メルテザッカー率いるアーセナルユースはグナブリーの過ちを二度と繰り返さない
結果だけ見れば、グナブリーがアーセナルから去ったことは、大成功ということになった。
かつてはウエストブロムでプレイするにも値しないという評価を受けていた選手が、バイエルン・ミュンヘンのシーズン最優秀選手に選出されたのだ。ドイツ代表でも8試合で7得点という活躍を挙げ、国内最大のクラブで中心選手となった。
もし今誰かがバイエルンからグナブリーの獲得を目指すとすれば、3年前にアーセナルがブレーメンから受け取った5Mの10倍以上は必要になるだろう。
もちろん、彼の台頭が全く驚きではないと感じているアーセナルのスタッフも多いだろう。彼の才能を疑ったものはほとんどおらず、単にアーセナルではうまく成長させられなかったというだけなのだ。
少なくとも今は、このような過ちからアーセナルが学びつつあるという兆候が見られる。ネルソンやロウ、ビエリクといったタレントたちはグナブリーのように無益な時間を過ごしたりはしていない。
アーセナルがグナブリーをウエストブロムにレンタルに出すという決断をした時、彼は2014/15シーズンのほとんどを棒に振ることを強いられた深刻な膝のケガから復帰したばかりだった。
彼には忍耐強く回復を待つ時間が必要だった。彼には共に難しい時間を戦い、準備ができた際にはチャンスを与えてくれる監督が必要だったのだ。
グナブリーが移籍する前からすでにピューリスの下でプレイするというのが彼にとって最適ではないということは火を見るより明らかだった。プレミアリーグで経験を積ませたいという気持ちはわかるが、その経験というのは実際にプレイ時間を得なければ得られない。
当然ながら12分のプレミアリーグ出場はグナブリーにとって十分ではなく、むしろ彼の成長を後退させる結果になってしまった。
全てをピューリスの正ということにするのは簡単だが、アーセナルは彼がどのようなサッカーを志向しているかわかっていたはずだ。ピューリスのスタイルのおかげでグナブリーにけがから復帰する時間を与えられなかったがにそれについてアーセナル側が不満を言うことはできないだろう。
彼が一月にアーセナルに帰ってきてからは、シーズンの残りをフィジカル面の復調に費やさなければならず、主に機会はU-23に限られていた。
だが、ケガが続発したオリンピックのドイツ代表に召集されたことですべては変わった。彼は大会トップとなる6得点を挙げ、ドイツを準優勝へと導いたのだ。即座に、彼の故郷ドイツのクラブが彼とアーセナルの契約がすぐに切れることを記憶にとどめた。
多くの点で、グナブリーはプレミアリーグからより出場機会の得られやすい海外に移籍する、今のサンチョやブラヒム・ディアスのような選手たちの先駆けとなったといえる。
彼はウォルコットやチェンバレン、そしてイウォビといった選手たちと競争を強いられ、全くの無駄だったといえるウエストブロムにレンタルに送り出すようなクラブには自身の成長を任せられると信じられない、と感じても当然だろう。
とはいえ、アーセナルもこの事態から学んだようで、より慎重にレンタルを交渉し、出場機会に応じた報奨金なども設定し、若手が機会を得られるように気を遣うようになった。
若手の移籍に適している、とアーセナルが感じるクラブを見つければそこに何度も選手を送り込むようになった。最近では、コクラン、サノゴ、マヴィディディ、ビエリクが皆チャールトンにレンタル移籍しており、今季はエンケティアの獲得を望んでいるそうだ。
そして、グナブリーのような次世代のスターをドイツに完全移籍で放出するのではなく、ネルソンやロウのようにレンタルで送り出すようになっている。この夏も恐らくこの流れは続くだろう。
アーセナルは評判が良いベン・ナッパーをレンタルマネージャーとして二月に任命し、メルテザッカーとその副官ルカッセンは常に若手の成長に最適なクラブを選ぶことの重要性を説いている。
『レンタル移籍は素晴らしい仕組みだ。ブンデスリーガには我々の選手たちに興味を持っているクラブが多くある。ネルソンの活躍を観ればそれも頷ける。
若手の成長を管理するのは大変で、彼のキャリアがこのような道をたどっていることに我々は満足している。他にも慎重に将来を考えてあげなくてはならない若手を多く抱えていて、彼ら一人一人の挑戦と将来がある。』
このような姿勢は既に結果を残し始めている。ネルソンは恐らく来季ファーストチームで機会を得るだろうし、ビエリクがアーセナルに残るかはわからないが、残らなくともそれなりの移籍金をアーセナルは得るだろう。
もちろん、これくらいではグナブリーを逃してしまった落胆を埋めるには足りないが、少なくとも、アーセナルファンは次にグナブリーのようなタレントが現れたときには、アーセナルできちんと面倒を見られ、活躍する機会が与えられる可能性はより高いと安心していいだろう。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません