様々な形のxGで見る今季のアーセナル-統計でチームを評価する難しさについて 前編
今のアーセナルは興味深いチームだ。そして、興味深いことが必ずしも良いことだとは限らない。
統計というのは時として危険なもので、アーセナルは見せ方次第で国内トップ4の一員にもなるし、ワースト5の下位グループの一員にもなる。
今回の記事ではより幅広い視点からアーセナルの評価を考えていきたいと思うが、結論を先に述べておくと、アーセナルはリーグで6番目に優れたチームだが、5位と12位の差は非常に小さい、ということになる。
したがって、アーセナルの順位はまだまだ分からないし、今季ここまでの所、それを否定するデータは見つからない。
Weighted xG(実際に得点につながったシュートをより重視するxG)
まずはWeighted xGでプレミアリーグの各チームを見てみよう。これは、得点期待値と、実際に得点につながったシュート/チャンスの価値を区別するモデルで、個人的にはゴールという結果の持つ情報をより正確にとらえられていると思うため気に入っている。ゴールとxGを3:7で計算してある。
上の図が示しているのは、今のプレミアリーグが4つのレベルに分かれているということだ。
上位: 優勝争いに参加する3チーム(マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシー)
中の上: ウエストハムが上の3チームを単独で追いかけている
中の下: それ以外のほぼ全チームといってもいい、ワトフォードもここに加わろうとしている
降格争い: ノリッジとニューカッスル。ニューカッスルはもしかすると1月以降大型補強をするかもしれないのでどうなるかわからないが。
同点時・11人対11人の場合限定のxG
では次に、試合が同点の状況で、かつ退場者などによる数的不利が存在せず11人対11人の場合限定のxGを見てみよう。
得点が試合を変えてしまうとは昔からよく言ったものだが、実際にゴールが入ると試合の勝率は非常に大きく変わってくるため、同点の時間にチームがどのようなパフォーマンスを見せるかというのは勝ち点を稼ぐ上で非常に重要になってくる。
こちらのグラフだと、一つ前のものと比べてアーセナルはかなり成績が良いのが見て取れると思う。
今季アーセナルは先制点を比較的早めに挙げている。12試合のうち8試合でアーセナルの初得点は最初の60分以内に生まれており、リードしているチームはよりリスクを冒さなくなる傾向にあるのでアーセナルのプレイは大きく変わる(もしかすると、アーセナルはリードをしている時点でプレイスタイルをそこまで大きく変えず、もっと攻撃を続けるべきだという意見もあるかもしれないが、それは一旦ここでは置いておこう。)
試合の状況がxGに与える影響
また、守備に目を移すと、平均で、リードしている側のチームは90分当たり換算で0.2のxGを同点時よりもより多く相手に許す。アーセナルはリード時も90分当たり0.17のxGしか失点期待値は上昇していないため、若干良い数字と言える。
だが、全体の傾向としては、被xGは増えるもののxGも増え、結果的にリードしているチームの得失点期待値の合計はプラスに傾くことが多い。
これは、我々の直感的なサッカーの味方とも一致しているはずだ。
リードしているチームは相手に得点可能性がそこまで高くないシュートはある程度許容し(だから被xGが増える)、それと引き換えに相手が前がかりになった隙をつけるので、自チームが創造できるチャンスも増える。
良いチーム(アーセナルは良いチームを目指していると思うのだが)というのは試合をリードしているときでも相手よりチャンスを作るものだ。リードしたからといってひたすら守り、そのリードを保とうとするのではなく。
従って、試合展開が同点の時はアーセナルが良いチームだというのは良い報せだが、一方で懸念すべきはアーセナルがリードしている状況で相手チームより優位に試合を進め続けられない、という点であるということになる。
後編はこちら!
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