【戦術分析】03/04シーズンのアーセナルはいかにして無敗優勝を成し遂げたか 前編
私が思うに、シーズンを通して一敗もせず優勝を成し遂げるのは不可能ではないし、なぜそう主張するのがおかしなことなのかわからないね。
アーセン・ベンゲル
2002年にアーセン・ベンゲルが上のコメントを残した際、英メディアはこれを鼻で笑うような論調を総じて見せた。
そして、2002/03シーズン終了時点では、彼らが正しかったように見えた。このシーズンアーセナルは6敗を喫し、マンチェスター・ユナイテッドに次いで2位となっていたからだ。
だが、その翌年、アーセン・ベンゲルは自身の言葉の正しさを証明して見せた。アーセナルはプレミアリーグ初めての無敗優勝を達成したチームになり、2022年の時点でアーセナルと同じ偉業を達成したチームは現れていない。
02/03シーズンに少し手が加えられたアーセナルをだれも止めることは出来なかった。
4-4-2のバランス調整
前年、02/03シーズンのアーセナルの4-4-2がバランスを欠いていたというわけではないのだが、ベンゲルはそれぞれの選手にペアとなる選手を設定することで、より攻守のバランスを保つことに成功した。
裏へと走る選手一人に対して後ろに残ってスペースをケアする、あるいは自身は走り込まず、相方が走り込むスペースを消さないようにするという戦略をとったのだ。
この年のアーセナルは微細な変更こそ時折あったものの、明確な11人の先発メンバーが確立されていた。
GKはイェンス・レーマンで、バックラインは左からアシュリー・コール、ソル・キャンベル、コロ・トゥーレ、ローレン。
4-4-2の中盤はヴィエラとジウベウト・シウヴァが務め、サイドはロベール・ピレスとフレディ・ユングベリという布陣となることが多かった。そしてもちろん、前線はティエリ・アンリとデニス・ベルカンプという伝説の二人だ。
上述のペアのの仕組みに基づいて、前へと走る選手をカバーする一人が生まれるようになっていたため、このシステムは実際には4-4-2というよりも、左右非対称の4-2-3-1のような形となることが多かった。
ビルドアップ
2007年以降のベンゲルアーセナルのイメージが非常に強いため勘違いされることも多いが、この年のアーセナルはポゼッション志向のチームではなかった。
それよりも、縦に早くボールを運ぶことを志向するチームだった。もちろん、結果的にボール保持率で相手を圧倒することはあったが、これは戦術というよりも、単にこのチームが相手よりも技術面で優れていることの結果だった。
03/04シーズンのアーセナルの攻撃戦術のゴールはスピードのあるアタッカーを自由にプレイさせることだった。したがって、カウンター主体のチームだったというわけではない。隙さえあれば素早く相手陣に侵入することを狙い、かつボールを失っても即座に取り返すことを狙うようなチームだった。これは、当時のマンチェスター・ユナイテッド友共通している。
後ろではレーマンが素早く最終ラインにボールを供給すると、主にコロ・トゥーレがそれを受けた。彼はもともと守備的MFとしてのプレイ経験があり、現在で言う所の足元が上手く、ボールを前へとプレイするCBのような役割がこなせたからだ。
彼はボールを持つことを苦にせず、当時は対戦相手のほとんどが4-4-2のシステムを用いていたため、素早い判断を下すことが必要とされたが、それも行うことが出来た。
そして、中盤からジウベウト・シウヴァが最終ラインのすぐ前まで下りてくることが多く、コロ・トゥーレからのボールの受け手となった。
そして、それを引き受けにやってくるのは前線から降りてくるベルカンプだった。
このように、段階的にラインを降りる選手が発生することで、相手が4-4-2のフォーメーションを崩さなければ、アーセナルの選手たちは相手のライン間でボールを受けられる仕組みになっていたのだ。
このおかげで仮に相手が形を崩してプレスに来ても、これを回避するのはより楽になった。パトリック・ヴィエラもビルドアップの時点ではそこまで前にいかず、パスのオプションとなるようなポジションを取ることが多かった。
(後編、この形がいかにして数的有利を作り出すのに繋がったか、に続きます!)
本日のニュースレターでは、主要メディアの最近のアーセナルの移籍情報のスピードと信ぴょう性に関して検証しています!
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