アーセナルのリーダーたち 前編
イングランドでは、キャプテンという立場を非常に重要なものとして捉える伝統がある。他の文化圏でもそれは同じかもしれないが、イングランドのスポーツ界もまた、チームの中の特定の個人にスポットライトを当てがちだ。
ボビー・ムーア、トニー・アダムズ、デイビッド・ベッカム、スティーブン・ジェラードといった選手たちがイングランドのサッカーを巡る物語の中心にあった。
2015年にスコット・ミュレイはイングランドサッカー界は大人気漫画の『ローバーズのロイ』に代表される通り、試合や大会が一人の選手の力で決まる捉えられることが多いと指摘した。
確かにこのような考え方にイギリス式のキャプテンの見方が影響されていることは間違いなく、アーセナルではフランク・マクリントックやトニー・アダムズがその良い例だろう。
しかし、昨今ではリーダーシップはチーム内の何人かで分担されるもの、という見方も増えてきた。たった一人のキャプテンがチームを率いるのではなく、チーム全体で前に進むのだという見方を提示する監督は多い。
キャプテンマークを巻くのは一人の選手だが、複数の選手がリーダー格として任命されることもある。
今のアーセナルで言うと、実際にキャプテンと副キャプテンの地位を与えられているのはウーデゴール、ジャカ、ジェズスの3人だ。
キャプテンのウーデゴールはアーセナルのテクニカル・リーダーだと言っていいだろう。かつてアーセン・ベンゲルはこのフレーズをカソルラやエジル、アルテタに対して用いてきた。ウーデゴールはチームの頭脳であり、ピッチ上の監督のような存在だ。
昨夏キャプテンに任命される以前から既にウーデゴールはアルテタがまずその戦術的な指示を伝える選手だったし、彼はそれをチームに説明する役割を担っていた。
アルテタが彼の戦術眼とサッカーIQを評価していることは間違いない。
もちろん、ウーデゴールが備えたクオリティはそれだけではなく、ロッカールームや練習中の振舞など、ファンには見えない部分もあるだろう。
ウーデゴールはチームに馴染むにつれて試合中にファンを盛り上げたり、といった動作も見せるようになってきている。
加えて、ピッチ上でウーデゴールはアーセナルのプレスの先導役だ。彼がただ立っている場面を試合中目にするのは稀だし、チームでも最もハードワークをこなす選手でもある。したがって、彼は単にチームで最も賢い選手であると言うだけでもない。
(後編に続きます)
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