トレイラの苦難

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昨季、トレイラは段階的にイングランドに適応したのち一気にトップチームに台頭し、アーセナルの抱える問題の解決策として称えられた。アーセナルが長年良いボール奪取者を欠いており、このウルグアイ人の守備的MFはアーセナルファンの心をくすぐった。

トレイラの活躍は22試合無敗の時期と重なっており、このことが、アーセナルの再建の難しさについてアーセナルファンに誤認識させることにつながった。フラム戦では既に俺たちのアーセナルが帰ってきた!というチャントが響いていたが、この日はトレイラのチャントもよく聞かれた。

しかし、これは両方とも少し時期尚早であったことが明らかになった。冬を過ぎるとトレイラの影響力は落ち始め、今やどうやらエメリはトレイラのことをあまり気に入っていないようだ、という雰囲気が漂っている。エイミー・ローレンスの記事が指摘したように、エメリ自身はトレイラよりむしろエンゾンジの獲得を望んでいたようなのだ。

では、なぜトレイラのキャリアは最初の勢いを失うことになってしまったのだろうか?もちろん、それにはプレミアリーグのフィジカル面への適応や、代表での試合が多く、負担が大きいという点が大きい。ウルグアイは2018年にワールドカップに参加し、2019年にはコパ・アメリカ、そして2020年にはまたコパアメリカがある。

しかし、戦術面での理由もある。そのうちの最もシンプルなものは、トップレベルの監督は中盤の底にボール配給力に優れる選手を起用したがる、ということだ。チェルシーも同じようにジョルジーニョを底に据え、カンテをより前のポジションで使っており、エメリも同じようにトレイラを起用している。

トレイラはユース時代はトップ下としてプレイしていたわけだし、彼のような選手を監督がどう見るかとファンが見るかに関しては隔たりがある。ファンはより心配性なので、中盤の底にはボールを奪うのが上手い選手を置いて相手の攻撃に備えたいと思うものだ。

だが、現在の監督はボール奪取力を単なる守備ではなく、攻撃にも用いることのできる素質だと考える節がある。現在のフットボールではハイプレスとトランジションに大きな重点が置かれているため、ボール奪取が上手い選手は過去よりも前目のポジションで起用されることが多い。

とはいえ、恐らくエメリが最もトレイラに関して気にしている点はボールを前に進める能力だろう。トレイラは効率の良いパサーでコクランやフラミニのように、ボールは奪えても全くパスはできない、というわけではない。

だが、パスミスこそ少ないものの、トレイラはアーセナルでは野心的な縦パスやロングパスを出すことが少ない。サンプドリアやウルグアイでは、彼はダイヤモンド型の中盤の底でプレイすることが多く、トレイラはショートパスの交換からプレッシャーを回避することが上手い。

だが、アーセナルの中盤はより互いに距離がある。したがって、サイドバックにパスを出す際によりロングレンジのパスを得意とするゲンドゥージやジャカをエメリは好むのだろう。エメリはカオスよりも秩序のある攻撃を好み、試合のテンポをコントロールするという点では、トレイラも悪くはないがジャカには一歩劣る、というところだろう。

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また、最初からエメリはトレイラをチームから外していたわけではなく、去年の途中からエメリはトレイラのいないチームを志向するようになっていったという点も見逃せない。

エメリは昨季の途中から3バックを用いることがおおくなり、これはトレイラに適したシステムとは言えない。彼は走り回ることが得意で、かつボール保持時にはセンターバックの間に落ちるタイプの選手だからだ。 3バックを用いるのであれば、この役割はあまり必要ない。

そして、エジルがチームを外れることが増えたのも、トレイラの必要性を減少させることとなった。エジルが中盤にいる際には、より守備を専門とする選手の重要度が高く、かつボールをエジルに供給する役割はジャカあるいはゲンドゥージに任せて彼はピッチの掃除に集中できたからだ。

エジルがチームを外れるようになり、ラムジーにとってかわられた際にその状況は加速した。ラムジーはオフザボールのランを主戦場とするため、彼の空けたスペースを埋め、かつポゼッションをコントロールできる選手が必要だからだ。ラムジーとトレイラというのはあまり相性が良くなかった。

もちろん、よりチームにフィットするためにトレイラが改善できるポイントもある。トレイラは反応型の守備が得意で、もちろんそれ自体は悪くないのだが、よりオープンになってしまうことが多いアーセナルでは、ポジション外につり出されることが増えすぎてしまう。

ボール奪取能力は確かに重要だが、飛び出して行ってボールを奪うだけが守備ではない。もしかすると、こういった点でトレイラの守備は微調整の余地があるかもしれない。(念のため指摘しておくが、私がこれに関してジャカのほうがトレイラより優れていると考えているというわけではない)

また、彼のエネルギッシュな走りは貴重だが、もう少しセーブすることを覚える必要もあるかもしれない。トレイラは後半になると存在感が薄れることが多いからだ。また、練習に必死で足にあざが出来ても練習をやめないという話もあり、そういった姿勢は素晴らしいが、そのような状態で試合で100%の力が発揮できるとも思えない。

エンゾンジの獲得希望とジャカの重用から見てとれる通り、もしエメリが中盤に求めるものが身長なのだとしたら、これに関してトレイラはどうすることも出来ない。サンプドリアのジャンパオロ監督がコメントした通り『もしトレイラが180cmあれば、彼は100Mの選手になっていただろう』ということだ。

過去に何度か言った通り、私としてはゲンドゥージとトレイラのダブルボランチをエメリは用いるべきだと思う。確かに、二人とも相手に反応して守備をするタイプの選手であるのが懸念と言えば懸念だが、どちらにせよこの懸念はジャカを起用したところで解消されない。

究極的には、昨季後半トレイラの出番が減ったのは、エメリは4-3-3/4-2-31を使用する機会が減ったからで、スリーバックではトレイラが自然とフィットできるポジションがなかったから、というのが一番の理由だと思われる。そして、今季のプレシーズンでもチームに溶け込む時間を得られなかった。だが、ゲンドゥージとセバージョスが着実にエメリの中での評価を上げており、もしこの二人の同時起用が増えれば、トレイラも出番を多く得られるはずだ。

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