過小評価されている質実剛健のブカヨ・サカ?
先週リオ・ファーディナンドがまるでファンのパブでの議論のような『フィル・フォーデンはワールドクラス(そもそもそれが何を意味するのかも曖昧だが)かもしれないがサカはワールドクラスと呼ぶにはまだ早い』というコメントを残した。
サカが挙げているPKで4得点を除くと、サカとフォーデンは二人とも9ゴール7アシストとなっており、キャリアを通して90分当たりの得点とアシストの合計数はサカは0.85、フォーデンは0.7だ。
もちろん、そもそもリオ・ファーディナンドが何を話すかなど真剣にとらえる必要はないのだが、それがアーセナルファンの神経を逆なでし、サカがサッカー界から過小評価されていると思わせたのは間違いない。
解説として訪れたポルトからの帰りの飛行機で、アウェイ戦を観戦に訪れたアーセナルファンと同じ便で英国へと帰ったファーディナンドは、フライト中はかなり居心地の悪い思いをすることになったようだ。
ファーディナンドはもともと注目を集めるためわざと物議をかもすようなコメントを出すような人物ではあるし、そもそもワールドクラスの定義も定まって以上、それが妥当かを考えるのはあまり意味がないが、それでも、この一連の騒動により、奇妙なことに、実際にサカが少々過小評価されているという事実があぶり出されたように思う。
なぜこう思うかというと、アーセナルファンの私でも、時々無意識にサカを過小評価してしまっているときがあるからだ。
もちろん彼が良い選手だということは知っているし、世界トップレベルの選手になれるタレントだというのは常にわかっていた。にもかかわらず、時々彼の叩きだしている数字を見て少々驚いてしまうことがある。
例えば、2021年のユーロだが、サカはもともとスカッドに含まれてすらいなかったが、グリーンウッドがメンバー外となったことで滑り込みでメンバー入りを果たした。だがチームにはフォーデン、グリーリッシュ、ラッシュフォード、スターリング、サンチョといった選手たちがおり、大会最初の二試合ではサカは出場していなかった。この大会ではUEFAがスカッドの人数を23から26へと増やしているが、もしそれがなければサカはそもそもメンバーに呼ばれてもいなかっただろう(もちろんそうなっていれば、それはそれで彼のここまでのキャリア史上最も落胆したであろう瞬間を避けることは出来たのだが)。
だが結果的に三戦目からサカはチームの主力として台頭し、ずっとその座を手放すことはなかった。サウスゲートもサカを過小評価しており、何週間か練習を見てみるまで、彼の才能に気付かなかったというわけだ。
今となっては上にあげた選手は誰もイングランド代表でのサカのポジションを脅かす様子は全くない。
この時サカはまだなんと19歳で、メンバー外ギリギリの所からスタメンを勝ち取るというのは非常に大きなステップだったはずだ。
一方で、クラブレベルではアルテタが左WBは重要なポジションだが、サカの才能はよりゴールに近い所で発揮されると気づくまでにそこまで長い時間はかからなかった。
サカは初めての出場となった今年のCL、グループステージで得点数とアシストの合計は全選手中最多の数字を残したが、それがファンファーレで迎えられ、新聞の見出しに踊るようなことはなかった。
Embed from Getty Imagesではなぜ、彼のような才能を持つ選手が過小評価されがちなのだろうか?
まず第一の理由は彼のプレイスタイルと関連しているのだろう。彼は必要以上に華やかなプレイを見せるようなスタイルの選手ではない。彼はボールを受け、相手に向かっていき、クロスやパス、シュートに適した角度を見つけるとそれを遂行して見せる。
もちろんサカはそれが非常に上手いが、その際にあまり派手な動きを見せたりということはない。彼が決めるゴールは素晴らしいものも多いが、月間最優勝ゴール候補に挙がるような得点はそこまで多くない。
数字や結果、役割的なプレイスタイルを見ればサカはサラーやロナウド、アリエン・ロッベンに似ているが、そのやり方が少々異なる。彼らはみなプレイを一目で見て分かるような圧倒性を備えているが、サカはぱっと見そこまで圧倒的には見えない。体つきだけ見ても、実際のフィジカルの強さとは裏腹に比較的スリムに見えるし、動きも軽快だ。
サカの人懐っこく、気取らない態度もそのイメージに一役買っているに違いない。
ロッベンやサラー、ロナウドが一発で相手をノックアウトしそうな雰囲気を漂わせている一方で、サカはより密やかで一撃を食らうまで(あるいはスタッツサイトで実際に彼の数字を見るまで)相手が気付かないようなタイプだ。
また、もう一つ言えるのはサッカー選手というのは往々にして不在時にその評価が上がるということだ。ファンはチームにスター選手が不在の時に、彼らがいかに重要な存在だったかを痛感させられる。
だが、我々にとっては喜ばしいことに、今の所アーセナルファンはそれを痛感せずにいられており、サカはほぼ常にチームにいる。
そして、選手の評価に関してはまずプレミアリーグかCLのトロフィーを勝ち取らなければ始まらない、といった風潮もあるように見える。
これは過去のアーセナルの選手たちにも言えることで、現在高い評価を受けている選手たちは、優勝チームのメンバーではあったかもしれないが、世界最高というほどではなかった選手たちも何人かいるだろう。
もし彼らが2020年か2021年のアーセナルに居たとしたら、独力でチームを8位より上に引き上げてくれていただろうとは思わない。
この比較を持ち出すのはアーセナルファンとしては少々心が痛むが、これはハリー・ケインのトッテナムの初期の頃のキャリアとも通ずるものがある。
最初ケインは本当に良い選手なのか?という疑いの目で見られており、トロフィーを獲得できなかったため、圧倒的な数字を何シーズンも連続で残し続けてようやくその才能を認められるにいたった(正直に言おう、彼が才能ある選手だと認めるのは彼がバイエルン・ミュンヘンに移籍してくれたことでかなり容易になった)。もちろん、サカに関しては彼の評価を高めるようなトロフィーを獲得してほしいと願っている。
サカの評価を上げるためというよりも、それこそサカのようなレベルのタレントに相応しいと思うからだ。そして、それはアーセナルが成功を収めるということでもある。
そしてプレミアリーグが現在のサッカー界で金銭面で大きく優位に立っていることを考えると、アーセナルはサカのようなタレントをクラブに留められる見込みはかなりある。
サカとアーセナルが互いを栄光へと導き、彼が自身の才能に値する評価を勝ち取ってくればこれほど喜ばしいことはない。もちろんサッカー界からの評価などは副次的なものにすぎないが、もしこれが実現すれば、スタジアムの周りにはまだまだ銅像を建てるスペースが残っている。
ブカヨ・サカはそれほどのタレントなのだ。
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