エミール・スミスロウのアルテタにとっての戦術面での重要性 前編
2020/21シーズンの前半がアーセナルにとって壊滅的なものだったことは今更言うまでもない。ビルドアップは無気力で、創造性を欠き、全くアイディアがなかった。アーセナルが中位に沈んだのも無理はなかった。
ただ、ここまでの不調に陥るというのは1シーズン前にアルテタの3-4-3が守備の組織を保ち、マンチェスター・シティやチェルシー、リバプールといったチームを押さえるのに成功し、トロフィーをもたらしたことを考えると少々驚きではあった。
しかし、時間が経つにつれてこのフォーメーションの攻撃面での欠点が明らかになっていった。対戦相手はコンパクトにローブロックで構えるようになり、そのような相手に対してアーセナルはチャンスを作るのに苦戦するようになった。
何らかの形で変更が必要なのは明らかだったが、チームには起用できるクリエイターがおらず、アルテタはこのやり方にこだわり続けた。アーセナルが夏にフセム・アワール獲得に失敗したのが響く結果となった。
しかし、12/26のボクシングデーに、アーセナルに一筋の希望の光が差し込む。アーセナルユース卒業生のエミール・スミスロウが現れ、アルテタが3バックから離れ、4-2-3-1を起用することを可能にしたのだ。これは、アルテタがアーセナルの監督に就任した当初志向したフォーメーションでもあった。
スミスロウはチェルシー戦で先発するとアーセナルの3点目、サカの得点をアシストしその後も継続して高いスキルと、年齢には見合わないような落ち着きのあるプレイを見せ続けている。
チームにとって必要不可欠な中盤と前線を繋ぐ役割
クロイドンのデブライネことスミスロウは、彼が台頭する前にはチームにとって欠けていた存在、ライン間で輝けるクリエイターとして、チームの中心的な役割を担った。
スミスロウがいることで、中盤と前線の距離は近くなり、さらにこれまでは孤立してしまう事も多かった前線3人の繋がりもより深まった
守備陣を切り裂くスルーパスなどについては、まだこれから成長の余地もあるかもしれないが、スミスロウはタイトなエリアでプレイしてチームに影響をもたらせる選手で、特に相手選手を自分に惹きつけ、周りのチームメイトのためのスペースを引き出すことが出来る。
スラヴィア・プラハ戦のペペのゴールはこの点を非常によく示していた。
ボール前進
3-4-3採用時はアーセナルはビルドアップの時点でボールを前に進めるのに苦戦することが多く、相手が守備陣形を整えるのが容易だった。
だが、スミスロウがトップ下に入ることで、彼が右のハーフスペースの低いいchに下りてボールを受け、素早くパスを出す、あるいは自身でボールを持ちあがることで守備から攻撃への切り替えが迅速になった。
オフザボールの動き
スミスロウの最大の強みの一つは、素晴らしいオフザボールの動きだ。このような動きが出来る選手は、ラインを突破して相手陣に侵入し、チャンスに走りこむことが出来たラムジーがチームを去って以来アーセナルにはいなかった。
ラムジーのスタイルに最も近いのはウィロックかもしれないが、スミスロウもまた、相手の最終ラインを抜けて、第3のランナーとなることが出来、チームのファイナルサードでのプレイに新たな一面を加えられる選手だ。
(後編に続きます)
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