【スタッツで見る】ラカゼットはとんでもなく過小評価されている、という話

スタッツ・戦術

人間の印象や感覚というのは、我々が自分で思うよりもあやふやなものだ。それはサッカーに関しても当てはまる。

もちろんだからといって、データやスタッツがすべて正しいわけではなく、例えばトーマス・パーティは昨年のスタッツを見ても基本的に平均的なMFの域を出ず、特に何か輝くものがあるわけではないが、今季ここまでですでに明らかに他のMFと比べてワンランク上であることは見て取れると思う。

したがって、時にはデータが有用でないこともあるし、逆に、印象が現実にそぐわない時もあるが、基本的にはサッカーを分析するにあたって自身の感覚や目で見たものとデータというのは相互補完的な関係にあるべきだろう。

特に、得点数など、客観的に測ることが容易なデータに関して強く言えることだが、データと印象のうちの一方が大きくずれていればその都度修正していく必要がある。

今回その例として取り上げたいのがアーセナルのストライカー、アレクサンドル・ラカゼットなのだが、アーセナル時代のラカゼットと言えば皆さんはどのようなイメージを抱いているだろうか?

『守備への貢献が高く、ポストプレイやアシストなどもオーバメヤンよりは得意だが、決定力は平均程度で、そこまで得点が多いとは言えない』

もちろんアーセナルファンの意見を代表することはできないが、恐らく大体のところ上のような感じではないかと思うのだが、特に後半、ラカゼットは得点がそこまで多くない、というイメージはデータが示唆するところと一致しているのか?というのが今回の記事の肝となっている。

合計得点とアシスト

さて、まずはアーセナルにやって来てからの得点数とアシスト数だが、プレミアリーグだけの数字で見ると、45ゴール22アシストとなっている。

確かに半年後にアーセナルに移籍してきたオーバメヤンが既に59ゴール挙げていることを考えると、少々少ないといえるかもしれない。

ただし、ラカゼットは怪我があったり、エンケティアにポジションを譲っていた期間があったりでオーバメヤンほど出場時間が長くない。

90分当たりの数字に直すとラカゼットは90分当たり0.52点、オーバメヤンは90分当たり0.63点となっていて、ラカゼットもプレミアリーグで2試合に1点を上回るペースで点を決めているのだ。

世界最高のストライカーの一人であるオーバメヤンと比較されるからこそ得点が少ない印象だが、実際にはこれはプレミアリーグの他のストライカーと比べてもそこまで見劣りしないレベルの得点ペースだ。

プレミアリーグでの90分当たりの得点数で言えばサディオ・マネ(サウサンプトン時代を含む)を上回っているし、ジェイミー・ヴァーディ(0.55)やドログバ(0.53)とほぼ変わらない。90分当たりの得点とアシストの合計で言えば、0.78なので、ヴァーディ(0.74)を上回ってオーバメヤン(0.77)とほぼ同じだ。

直近の成績

ただし、これはアーセナル加入から今まですべての数字の合計だ。

最近(特にイングランドで)よく言われるのがラカゼットは衰えてしまった、ということなので、今度は直近のスタッツに絞ってみていこう。

以下は、FBref.comで提供されている、ストライカーと関連がありそうなスタッツを2019/20シーズンと今季ここまでの分を合計したうえで、90分当たりに直して算出したものだ。

個人的にも非常に意外だったのだが、実は最近はオーバメヤンは結構xGをPKで稼いでおり、昨季と今季のPKを除いたxGでは何とラカゼットの方がオーバメヤンを上回っている。

今季の他の選手との比較で言うと、ケインの0.41と互角で、同じくらいの値の選手にはヴァーディ(0.43)、ジョタ(0.43)、アグエロ(0.37)、ソンフンミン(0.37)あたりがいる。

また、オーバメヤンが今季の不調にだいぶ引っ張られているというのもあるが、決定力を表す指標ともいえるxGと比較してどれくらい実得点を挙げているかに関しても、二人とも同じ水準だ。

チャンス創出やプレスに関してはイメージ通り、ラカゼットに一日の長があるが、イメージと異なるという意味では、オーバメヤンもプレス以外の守備アクションはかなり多く、ラカゼットと比べてもそこまで劣るわけではないというのは注目だろう。

特にブロック数がかなり多かった。

利き足とxGと比べたパフォーマンス

最後に、Twitter上でストライカーに関して美しいデータビジュアルを作成していたRobbieさん(@datarobbie1)に画像を記事に掲載しても良いか、と尋ねたところ快くOKしてもらえたので、ラカゼットとオーバメヤンそれぞれの利き足や得点エリアごとに見たxGも紹介したいと思う。

オーバメヤン

オーバメヤンはアーセナルに移籍して以降はxGを大きく上回って得点を挙げているが、そろそろ落ち着きつつある。ドルトムント時代はむしろxGほど点を決められていなかったので、これがアーセナルに来て成長したとみるべきなのか、それとも一過性のものなのかは興味深い所だ。

ただし、アーセナル時代もサイドからのの得点はxGを大きく上回っているわけではなく、やはり中央からの得点の精度が高い。ドルトムント時代は中央でxGをそこまで上回っていないのは、シュートの質というよりアーセナル時代より単に中央でビッグチャンスが転がってくる回数が多く、その分一本のミスが数値を下げることに繋がる、という理由ではないかと推測できる。

ラカゼット

面白いことにラカゼットとオーバメヤンは、右足・左足・頭の得点の割合がほぼ同じだ。フランス時代の成績が圧倒的だった影響でxGをどれくらい上回ったかのグラフ(左下)の縦軸の取り方が違うが、全体で見ればアーセナルに来て以降は、オーバメヤンと比較してそこまでxGを0.1上回る程度でそこまで変動がなく安定している。

当然といえば当然だが逆足でのシュートが少し苦手なくらいで、弱点といえるほどのものはなく、逆に右サイドから右足でのシュートはとても得意な形といってよさそうだ。

残り契約年数の問題などもあり、去就に関しての質問なども出ているラカゼットだが、今後に注目したい。

スタッツ用語の解説など:

スポンサーリンク

関連記事(広告含む)

Posted by gern3137