アーセナルが欧州の舞台で戦うために必要なスカッド作り 前編
勝利や敗北は複数の要因が絡まりあって起こるものだが、アーセナルのブライトン戦の一番の敗因は、現状のクラブの先発選手と控え選手のクオリティの差が大きすぎることにあったように思う。
これは理解できることではある。
アーセナルが夏に獲得を行った6人のうち4人は即座にチームで先発しており、この移籍市場の最優先事項がスタメン11人のアップグレードであったことは明らかだ。そして、まだスタメンですら完成したわけではなく、今年の夏に対応しなくてはならいエリアも残っている。
奇しくも、夏の新加入選手のうちの今季不動のスタメンをものにしていない残りの二人、サンビ・ロコンガとヌノ・タヴァレスがブライトン戦のメンバー選考における議論の中心となった。
怪我のパーティに代わってロコンガは先発に名を連ねた一方で、タヴァレスはベンチに留まり、アルテタはスミスロウを中央に移してジャカを左サイドバックとして起用する、という大きなチームの変更を決めた。
ロコンガはポテンシャルのある選手で、彼をジャカとパーティの控えとして獲得するという決定は理解できるものだった。アーセナルには他に高額の移籍金を費やさなければならないポジションが多くあり、控え選手に高額の移籍金を費やす余裕はなかった。今後成長を続け、少しずつアーセナルでの出場時間を増やしていけるような選手の獲得は筋が通っている。
ただ一、今季アーセナルが欧州コンペティションへの出場がなかったことは、結果的に諸刃の剣となった。
ローテーションの必要がないため、新加入選手も含めたメンバーの固定が可能で、連携を素早く深めるのに役立ったが、一方でロコンガやタヴァレスといった将来性のある選手に出場機会を与えることは出来なかった。
もしアーセナルが今季ヨーロッパリーグに出場していれば、彼ら二人は冬の過密日程期間中に主力を休ませる際のローテーションとしてもう何試合かに登場していたことだろう。そして、アーセナルがFA杯から早期敗退してしまったことも痛かった。
さらに、最近のアーセナルは得点力を欠いており、試合展開は1点差のギリギリの戦いが続く、ということもしばしばしばで、若手をベンチから出場させ慣れさせるような余裕がある試合はまりなかった。
結果として、ロコンガとタヴァレスの二人は11月以降ほとんど試合の出場がなくなってしまった。
だが今アーセナルは、今季慣れさせるための十分な試合時間を与えられなかった若手たちに頼るかしない状況に陥っている。
ただし、だからといって夏の補強の優先順位が間違っていたということは出来ない。アーセナルの予算が有限であることを考えると、まず先発選手にきちんと予算をかけ、比較的安い控え選手の獲得を目指すのは金銭面から見て当然の動きだ。
世界一リッチなメガクラブでもない限りは、そもそも良いローテーション要員の選手を獲得するというのはなかなか難しい。大体は、キャリア最終盤に近づいているベテランか、まだ経験があまりない若手で手を打つことになる。
しかも、そういった選手は定期的に入れ替えていく必要がある。ずっとバックアップの立場に甘んじることに満足する選手はほとんどいないからだ。
アーセナルで近年ローテーション要員を勤めてきたチェンバース、コラシナツ、メイトランド=ナイルズは移籍して新たなチャレンジを必要としていた。
アーセナルのチーム作りの次のステップはストライカーとCMFを獲得すること、そしてその後は層の厚みを増すことだろう。
例えば、リバプールがどのようにして今の様なスカッドを作り上げたかを見て見ると、スカッドの層の厚さまで含めた完成形に辿り着くまでに何年かかかっている。彼らは15人程度の選手たちを核に据え、アリソンやファンダイク、そして前線の3人の代わりを務められるような選手たちを獲得した。これだけの選手が揃えば、ある程度怪我に関して幸運に見舞われれば(昨季はその例外だが)トップレベルで戦うことが出来る。
怪我に関する幸運に関して言えば、アーセナルは15年ほどあまりそのようなものを経験していない。一瞬有望に見えたシーズンがキープレイヤーの怪我(ファブレガス、ファンペルシー、カソルラなどなど)と共に数か月で終わりを告げる所を何度もファンは見てきた。
(後編に続きます)
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