停滞するアーセナルのユースアカデミー?

分析Tim Stillman,海外記事

昨季のアーセナルでは、21歳以下の選手がプレイすることが全くなく、2月のウエストハム戦でヌワネリがプレイした14分のみ(プレミアリーグ、FA杯、CL合わせて)だった。他にはチャールズ・セイゴージュニアが9月のカラバオ杯ブレントフォード戦で67分ぷれいしたくらいだ。

通常であれば国内カップ戦はユース選手を試す良い機会だが、アーセナルはFA杯とリーグ杯でプレミアリーグのクラブを引き当ててしまったためそのチャンスは限られていた。

今のアーセナルプレミアリーグでも最も若いチームの一つである一方で、ユース選手にほとんどチャンスを与えられていない、というのは一見奇妙に聞こえるが、実際の所、今のアーセナルの主力の選手の大半は23-26歳だ。

コジエ=デュベリーは退団が確定視されているし、オビ=マーティンにも退団の噂が出ており、アーセナルはユースアカデミー卒の選手をもっとうまくチームに組み込むべきではないか、という声も上がり始めている。

ただし、個人的には、まだそのような懸念を抱くには時期尚早だとは思っている。

問題は、アーセナルが昨季プレミアリーグで勝ち点89を獲得するレベルのチームに仕上がっているという点だ。そして、それでもリーグ優勝には届かなかった。このような状況では、チームにミス一つの余裕もない。

アーセナルには若手を起用してポイントを落とすリスクを冒す余裕はないし、逆に、今のアーセナルのチームに組み込んでも他のファーストチームの選手と遜色ないプレイを見せるためには、その選手は世代随一のタレントである必要があるだろう。

アーセナルがリーグ8位に座し、ヨーロッパリーグを戦っていたころにはエンケティア、ネルソン、メイトランド=ナイルズ、ウィロックといった選手たちを起用するのはより容易だった。

この頃のアーセナルはELのグループステージの試合が6試合あった。また、昨季のマンチェスター・ユナイテッドがガルナチョやメイヌー、ホイルンドといった選手たちを起用できたのは、彼らとポジションを争っていたのがアントニーやマーシャル、アムラバトといった選手たちだったからだ。

また、昨季のアーセナルはそこまで怪我人も多くなく、8人の選手がプレミアリーグで30試合以上に先発することが可能だった。若手が機会を得るにはタイミングも重要で、アシュリー・コールはシルビーニョのパスポートの問題を経て台頭し、ベジェリンがドビュッシーの怪我をきっかけにチャンスを掴んだ。

恐らく、今のアーセナルにアカデミー卒の選手を育成のために起用するような余裕はほとんどない。逆に、今のタイトル争いをするチームでプレイする素質を持つようなタレントであれば、特別な計らいなどなくとも何らかの形で台頭してきてくれるだろう。

ブカヨ・サカは特に彼を育てるための特別シフトが敷かれていたわけではない。単に、もともとはファーストチームのレギュラーとして想定されていたペペとウィリアンの二人をその実力で追い落としたのだ。

チームはユースの若手のためにわざわざ枠を空けることをしたわけではなかったが、単にその能力でサカはそれを奪い取った。

時として、才能のある若手でも、真に花開くためにはビッグクラブを離れることが必要なこともある。コール・パーマーはシティを去って成長の機会を得たし、ソランケはリバプールでは輝けなかったが、その後ボーンマスで活躍した。

アーセナルに関して言えば、スミスロウとビエイラが二人ともクラブに残ることはなさそう(もしかすると二人ともクラブに将来はない可能性もある)だし、エンケティアとネルソンも、自身のキャリアのためには移籍の方が良いだろう。

もちろんビエイラはユース卒ではないが、この夏、ヘイルエンドの一世代がアーセナルでの終わりを迎えるのかもしれない。エルネニーやセドリックといった選手も退団となることを考えれば、アーセナルが若手選手に出場分数を用意するのであれば、それは例えばイーサン・ヌワネリのような選手となるだろう。

CLは今年フォーマットが変わり、グループリーグの試合数も増え、よりローテーションが必要になる。

このようなケースではアーセナルには慎重なバランス感覚が求められるだろう。ほぼ経験のない若手に重要なスカッドの一員を任せるのはリスクが高いが、一方で、素晴らしい若手選手にはファーストチーム昇格の道が開かれていると示す必要もある。アカデミー世代の選手の獲得に動くのであればなおさらだ。

もしアーセナルが全くアカデミー卒の選手をファーストチームで起用しなくなってしまえば、仮に次世代のブカヨ・サカのような選手が現れたとしても(もちろん彼のような選手はそう頻繁に現れるものではないと思うが)、彼らはアーセナルではなく、他のロンドンのクラブのユースへの加入を希望するだろう。

クラブは最近ヌワネリとの契約延長にこぎつけたが、彼のプレイするエリアはファーストチームでチャンスがあってもおかしくないエリアだ。

もしスミスロウかビエイラが退団となり、かつハヴァーツがこのままストライカーとして良いパフォーマンスを続けるのであれば、中盤のポジションは一枠空きがあるように見える。ここから一気にヌワネリが先発メンバーとして名を連ねる、ということが言いたいわけではないが、カップ戦での出場や、ベンチからの出場くらいであれば現実的かもしれない。

恐らく、まだ今後しばらくは、アーセナルでの10代の選手が出場機会は少し増える程度にとどまるだろう。カップ戦の抽選や怪我人の事情次第、またCLの試合数増加に伴って、カップ戦でより若い選手を起用しなければならない機会は何度か訪れるかもしれない。

だが、インビンシブルズの時代にも、ジャーメイン・ペナントやデビッド・ベントリー、ジェレミー・アリアディエールといった選手たちは世界トップクラスのアーセナルの主力選手たちに太刀打ちできなかった。

そして、今のアーセナルのファーストチームもそれに近しいレベルにあるのだ。

サポーターとして、ほとんど全てが上手くいっているように見える今のアーセナルで見つけられうる問題がユースアカデミー選手の登用の不足、そして選手売却が上手くいかないことであるのは理解できるが、この二つには関連性があるだろう。

非常にシンプルに言ってしまえば、アーセナルは非常にファーストチームの質が高く、ローテーション要員やユース選手に出場機会を与えるのが難しいのだ。

ただ、改善点を挙げていけばキリはないが、もし今のクラブの問題点として考えられることがアカデミー卒の選手に数十分程度の出場機会を与えられないことと、エンケティアやネルソンの売却からもう5m£程度得られたはずだ、ということ位なのであれば、それはクラブとしては悪くない位置にいる、ということを示しているように思う。

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Posted by gern3137