ベジェリンをアーセナルファンは忍耐強く見守ってやらなくてはならない
ヘクター・ベジェリンは、怪我から復帰して以降、かつての姿を取り戻せていない。特に、フィジカル面ではかつての面影は全くない。
だが、少し前まで前十字靭帯断裂というのはサッカー選手のキャリアを脅かすほどの怪我だとされていた。それが、医学の進歩により、予後は非常に良くなったのだ。
とはいえ、未だにこの怪我は非常に長期間にわたる影響を残す。私が思うに、この種類の怪我の中長期的な影響に対する理解は未だに進んでいないように見える。
選手がトップチームに復帰すれば、数試合はサポーターは暖かく見守るものの、怪我の記憶が薄れるにしたがって、その影響もなくなるものとみなしてしまう。だが、選手にとってはそんな簡単に影響がなくなるものではない。
私はアーセナル女子チームの取材を担当しており、その過程で何人かの前十字靭帯断裂経験のある選手たちに話を聞くことができた。(女子選手の靱帯断裂は男子選手の6-8倍程度多いのだ)
アーセナル女子チームのジョーダン・ノブズは2018年11月、ベジェリンの2か月前に前十字靭帯を断裂した。彼女が実践に復帰してから既に5か月が経過しており、彼女に調子について尋ねてみた。
『まだ怪我前のレベルには達していないわ。3週間離脱しただけでも、リズムを崩すのに、10か月の離脱となれば元の状態に戻るのには非常に長い時間がかかる。』
また、わたしは同じくアーセナル女子チームのダニエレ・カーターに軽率にもトップチーム復帰後、『リハビリが終わって嬉しいですか?』と尋ねてしまった。そんな私に彼女はこういった。
『プレイを始めたからと言ってリハビリが終わったわけではないわ。もう一回プレシーズンからやり直す必要があるの。』
また、昨夏わたしはひざを専門とする外科医のピート・ギャラチャーにも話を聞いた。
彼は、前十字靭帯断裂の手術後、選手は何週間も全く動けない状態が続くのだと説明してくれた。この間に選手が鍛え上げた筋肉やコンディションが全てゼロに戻ってしまう。
どんな優秀なアスリートでも足の筋肉は大幅に落ちてしまうため、これをもう一度作り直すには時間がかかるのだという。
したがって、ベジェリンがかつてのようなスピードを取り戻せていないのには当然の理由があると言える。ホールディングはベジェリンよりも早く復帰しているが、未だにU-23でプレイしている。
このような怪我からの復帰は非常に長い道のりであり、全体練習やトップチームへの復帰はまだ道半ばなのだ。
もちろん、だからといってベジェリンに時間を与えれば将来的に完全に元に戻るという保証はあるわけではない。だが、そのような判断を下すのはまだ先延ばしにしておいた方が賢明だ。
選手がかつての調子を取り戻す唯一の方法は継続してプレイすることであり、今の状況は理想的とは言えないものの、それが人生というものだ。
また、ベジェリンがさび付いて見えるのには戦術的な理由もあると私は考えている。
アルテタのもと、右サイドバックの役割はシフトしており、彼はサカほどオーバーラップを求められていない。彼のフィジカルコンディションを考えればそれも当然の判断だが、アルテタ体制の右サイドバックは中に入ってカウンターに備えることを求められる。これは、今までベジェリンがこなしたことがなかった役目だ。
また、彼の前にはペペがおり、彼は守備時に最も信頼のおけるウイングとはいえない。相手チームがカウンターに打って出る際に、ヘクターはハーフスペースをカバーするか、相手に寄って行くかの二択を迫られることが多い。
今のところ、まだベジェリンはトランジションへの対応が完ぺきとは言えないようだ。
エヴァートン戦でリシャルリソンにこのすきを突かれていたが、そもそも、リシャルリソンの能力を考えると、右サイドをここまで無防備にしていたこと自体が驚きだった。
結局のところ、ベジェリンやホールディング、そして今後前十字靭帯断裂を経験するかもしれないいかなる選手に対しても、忍耐をもって彼らの復調を待つことが必要なのだ。
試合に出場できるようになることは単なる通過点に過ぎず、彼らの戦いはまだ続いているのだから。
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スピードは少し戻ってる。これからさらに良くなる。ただ、この文章本音はホールディングに活躍してほしことあらわしてる。この記事を書いた人に言いたいのは、ホールディングは大丈夫。彼は素晴らしいアーセナルの選手だ。たとえ試合に出てなくとも。世界中のアーセナルファンはそれを知っている。