【アーセナルのメンタル面の分析】成長痛を経験する若きアーセナル?
先週の土曜日にアーセナルはまたしても敗北を喫した。一時はアーセナルの手中にあったかに見えたCL出場権だが、この3連敗で、自力での獲得は難しくなり、ライバルたちがある程度勝ち点を落としてくれるのを期待するしかなくなってしまった。
アーセナルに一体何が起きてしまったのだろうか?
これに関してはメンバー選考や監督の決定など多くの観点から分析が行われているが、多くの人々が見逃しがちなのがチームのメンタル面に関してだ。
この側面は数字などで測るのが難しいため軽視されがちで、大体の場合、彼らはプロサッカー選手なのだからメンタル面の問題でパフォーマンスを発揮できないことなどあってはならない、といったような姿勢で迎えられる。
だが、サッカーコーチの間では技術面だけではなくメンタル面のコーチングが非常によく知られていることではある。
先日、ユルゲン・クロップは会見で以下のようにコメントしていた。
精神的な成熟性というのは重要だ。それだけではダメだが、クオリティと勝利への意志、情熱と合わされば、これらはお金では買うことが出来ないものだ。
クロップが戦術やプレイの質だけではなく、より抽象的な部分も勝利において重要なファクターだと考えていることがわかる。
そして、ここで問題となるのが、アーセナルがプレミアリーグ1若いチームであるということだ。それどころか。アーセナルは欧州5大リーグでも5番目に若いチームだ。
The youngest average starting XI ages across the big five European leagues so far in 2021-22 ⬇️ pic.twitter.com/AHV8iqTVKw
— The Analyst (@OptaAnalyst) November 19, 2021
今のチームの多くの選手は今季の7か月間しかともにプレイした経験がない。1月まではチームにとって苦しい時期が続いたが、その後プレッシャーから解き放たれたチームは順位表をCL出場権に向けて駆け上がった。
ここ今のチームに多くの称賛が向けられ、残りの試合に関するポジティブな見通しも寄せられたが、ここでほとんど考慮されなかったのは、今のチームにいる選手のほとんどがこのような状況を未だかつて経験したことがなかったという点だ
アルテタはシティのアシスタントコーチとしてタイトルレースを戦った経験はあるが、自分がトップの監督としてCL出場権獲得レースを争った経験はない。
選手たちも、過去にこのような争いを経験したものは皆無だ。この戦いがある程度難しいものになるのは当然だった。アーセナルがメンタル面でこのタフな試合の連続をいかにして乗り越えるかはアルテタがどのようなスタメンを起用するのかと同じくらいに重要なはずだった。
2012年にNBLの王者を分析した研究が問いかけたのは『何故一度優勝を経験したことのあるチームは優勝争いに非常に強くなり、再び優勝する可能性が上がるのだろうか?』というものだった。
この研究は、特にプレイオフのような重要な試合を勝ち抜くにはレギュラーシーズンの試合で勝利を収めるのとはまた異なるスキルが必要であり、これを経験したチームはこのスキルを身に着けることが出来るためであると結論付けた。
違う言い方をすれば、これは最終結果が非常に重要となる試合で勝利を収めた経験はその後同じような状況でプラスに働くということだ。
そして、これこそが今のアーセナルの最も重要な問題の一つだろう。もちろん、1月のギャンブルに失敗した点をはじめとして、他にもアーセナルの失速につながった要因はあるが。
アスリートの心理学の専門家であるビーチャム氏は以下のように語っている。
常に勝利を収め続けられる人々はなぜそれを続けられるのか、と問われた際に我々は『彼らは非常に強く勝利を願っているからだ』と考えるかもしれない。だが、それ実際は違う。トップレベルで成功を収める人々は勝利することなど意識しないのだ。彼らは自身が良いパフォーマンスを見せられると信じ切っている。
よく考えてみて欲しい、もしあなたが勝利を収めることが確定していたとしたら、試合に勝つことは当たり前なのだから、わざわざ試合に勝ちたい、などと考えないはずだ。だが、もしその勝利への道筋に少しでも疑いの余地があるのとすれば、それについて時間をかけて考えてしまうことになる。
この3試合、特にパレス戦とブライトン戦ではアーセナルは自らを信じているチームには見えなかった。代表選前の自信は失ってしまっているようだった。
では、アーセナルが勝利のために重要となるメンタリティを獲得するためには何が必要となるのだろうか?
部分的には、チームが今まさに経験しているプロセスこそがそれだ。彼らはピッチ上でパズルの答えを出し、少なくとも自信はまず取り戻す必要がある。恐らく先制点を挙げることはその助けになるだろう。
もちろんそれはその後アーセナルが失点しないということを意味しないが、少しはリラックスして試合に臨めるようになるに違いない。得点できない時間帯が長引けば長引くほど『ああ、まただ。』というマインドが返ってきてしまうだろう。
アーセナルにとっては少々過酷かもしれないが、若いチームが精神的なタフさを身に着けるためにはこういったプロセスが必要なのだ。これを乗り切れば、来季同じような状況に遭遇した際に助けとなってくれるに違いない。
そして同時に、エドゥとアルテタが非常に才能に溢れた若手だけをクラブに呼ぶのではなく、彼らを過去の経験を参考に出来るような経験豊富な選手、このようなタフなシチュエーションをチームが乗り越える助けとなってくれる選手をチームに加えることが重要となる。
今のアーセナルの不調の要因の様々な分析はそれぞれ的を得ているに違いない。だが同時に、アーセナルはこの状況を乗り越えるだろう。もしかすると、今季のトップ4には手が届かないかもしれない。だが、今季終盤に学んだ貴重な教訓は来季活きるに違いない。
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