スミス=ロウとマルティネッリがアーセナルにもたらすもの
ここ最近、若手たちがアーセナルに新しい風を吹き込んでいることに関しては多くが書かれている。パフォーマンスという意味ではチェルシー戦の方が上だったかもしれないが、より注目すべきはむしろブライトン相手にプロフェッショナルな勝利を収めた、という結果の方だろう。
アルテタのアーセナルは過去にチェルシーやリバプール、シティといった相手に結果を残せることは証明してきた。それよりも苦戦してきたのは今回のブライトンのような相手の方だ。
アーセナルの復調はちょうどガブリエル・マルティネッリとスミス=ロウがチームに起用され始めたのと時期が一致しており、かつこの間サカは2戦連続でマンオブザマッチに選ばれている。
これをもって多くの人が若さがアーセナルを救ったと結論づけた。もちろんこれは若さ自体がどうこうというわけではない。なぜならネルソンはベンチにすらおらず、ウィロックとエンケティアの二人も先発していないからだ。
むしろ、年齢とは関係なくマルティネッリとスミス=ロウ自身のクオリティに負うところが大きいだろう。
少し前に書いた通り、ユース選手や若手はローテーション要員になれれば大成功ではある。クラブが第3ストライカーに移籍金を叩くのを防ぎ、ローテーション用の右ウイングをわざわざ獲得してくる必要がなくなるだけでも儲けものだからだ。
だが、スミス=ロウ、サカ、マルティネッリの3人はローテーション要員とは一線を画すだけの能力を備えていると最近の試合で示している。
直近の二試合で特に目を引いたのはロウで、彼と同じクオリティを備えた選手が現状チームにいないだけにより目立って見える。
今季のアーセナルを見ている人ならだれでも、今のチームが中盤と前線を繋ぐことに関して大きな問題を抱えていることを知っているだろう。
相手守備陣の前でただ手をこまねいていることしかできず、オプションとしてラカゼットのトップ下起用迄試したくらいなのだ。
スミス=ロウはそういった点で、全体的な技術のレベルが高く、タイトなスペースでボールを扱うことも出来るし、ハーフターンでボールを受けるのも厭わないという意味では現在のチームに置いてレアな存在だ。
だが、スミス=ロウがチームにもたらしているのはこれだけではない。
まず第一に、彼はボール非保持時にペナルティエリアに向かって走り、ストライカーをサポートすることが出来る。チェルシー戦でもベジェリンからのボールで惜しい場面があったが、このようは走り込みはエルネニーやセバージョス、ジャカといった選手たちが行うことはない種類のものだ。
また、サンプルサイズは少ないが、これがラカゼットのパフォーマンスに良い影響を与えているように思われる。トップ下が居れば、ラカゼットがカバーしていなくてはならない範囲は減り、プレスの負担も減少した。
ラカゼットは9.5番のような位置で、誰と連携すればいいのか明確ではない状況も多かったが、スミス=ロウが彼の良い相棒となっている。
そして、ロウの知性溢れるポジショニングも非常に好ましい。彼はマルティネッリやサカが中に入っていく際にその隙間を埋めるように外に流れてくれる。これはかつてメスト・エジルが良く行っていたプレイだ。
これにより、アーセナルの攻撃は流動性が増し、ポジションチェンジもより自由に行うことが出来る。ブライトン戦では右と左から一本ずつサカが素晴らしいチャンスを演出したが、これはスミス=ロウが彼とポジションチェンジを厭わないことによるものが大きい。
正直に言って、なぜアーセナルはウィリアンにこのサイドから中に入るような役目を果たせると考えたのかよくわからない。ウィリアンは考えうる限り最も伝統的で、サイドのライン際を上下するタイプのウイングだからだ。
彼のこのスタイルは左から中に入っていくことが多いアザールが居たチェルシーや同じようなプレイを見せるネイマールが居たブラジル代表ではうまく機能していたが、なぜかアーセナルではウィリアンが一度もこなしたことのない役割を任せていた。
このサイドと中を行ったり来たりするようなタスクをこなすのがより上手いのがスミス=ロウで、彼が鈍っていたアーセナルの攻撃を活性化した。
そして、恐らくここ最近最も興味深いのはブカヨ・サカがマンオブザマッチのパフォーマンスを連発していることだろう。彼はこのポジションでペペとウィリアンをはるかに凌駕するプレイを見せている。
また、そこまで注目を集めることはないが若手の重要な強みの一つは年長の選手より連携を築くのが上手いことで、昨季我々はマルティネッリとWBでプレイするブカヨ・サカが素晴らしいパートナーシップを築くところを目撃した。
今季も既にサカとスミス=ロウは二人とも中外両方でプレイできる選手であることを活かし、頻繁なポジションチェンジから良いシナジーを生み出している。
一方で、より直感的に分かり易いのがマルティネッリのクオリティだろう。彼の絶え間ない走りはルイス・スアレスあるいはアレクシス・サンチェスを彷彿とさせる。
彼はアイドルはクリスティアーノ・ロナウドなのだと語っていたが、それがなぜなのか理解するのはたやすい。
チェルシー戦ではティアニーがマルティネッリの獰猛なプレスをよくサポートし、お互いの力をうまく引き出した。
また、マルティネッリがいることで、技術面に不安があるアーセナルの中盤の負担も軽減される。状況判断力やダイレクトでの素晴らしいパスを得意とするとは言えない中盤の選手たちが多いが、マルティネッリの献身性のおかげで、彼らはとりあえず左サイドへのダイレクトパスを選択することが可能となる。
何故なら、確認するまでもなく、左サイドにボールを出せば、マルティネッリが公園でテニスボールを投げられたブル・テリアのようにボールを追いかけて走ってくれるだろうという事はわかっているからである。
アーセナルのプレイによりダイレクトさが必要な時には、マルティネッリがそのオプションを提供する。
今季の後半戦のアルテタにとっての大きな課題は、オーバメヤンとマルティネッリをいかにして一つのチームに組み込み機能させるかだろう。
ここまでの所、マルティネッリの活躍は主にオーバメヤンが不在の時に訪れている。彼らは二人ともスペースに走りこむのが得意で、そこまでボールタッチが多くないという意味で共通点があり、彼らを同時起用するには残り二人はよりボールを足元で持ってのプレイが得意で、技術レベルが高い選手を用いる必要があるだろう。
この役割に、サカとスミス=ロウの二人はぴったりかもしれない。
ブライトン戦でオーバメヤンとマルティネッリのポジションチェンジなどは少し見られたが、もう少し練習場んでの訓練が必要だろう。
今の所この二人の相性が良さそうだとは言えないが、今の時点で無理だと断言することも出来ない。
アーセナルは才能あふれるこの3人の若手を怪我や使い過ぎから守る必要があるが、アルテタが彼らの上手い起用法を見つけることが出来れば、彼の監督としての立場は何とか守られるかもしれない。
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