チーム再建とピッチでの前進 前編
アルテタのもと行われているチーム再建の特徴の一つは、それがスカッドの背骨の大手術だという点だ。
既にアーセナルはアルテタが監督に就任して以降、ガブリエル・マガリャンイスとトーマス・パーティという大型補強も行ったし、パブロ・マリも獲得した。
ローンでウーデゴールもやってきたし、この夏にはロコンガの獲得が発表され、ベン・ホワイト獲得葉実現に近づいているようだし、ラムズデール獲得に動いているという話もある。
もちろん、昨季アーセナルがまたしても8位に終わったことを考えれば、チームの中心となるポジションへのテコ入れは驚きではない。この夏、エドゥとアルテタはピッチの中央を支える選手の獲得に動いているだけではなく、ダビド・ルイスの移籍は決まり、ジャカの移籍も許可されることが濃厚と、放出も進めている。
これまでのチームにおいて、ジャカとルイスは最も信頼されており、チームの中心だった選手でもあった。
ではなぜ、アーセナルは彼らの移籍を許可したのだろうか?
年齢が大きな要因であるのは間違いない。ルイスは34歳で夏で契約切れとなっていたし、ジャカは29歳で残り契約が2年となっており、移籍金という意味では今がピークだろう(アーセナルは今頃ローマにそれを念押ししているに違いない)。
彼ら2人がチームで重用されていたのは、ボールを回すのが非常にうまいからで、右CBのルイス、左CMFのジャカという組み合わせは、アーセナルのビルドアップのカギとなる出口となっていた。
ジャカはファイナルサードへのパスが非常に多く、全体的な傾向としては、ショートあるいはミドルパスでボールを進めることが多かった。一方で、ルイスは斜めのロングボールでそれを行った。チームで成功ロングパス数が一番多かったのがルイスだ。
ジャカとルイス二人ともに言える点は、プレイが比較的一面的であるという点だ。彼らのパス能力は非常に高いが、その力を発揮するにはゆっくりと余裕をもって構える必要があり、また素早く動きながらそう言ったパスを出すのはあまり得意ではない。
ルイスもジャカも低めの位置にとどまることで力が活きるタイプだ。ジャカは敏捷性はあまりないし、ルイスは相手の攻撃に対する対応が悪いというほどではないが、ときどきとんでもなく低い位置に下がって対応しようとすることがある。
ジャカとルイスは両者ともに、ボールをもってピッチを駆け上がれるような選手ではない。ルイスはロングパスが武器なので、これはそこまで問題とならないが、ジャカはルイスがパスを届けるような左のハーフスペースにボールを進めるためには、自分自身がそこまで進んでいく必要がある。
90分当たりのプログレッシブキャリー(持ち上がるドリブル)数でジャカとルイスはそれぞれチームで11位と12位だし、チーム全体としてそもそもアーセナルはプレミアリーグでプログレッシブキャリー数が13位だ。
これにより、対戦相手にとってはアーセナルは相手陣内で対応するのがより簡単になっている。ビルドアップは非常に低い位置からスタートするし、そのカギとなる二人は素早く駆け上がるようなプレイを見せないからだ。
このせいで、ティフォ・フットボールが『アーセナルドーナツ』と呼んだ現象が発生しており、ボール回しの主軸が低い位置にいるため、数的優位を作って守備をするのが容易で、結果として押し戻され、ピッチの中央から追い返されてしまう。
スミスロウの台頭によりこの問題は少し改善されたが、どちらかというとスミスロウが存在感を見せたのはサイドで、サイドバックやウイングと連携してサイドで数的有利を作る場面が頻繁に見られた。
ルイスとジャカが低い位置を取る必要があるため、ファイナルサードまでをコンパクトに保つということができず、対戦相手に絶え間なく攻撃でプレッシャーをかけるということが難しくなっている。
(後編に続きます)
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