アルテタのもと復活を遂げたラカゼット
リバプール戦での残念なパフォーマンスを受けて、ミケル・アルテタと彼の率いる若いチームが本当に結果を残すことが出来るのかに関しての疑念が再浮上しつつある。
恐らく、アーセナルがリーグの強敵相手に良い戦いを見せられるようになるまでは、このような疑念と信頼のサイクルが続くことだろう。
だが、それにはまだ時間がかかるはずで、もう何人かのスマートな選手獲得と、より洗練されたプロセスが必要になるに違いない。しかし、アーセナルは今その途上にいる。
今回は、アルテタが信頼に値する監督だと示すために、いかにして彼がチームに興味深い修正を施して、ベンチを温める以外に役割が与えられていなかった選手に新たな活用法を見出し、かつチームを機能させたかを見ていきたいと思う。
アストン・ヴィラ戦まで、ラカゼットはもう今季の構想外で、移籍まで出番はないかに見えた。だが、ウーデゴールが不調に陥っていたのを受けて、アルテタは素早くラカゼットをチームに組み込むことを決め、最近ではチームの欠かせない一因となっている。
ラカゼットのアーセナルへの数多い貢献の一つは、彼が最終ラインからボールを縦に入れる際の受け手となれることだ。
オーバメヤンも今季ポストプレイに関して改善を見せているものの、この面ではラカゼットに及ばず、今季ラカゼットは90分当たり3本以上多くプログレッシブパスを受け取っている(7.57本)
彼はライン間でボールを受けて、自分で相手DFに向かっていくことも出来るし、チームメイトにレイオフでボールを渡すことも出来る。直近のラカゼットはペペに次いで90分当たりのキーパス数でチーム代位に位で、シュート創出アクション数、そして相手ペナルティエリア内へのパス数でチームトップに立っている。
夏に高額の移籍金で獲得されてきたウーデゴールがいるものの、スタッツを見る限り、ラカゼットの序列には根拠があるといえそうだ。
得点やアシスト数は少ないものの、そもそもラカゼットはアーセナルでのキャリアを通じてそういった数字が高い選手ではないし、彼の一番の強みはチームメイトのプレイを引き出せること、そして守備での貢献だろう。
アタッカーの守備のスタッツは基本的に低く出るので、シンプルに数字を比較するのは難しいため、ポジションを争うライバルであるウーデゴールの数字と比べてみよう。
プレスに関しては、成功プレス数とプレス成功率両方でウーデゴールがラカゼットを上回っている。確かに、もともとラカゼットはアスリート力で知られた選手ではなく、彼がこの部門で良い数字を残すとは期待できないだろう。
ただし、ブロックやインターセプトはウーデゴールよりも多く、彼がスマートで効果的な守備を見せていることがうかがえる。
また、重要なのは単なる守備アクションの数ではなく、そのようなプレイをラカゼットがみせているエリアだ。
Alex Lacazette's defensive actions this season in the Premier League. pic.twitter.com/YfJlQylnRe
— Arsenalog (@TheArsenalog) November 23, 2021
上の図が示している通り、ラカゼットは頻繁にに下がってアーセナルがダブルボランチを用いたフォーメーションを起用するのを可能にし、中盤が数的不利に陥ることを防いでくれている。
そして、ミケル・アルテタがラカゼットに右サイドのチームの後ろと前をつなげ、攻撃をスムーズにするタスクをうまくあてがったのは素晴らしい手腕だった。
これはかなり難しい仕事で、アーセナルのシステムでは右サイドバックの冨安がオーバーラップするよりも中に入って3バックになることが多く、右サイドでの攻撃を機能するためにはウイングが後ろに下がって冨安からボールを受け取らなくてはならないことが多かった。
これにより、右ウイングは攻撃時にインパクトを残すのが難しくなる。
だが、アルテタはラカゼットに最終ラインと右ウイングを繋ぐ役割を任せ、サカがより高く危険な位置でボールを受けられるようになった。
ラカゼットがチームにいる時と不在時のサカのタッチマップとヒートマップを比べてみると、より前で彼がボールを触れているのがわかると思う。
ラカゼットが右のハーフスペースでプレイすることで、サカは外に留まって、相手の左サイドバック相手に1対1を仕掛けられるようになった。
これは、創出xTの違いにも表れている。
ラカゼットの新たな役割が残したインパクトに関しては、選手自身の献身性も素晴らしいが、監督も賞賛されるべきだろう。また、同時にアルテタは彼の前任者たちが解決できなかったオーバメヤンとラカゼットの共存問題の解決策も同時に見つけ出したことになる。
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一言コメント:
ラカゼットはその役割を十分に果たしていると思いますが、そもそもサカと相手との1対1をできる限り作るようにする、という戦術が今のアーセナルにとって最適なのかは少し議論の余地があるところかもしれません。
個人的には、アーセナルはシュート数も得点数も伸び悩み気味、かつラカゼットの将来が不透明なこともあって、そろそろ別の形を模索するのも良いのではないかと感じていましたが、ただ、xTで見るとかなりサカの数字が伸びている、というのは興味深かったです。
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