トーマス・パーティのアルテタにとっての戦術面での重要性 前編
中盤を司る将軍というのは、相手の前に壁として立ちはだかったジウベウト・シウヴァ以来ずっと、アーセナルに欠けている存在だ。アスリート力と機敏さ、そしてずっと走り回れるだけのスタミナを兼ね備えた選手。
だがついに、昨年の夏の移籍市場閉幕の直前に、契約解除条項の満額を支払う事でアーセナルはトーマス・パーティを獲得した。アスレチックが報じたところによると、クロエンケはアルテタへの信頼を示すためにこの資金を捻出するのに何らかの形で協力したのだそうだ。
移籍市場最終日の獲得は世界中のグーナーを興奮させた。これこそ彼らが夏中待ち続けていた獲得であったからだ。アルテタもパーティへの信頼を口にし、『我々は長い間トーマスを見てきたし、スカッドに彼のようなハイクオリティの選手を加えられることを嬉しく思う。彼は素晴らしいエネルギーを持ったダイナミックなMFだ。』とコメントした。
パーティはオールドトラフォードでのユナイテッド戦でポール・ポグバを独力で無力化し、マンオブザマッチのパフォーマンスを見せた。多くのファンが彼がアーセナルの中盤の楔となるだろうと期待した。
しかし、怪我とフィットネス面の問題のせいで彼はクリスマス前の期間にそこまで多くの出場機会を得られなかった。エミレーツに来る前の彼はほとんど怪我知らずだったことを考えるとフラストレーションを感ぜざるを得ない。
だが、パンデミックの影響でプレシーズンが非常に短く、プレミアリーグのインテンシティが初経験だったことを考えると、そこまで大きなサプライズでもなかったのかもしれない。
しかし年明け以降は、好不調の波こそあるものの、彼はチームの中心となるだけの、他のチームメイトにはない溢れんばかりのクオリティを備えていることを示してきた。
ボール保持時
アルテタのシステムでは、選手たち、とくにバックラインと中盤の選手たちはボール保持時に自信をもってプレイできなくはならない。後ろからファイナルサードまでボールを繋いでビルドアップを行うことが求められるからだ。
パーティのパス能力について言うと、彼のパスレンジは素晴らしい、ハーフスペースへのパスや、斜めのサイドチェンジなど、彼のロングパスの質は一貫している。
これは数字にも表れており、90分当たり9.03のロングパス成功というのは%ランクでいうと84で、アーセナルで言えばこれを上回っているのはジャカ(10.2)のみだ。
パーティは浮き球のパスだけではなく、グラウンダーのボールも得意だ。彼のライン間に出す縦へのパスは素晴らしく、アーセナルを素早く前に進めることが出来る。
昨季彼は一試合当たり6.23本のプログレッシブパスという数字を残しており、これもまた、彼より数字が多かったのはジャカのみだ。
さらに言うと、パーティの最も過小評価されている能力は、体の位置をスマートに調節することで相手のプレッシャーをかわせることかもしれない。その後彼はボールを持ったまま前進したり、サポートに来たチームメイトへパスを出すことが出来る。
パーティは90分当たり成功ドリブル数1.6を記録しており、これはジョー・ウィロックのニューカッスルでの数字を除けばアーセナルの中盤の選手ではトップで、ウィロックは3人の中盤のうちの一人で、アーセナルでよりも自由にプレイしていたという点は考慮するべきだろう。
ボール非保持時
守備面でパーティはアーセナルの他のMFよりもはるかに秀でている。彼は前でボールを奪い返そうという意志とアグレッシブさを持ち合わせており、チームの守備を安定させる。
スタッツで見るとパーティは昨季一試合当たり4.47回のインターセプトとタックルを記録しており、これは彼が自分がボールを持っていない時も高いレベルの粘り強さを持っていることを示している。
スミスロウの台頭によりアルテタは4-2-3-1を用いることが出来るようになったが、広い範囲をカバーできるパーティの存在もまた、アルテタに5バックではなく4バックでも機能するという自信を与えたに違いない。
(後編に続きます)
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