【戦術分析】エジルの不在によりチームにとって過剰な存在となるジャカ 後編

スタッツ・戦術

この記事は、昨日の前編の続きとなっています

ボール保持率と一試合当たりのパス数

2016-17: 56.5% , 563本
2017-18: 58.5% , 619本
2018-19: 56.1%, 548本
2019-20: 53.3%, 482本

もちろん、ボール保持率は低ければ悪いというものでもない。ベンゲル時代の最後の二年の成績は悪く、これを引き継ぐべきだというわけではない。

とはいえ、それでもこれが興味深い変更で、議論の価値があることに違いはない。これは、チームが脱エジルを目指していることと密接な関係があるように思われる。昨季エジルは今季と比べればまだ比較的多く試合に出ていたが、その際のポゼッション率は比較的高い。

だが、今はエジルがいないため、アーセナルはサイドから攻撃することを強いられている。

元ドイツ代表、現レバークーゼンのスポーツディレクターによって生み出された"パッキング"という指標は、パスあるいはドリブルによって相手選手をかわした数を計るものだが、この指標は試合の結果との関係が非常に深い。

この指標では、エジルは他に並ぶ者がなく、彼は敵の裏でボールを受けるためのスペースを見つけることが世界一上手いと言ってもいい。

2016年のESPNの記事よると、エジルは2016年のEUROで一試合当たり63度相手をかわしている。面白いことに、この夏アーセナルはジャカを獲得したわけだが、ジャカもまた、EUROとブンデスリーガ共に、パスで相手をかわす数値は非常に高いものを記録している。

したがって、ジャカが縦パスでエジルにパスを出し続けることが出来たのは驚きではないといえるだろう。ベンゲル時代にはこの二人の間のパスが最もチームで多いものであることは多かったし、チームのボール前進の中心となっていた。

だが、もうエジルはプレイすることがほとんどなく、エメリはアーセナルによりエネルギッシュなプレイを求めているらしい。ハードワークで相手を封じる選手を望んでいるようだ。だが、エジルを外すのであれば、同時にジャカも不必要になってしまう。

何故ジャカは受け手が居なければ中央に縦パスを通すことが出来ないにもかかわらず、エメリは彼をキャプテンに任命し、常に起用し続けるのだろうか?

エジルとジャカのコンビネーションがなくなったことで、相手のゴールから20m以内の場所でのパス数は大きく減ってしまった。同時に、アーセナルのボール保持率は下がり、相手チームがアーセナル側のゴール近くで成功させるパス数もアーセナル史上最悪の数字となっている。

深い位置からのボール前進/相手チームのボール前進を許した数

2016-17: 12.6 / 5.2
2017-18: 12.8 / 5.3
2018-19: 10.5 / 6.7
2019-20: 9.1 / 6.5

ここまでのところ、アーセナルがプレスをかけようとしたときの精度は低い。だが、改善の兆しは見られている。リーグ戦で最も試合を支配したのはボーンマス戦の前半と、スパーズ戦の最後の55分だと思われるが、この際アーセナルは明確にプレスをかける意思を見せた。

もしアーセナルがポゼッションを支配し相手の攻撃機会を奪うつもりがないのであれば、少なくともよりプレスの精度は高めなくてはならないだろう。スパーズとボーンマス、という悪くないクオリティのチーム相手にそれを見せられたというのはポジティブな点だ。

上述の通り、ジャカはエジルが居なければチームを前に進める効果的なパスを出せない。したがって、ジャカを外し、より運動量のある3人を中盤に据えてみるのは面白いかもしれない。

エジル以外に純粋なトップ下タイプの選手はアーセナルにはいない。ウィロックとセバージョスがこのポジションでプレイしたことはあるが、二人とも、よりMFの低い位置から上がっていく方が向いているタイプだ。

恐らく、カップ戦でのパフォーマンスが今季好調なのは、トレイラとウィロックが二人とも先発することが多いのと無関係ではないだろう。縦へボールを進められる今季好調のゲンドゥージを合わせ、この3人が同時にプレイするところを見てみたいものだ。

より高い位置でプレイし、練度の高いプレスをかけるのがアーセナルの今季の成功の鍵だろう。何度かそれは今季すでに成功しており、これを磨いていくのが一番簡単な道に思える。

このスタイルはアーセナルが現在抱えている選手たちにもあっているし、エメリの相手を無効化したいというスタイルとも相性がいいはずだ。

もちろん、それと同時に相手の守備陣を攻略する必要があるが、プレスをかけ続けて相手を疲れさせればそれも楽になるはずだ。

また、ティアニーとベジェリンの復帰はアーセナルにより豊かな攻撃オプションをもたらしてくれるだろう。彼ら自体が効果的な武器となるだろうし、また、彼らに注意が引きつけられれば、逆に中央が手薄になるはずだ。

とにかく、エメリはまず彼がアーセナルにどのようなプレイをして欲しいのかを明確にし、それを植え付け、ボール保持時比保持共にプレイの精度を上げる必よぐあある。

そうしなければ、今後もアーセナルは不安定なパフォーマンスを続け、監督への疑問符はついて回ることだろう。

(Source: https://arseblog.com/2019/10/tactics-column-ozils-absence-makes-xhaka-redundant/ )

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Posted by gern3137