オーバメヤンは衰えてなどいない+リーダーシップの話 前編
顧客の満足度というのは基本的に価格と連動する。誰かが何かにより高い金額を払えば、それに見合っただけの高い満足度を期待するものだ。
これはサッカーでも変わらない。サッカー選手が契約する、あるいは契約延長を行い、給与が上がればそれに伴って期待も高まる。
例えば、2013年と2015年にウォルコットの契約延長に伴ってアーセナルファンはしびれを切らし始めた。高給を得る選手となると、その少々のミスも気になり始めるのだ。
結局のところ、契約というのは過去の実績への報酬ではなく、その期間中に選手が成し遂げられる見込みがあるものに基づいており、今まさに、ピエール=エメリク・オーバメヤンの契約が話題を集めている。
31歳の選手に3年契約を与えるのであれば、その契約の最終年にその選手がキャリアのピークの能力を維持している可能性は低い。したがって、最初の1,2年にそれを補って余りある活躍を期待するのは当然といえば当然だ。
オーバメヤンは今季プレミアリーグで9ゴールでそのうち2つがPK、一試合当たり0.38ゴールとなっている。昨季彼は一試合当たり0.61得点だった。
彼のアーセナルでの3年間の平均は1試合当たり0.58だ。シンプルに言えば、新契約の期間中で最も結果を残していなくてはならない時期に、かつてほどの活躍を見せられていないという事だ。
オーバメヤンの去就が話題を集め始めた昨夏から、3つのシナリオが考えられた。第一が契約延長、第二はアーセナルが昨夏に売却を来ない移籍金を得る、第三にもう一年残り、フリーで移籍する、というパターンだ。
私はどちらかというと後者2つの方が良いのではないかと感じていたが、それがその他の場合と比べてそこまで明確に優れているとも感じられなかった。どのケースもポジティブな点とネガティブな点が両方存在するように思えたからだ。
今季のオーバメヤンが期待通りの得点を挙げられていないのは事実だが、問題は、そのうちのどれだけがオーバメヤン自身の原因なのだろう、という点だ。
クリスマスにスミスロウをトップ下に置いた4-2-3-1が起用されるまで、アーセナルのチャンス創出は酷いもので、降格争いレベルだった。そして、オーバメヤンはもともとビルドアップに何か貢献できるような選手ではない。
したがって、彼にはチャンスが必要なのだ。彼の動きはいかにチャンスを多く作り出せるかに依存している。彼の決定力はキャリアを通して平凡で、むしろ彼の一番の強みはその走り込みから数多くのチャンスに走りこめることだ。
そして、性格的にも彼はパトリック・ヴィエラのようにチームを引っ張ったりはしない。
今季前半のアーセナルは勝ち目の薄いクロスからの空中戦を挑む以外にほとんどボックス内にボールを運ぶ手段がなかった。
オーバメヤンとウィリアン、ラカゼットの3人ともが同時に程度の差こそあれキャリア最低と言ってもいい時期をこの期間は過ごしており、彼らが偶然絶不調になるとは考えづらいので、恐らく個人的なもの以外に恐らく原因があったのだろう。
もちろんより好待遇の選手により大きな活躍を期待するのは間違っていないだろうが、同時に我々は少々選手の契約や給与を評価に反映させすぎているように思う。
恐らくサッカー選手がもらう超高額の給与に対する反発や抵抗感のようなものが無意識のうちにあるのだろう。
これに対するネガティブな気持ちを正当化しようという原理が働くのだ。私の目から見て、オーバメヤンは今季衰えている/依然と何か変わっているようには全く見えない。
もともとオーバメヤンは得点機を与えられなければ、他の能力は極めて限定的なタイプの選手だった。カバーニや、アグエロにさえもある程度これは言えるかもしれない。
オーバメヤンが優れているのはたった1つのことにおいてのみで、ただしたまたまそれがサッカーにおいて最も重要なことなのだ。
新契約と彼がキャプテンに任命されたことで、ファンの期待は必要以上に彼に対して高まり、彼のパフォーマンスが極度に注目されているように感じる。
だが、私が思うにキャプテンシーの重要性はイングランドではあまりに過大評価されすぎている。リーダーシップは確かに大事だが、その表現には選手なりのやり方があるのだ。
我々が"リーダシップ"と聞いて思い浮かべるイメージにはかなり外向的なバイアスがかかっているが、外に向けては出にそれをアピールしなくとも、より内向的なやり方でチームを引っ張ることも出来るのだ。
腕に布を巻くかどうかで選手のリーダーシップの素質は変わりなどしない。それによって選手が何かを得たりはしないし、逆に何かを失ったりもしない。
本当のリーダーは突然その責任が降りかかったからといてその性格を変えたりはしない。元も色々なやり方で効果的にそれを表現する方法を知っているのだ。
(後編に続きます)
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