゴールは相手のパスレーンを消すために奔走していたし、これは相手のパスミスを誘発した。
この試合ではかなり連携してジャック・スティーブンスを追い込むことが出来ており、ウーデゴールが中へのパスをブロックしながらマルティネッリがリヴラメントのパスをカットするために走り、そしてラカゼットがウォード=プラウズにパスを出されないようにしながらボールホルダーを追いかけるという形が作れていた。
これにより、スティーブンスはロングキックを選択せざるを得なくなった。
もちろん、このようなプレスを標準装備しているクラブもかなりあるのだが、ここ数試合以前のアーセナルにとってはこのようなプレスはかなりレアだった。
アーセナルはいつまでこのアプローチを継続することが出来るだろうか?
もしこれがラカゼットが居なければ成り立たないのだとすれば、ずっと続けるのは難しいかもしれない。彼は普段から試合終盤には勢いを落とす傾向にあり、過密日程の中ずっと同じプレイを見せるのは困難だろう。
だが少なくともノリッジ戦に関しては、前の試合からそれなりに時間が空いているため、これまでの試合と同じような前からの守備を継続するのは可能ではないだろうか。
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