アーセナルの凋落とエジルの不調の関連 前編
長い記事になるので、前置きなしで、いきなり記事に取り掛かろうと思う。
アーセナルの攻撃の凋落
アーセナルの一試合当たりのパス数はベンゲル時代の終盤から下がってきていたが、監督交代からさらに悪化し、ベンゲル時代の最後のシーズンの526.9本から今季は437.6にまで下がっている。
実際のところ、アルテタが指揮しているここまでの7試合は非常パスが少なく、326本という数字で、この7試合だけでそれ以前には一試合当たり481本だったパス数が平均で438まで押し下げられている。とはいえ、どちらにせよ、527と比べてエメリ時代の481本というのは9%の減少で、低い数字に違いない。
また、全体のパス数の減少と並行して、ファイナルサードでのパス数はさらに顕著に少なくなっている。
ベンゲルの最後のシーズンには、一試合当たりのファイナルサードでの平均パス数は46.3だったが、エメリの1年目は33.6と27%も減少している。今季はさらに去年の数字よりも下がり、リーグ順位ではブライトンよすら下回っている。
アーセナルファンはユナイテッドをカウンターのチームだと笑う傾向にあるが、数字を観れば、彼らの方がアーセナルよりもはるかに多くのボールを前に進められていることがわかる。
ボールを前に進められないということは、シュートも打てないということだ。ベンゲル体制下で最低だったシーズンと比べても、今季のアーセナルは遥かに少ない一試合当たりのシュート数を記録している。
この2シーズンでアーセナルの一試合足りのシュート数は4.6も減少してしまった。ベンゲルの最終シーズンですら、アーセナルはシュート数ランキングで5位だったが、今や14位で、降格争いをしているボーンマスと数本しか変わらないありさまだ。
更に悪いことに、チャンスとシュートのクオリティも下がっているのだ。17/18シーズンにはアーセナルは一試合当たり6本の枠内シュートを記録しており、これはリーグ3位だった。
今季はたったの3.7本しか一試合当たり枠内シュートをうてておらず、これはリーグ13位だ。アーセナルは今季92本しか枠内シュートを打っていないが、逆に123本の枠内シュートを打たれている。自分たちが作るチャンスよりも25%ほど多く相手に打たれているのだ。
そして、上記全てを考えれば全く驚きではないもの、結果として、得点、アシスト、得点期待値、アシスト期待値の全てが低下している。
もちろん、今季のアーセナルを観ているファンにとってはこれは何も目新しい情報ではないだろう。我々がシュートまでもっていくのに苦戦しているのは明らかだ。
アーセン・ベンゲルに対してよくファンが抱いていた不安の一つが、横パスが多すぎるというものだった。彼らはそれを"蟹サッカー"と揶揄したりもした。
しかし、多くのトップチームは相手陣にスペースを見つけ、相手選手を動かすためにこのようにプレイするものなのだ。
エメリがアーセナルにやってきた際、ファンはベンゲルとは違うものを求めていた。そして彼らはまさにそれを手に入れたのだ。エメリはチャンスを作り上げられないという点で、ベンゲルとは確かに違った。
後ろ足での蟹サッカー
まず、一シーズンあたり900分(10試合相当)以上プレイした選手を全員抽出し、90分当たりのパス数を比較してみた図がこれだ。17/18シーズンにアーセナルで最もパスが多い二人はジャカとエジルだということがわかる。
ジャカは90分当たり74本、エジルは66本で、この後に64本のモンレアルが続く。この下は守備陣が50本程度のパスを記録し、イウォビも48.5本だ。
では、これがエメリが就任し、どう変わっただろうか、その違いは劇的だ。
エジルに代わってナンバー2の座にはゲンドゥージが収まり、エジルは完全にシャットアウトされたわけでもないが、トレイラより少ないパス数となっている。より興味深いのは、イウォビのパス数が10本もすくなっていることだ。
エジルの代役はムヒタリアンが務めるはずだったのだろうが、彼もまだ、一試合当たり36本しかパスが出来ていない。前のシーズンに66本をエジルが記録していたことを考えると、これは大幅な減少だ。
そして、今季に至ってはさらにひどいことになっている。ジャカの一試合当たりのパス数は12本も減り、ゲンドゥージは5本、トレイラは7本、エジルは昨季からさらに7本減少している。
また、前線へのパス数(私はこの単語を、ファイナルサードとペナルティエリアへのパスを表す用語として用いている)の、17/18シーズンから今季にかけての減少は非常に顕著だ。同じく900分以上プレイした選手の17/18シーズン(ベンゲルの最終シーズン)の90分当たりの前線へのパス数だ。
ジャカが首位に立っていることは驚きではないが、アーセナルにはボールを前に進めることのできる選手が数多くいることがわかるエジル、(1月に移籍したものの)アレクシス、ラムジー、ジャック、モンレアルでさえも多くのパスを前に供給している。
だが、エメリ就任と共にこれはすべて変わる。以下が、18/19シーズンの数値だ。
ジャカをはじめとして、ほぼ全ての選手のファイナルサードへのパス数が減少している。エジルのスタッツはエメリが就任してからすべての面で悪くなっているし、またアーセナルの攻撃陣はアレクシスからムヒタリアンにグレードダウンしている。かつ、守備陣から前にボールが出る回数も減った。
そして、今季に至ってはさらにひどい。
同じように、全体的にファイナルサードへのボールは減少しているが、特筆すべきは、ゲンドゥージがトップに立っていることだろう。たったの二年でエジルのファイナルサードへのパス数は90分当たり10本から5本へと半分になってしまった。
.アーセナルの右サイドだけでなく、モンレアルの売却以降左サイドからもボールを進めることが難しくなってしまったことがわかる。
コラシナツは相手ボックス内では輝けるかもしれないが、ビルドアップという面ではモンレアルに大きく劣る。総合して言えることは、アーセナルはアレクシス、ラムジー、モンレアル、イウォビという4選手の売却によって苦しんでいるということだ。
以下のバーンリー戦でのパスマップが、アーセナルがいかにボールを前に進めるのに苦しんでいるかを表している。
これを、アーセナル戦でのリバプールのパスマップと比べてみよう
人々がアーセナルを”蟹サッカー”とからかっていたとき、我々は、リバプールのようにプレイできていたのだ。高い位置でボールを回し、相手を押し込み、じっくりと綻びを探す。
今のアーセナルは、いまだに横パスの多いサッカーだが、それをより後ろの位置で行っている。アーセナルは蟹サッカーを自陣で展開することになってしまっているのだ。
(明日の後編へ続きます。いよいよこの記事の肝となる、アーセナルの不調とエジルの関係の話です。)
Source: https://arseblog.news/2020/02/the-7amkickoff-index-mesut-ozils-stats-a-deep-dive/
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