アーセナル 20/21 シーズンプレビュー by StatsBomb 前編

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StatsBombのCEOであるTed Knutson氏によるアーセナルのシーズンプレビューをお届けします!まず昨季の振り返りからです!

がたがたのエメリ時代最終盤

監督交代、グローバルパンデミック、得失点期待値ではリーグ10位の成績。にもかかわらず、シーズン最後にはFA杯を優勝したかと思うと、スカウトの大多数とフットボール長サンジェイを解雇。こんなアーセナルのシーズンを、いったいどう見ればよいのだろう?

昨夏の補強は悪くなかったものの、相場と比べてアーセナルが支払いすぎたのは間違いない。サイドのFWの補強は急務で、ペペはその穴を埋めるのにうってつけだったが、彼らは25m£程余計に払ってしまった。

ティアニーはケガの影響でポジションを掴むまでに時間がかかったが、いったんチームでの立場を確立するとファンのお気に入りとなった。サリバは即座にサンテティエンヌへと送り返され、ムスタフィの豪華バージョンともいえるルイスが連れてこられたが、ファンはただひたすらウナイ・エメリがこの二人を同時に起用する必要がないよう願うこととなった。

とはいえ、彼らにその一年前にやってきたトレイラ、レノ、ゲンドゥージらを合わせれば、19/20シーズンを楽観視できる理由がアーセナルファンには十分あるように思えた。

2016年以降のアーセナルの得点期待値と失点期待値の推移。得点は減り、失点は増えていっているのがわかる。

もともと私は、ウナイ・エメリがアーセナルの守備を安定させようとするあまりにヴェンゲル時代の象徴である攻撃力を犠牲にしてしまうのではないかと危惧していた。

しかし、蓋を開けてみると、エメリのアーセナルは攻撃の鋭さを失ったにもかかわらず、守備すら安定することはなかった。

各チームごとの相手のパスに対応する守備アクションの位置のヒートマップ。右が前線、左が自陣。リバプール・シティ・チェルシーは際立って敵陣でのボール奪取が多い。

ベンゲル時代終盤の補強の方針へのフラストレーションに加え、私が新監督は、よりアグレッシブなハイプレスを展開してくれるのではないかと期待していた。

恐らくスティーブ・ボールドの提案ではないかと思われる、アーセナルが時折見せるローブロックとプレスを組み合わせたスタイルは4位奪取には効果的だったが、それ以上ではなかった。私はより前からのプレスを行うのと同時に、順位も上がるのではないかと考えていた。

だが不運なことに、エメリのもとアーセナルはボール保持の仕方を忘れてしまっただけではなく、プレスの行い方も忘れてしまったようだった。

PKを除く各試合ごとの得失点差期待値。縦軸が失点期待値、横軸が得点期待値。赤が濃いほど得失点期待値がプラス、青が濃いほど得失点期待値がマイナスであることを示す

優秀な守備も迫力のある攻撃も構築することが出来なかったエメリは11月の成績低迷もあり、解雇されることとなった。

クラブの内部の人物の私は昨夏話を聞いたが、は1シーズン目が終わった時点でエメリは解雇ギリギリのところまで近づいていたのだという。

もしそうだとすると、サンジェイがエメリとの契約延長を行おうとしていた、というのはさらに奇妙に思える。そして、彼/彼女は将来がないとわかっている監督のためにアーセナルが夏に大金を費やしたのも筋が通らない、とこぼしていた。

クラブ関係者のコメントの行間を読むに、近年のアーセナルの管理体制は最高に好意的な見方をしても『がたがた』、勘繰るのであれば『燃え盛るカオス、そしてある程度の腐敗と癒着つき』といったところだ。

アルテタの登場

2018年の夏にエメリが監督に就任する前に、アルテタはアーセン・ベンゲルの後継者として指名される直前までいっていた。

その一年半後に、アルテタはアーセナルでチャンスが与えられることとなる。だが、現在の話をする前に、少し時をさかのぼらせてほしい。

2017年の春、アーセナルは密やかにベンゲルの後継監督の候補者の面接を行っていた。そのリストにはトマス・トゥヘルやロジャー・シュミットらの名前もあった。(ポチェッティーノの噂もあったが、私自身はそれに関しては噂以上のものがあったのかはわからない。)

結局トゥヘルはその後エメリの後任としてPSGを率いることになり、シュミットはPSVへと渡った。これを見るに、アーセナルがハイプレス型のスタイルを志向する監督を狙っていたことは明らかであるように思う。

アルテタはベンゲルの薫陶を受けただけではなく、3シーズンをペップ・グアルディオラのもと過ごしたが、彼は世界最高の監督の一人であるだけではなく(恐らくこれから私が何を言うかもうお分かりかと思うが)ハイプレスのスタイルの信奉者でもある。

シーズン途中での監督の交代の問題点は、守備の構造やチームの核となる方針を変えるために必要なトレーニングの時間が取れないことだ。チームがELに参加しており、国内カップ戦で上位進出しているような場合は特にそれが顕著で、これを考慮すると、アルテタのチームが少し戦術的な改善はあったとはいえ、エメリのサッカーとそこまで劇的には変わらないスタイルだったのも驚きではない。

さらに、アルテタが監督就任時点でアーセナルのプレミアリーグ上位進出の望みは風前の灯火で、リーグ戦で結果を出すことがそこまで重要な優先事項だったとは思えないし、アーセナルは21試合でなんと4枚ものレッドカードを出されており、これによりアルテタが本当に自分のやりたいことを実現できたとは思えない。

少し驚きだったのは、アルテタのチームがいわゆるBIG6相手に結果を残し始めたことだ。最後にアーセナルがこのような結果を出せたのははるか昔のことに感じる。

リーグ戦ではアーセナルはリバプールを撃破し、FA杯でもシティとチェルシーに勝利、そしてコミュニティシールドでも再びリバプールを破った。これは新しいアーセナルだ。

アーセナルはここまでのところ得失点期待値で見ると相手チームに負けていることが多く、試合経過や内容は素晴らしいものとは言えないが、結果だけは出すことが出来た。

さて、問題は、これは長期的持続可能なのか?という点だ。

(中編に続きます)

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Posted by gern3137