明らかになりつつあるダビド・ラヤが正GKとして抜擢された理由

分析

9月に私は最終的にはラヤはラムズデールの代わりに正GKとなるためにアーセナルに連れてこられたのではないか、という記事を書いたが、実際にその通りになった。

CLとプレミアリーグでGKを使い分けるということも行われず、ラムズデールはグループリーグ第6節のPSV戦で先発したのみだ。

上の記事で私は2021年にラムズデールがレノからポジションを奪い取った時と、今季のラヤとラムズデールの状況を重ね合わせた。

ただし、2023年のラムズデールと比べて、レノの方がよりチームのアップグレード/補強ポイントとしての優先度合いは高く見えたのは間違いなく、ラムズデールは昨季契約延長もしているので、クラブも同様に考えていたはずだ。

一般的に言って、GKのキャラクターというのは氷タイプと炎タイプに二分されることが多い。ラムズデールが炎型であるのは間違いないし、彼自身が相手サポーターと"冗談"を交わすのが自分のモチベーションになるとも話していた。

だが今季、アーセナルというクラブ全体が『炎』タイプのアプローチから『氷』タイプのアプローチへとシフトした。

圧倒的なハイインテンシティの試合開始直後やジェットコースターのような展開の試合はもう過去のものとなっている。昨季のノーガードの打ち合いのような試合は息をひそめ、今季はより全てが安定している。

そして、ダビド・ラヤの獲得はそれに連なるものだった。ラヤは何度もアクロバティックなセーブを見せた後に、相手ファンを煽るようなタイプのGKではない。

一方で、ラヤがゴールラインを離れてボールを受けた時に見せる落ち着き、そして長短のパスの判断力の高さが、総合的に見ればアーセナルが相手のシュート数を抑えるのに貢献してくれるとアルテタは考えたのだろう。

ラムズデールがほぼ完全にメンバー外となったことは今季ファンの間でかなり物議をかもしたが、それはラヤがチームにもたらすものが、ラムズデールの能力ほど目を引きやすい派手なものではなかったことも影響しているはずだ。

例えるのであればそれは非常にハードなタックルと静かに相手を不利に追いやる素晴らしいポジショニングの違いのようなもので、後者の方がより評価されづらい。アーセナルは今季感情を抑えたような試合を展開することも多く、確かにこれはファンにとってはより共感するのが難しいものだ。

そして、GKは試合中の多くの時間帯において、最もファンとの距離が近いポジションだし、このポジションでプレーする選手はかなり感情的になってしまうこともある。

過去にイェンス・レーマンは何度か酷いミスを見せた後にスタメンの座を失ったこともあったが、彼の燃え盛るような性格はファンから愛されたし、そしてそのおかげで、ファンは彼のミスに対して他の選手に対してよりも寛容だった。

アルムニアは一つミスをすると一度座って紅茶でも飲んで落ち着いた方が良さそうに見えたが、レーマンがミスをすると、彼の眼はらんらんと輝き、まるでレーザービームでも放とうとしているかのように見えたものだ。

ただし、ラヤがラムズデールからポジションを奪ったことが話題になったのは、単にラヤがラムズデールよりもより落ち着いた性格の持ち主だからというわけではない。

彼はプレシーズン期間がなく、これはかなりラヤに影響を与えていたように見えた。

特にラヤのように11人目のフィールドプレイヤーのようにプレイするGKにとって、チームメイトとの連携は重要だ。

そして、エミレーツスタジアムで彼に浴びせられるスポットライトはその数マイル南西のブレントフォードでのものよりはるかに厳しく、自クラブのファンも含めて、多くの人がその一挙手一投足に注目している。

GKのスタッツはまだまだ未発達のものも多いが、データ的にはなぜアーセナルがラヤの獲得に動いたのかは明白で、昨季ラヤはシュート後のxGとの比較で5点分の失点を止めるセーブを見せており、ラムズデールの-2という数字とは対照的だ。

ロングパス成功率もラムズデールの25.4%に対して約40%と大きく上回っていたが、ただこれはブレントフォードには前線にアイヴァン・トニーが居たというのを考慮する必要があるだろう。

むしろ、より注目すべきかつ最近顕著に表れているのが、ラヤのゴールラインを離れて飛び出していくことへの積極性に思われる。

昨季ラヤはクロスの8.7%(ラムズデールは5.8%)を処理しており、今季はアーセナルでクロス処理率15.3%と昨季のラムズデールの約3倍となる数字を記録している。そして単にボールをキャッチするだけではなく、その後カウンターに向けてボールをリリースするスピードもチームにとって非常に重要だ。

クリスタル・パレス戦でのプレイにそれがよく表れていた。

リバプール戦序盤でのサカのヘディングのチャンスもラヤがクロスをキャッチしクォーターバックのようなボールをマルティネッリに届けた所から生まれた。

このようなプレイはラムズデールが得意分野としていたものではなく、少しずつラヤのプレイ時間が増えるにつれて、なぜアルテタがラヤをラムズデールのアップグレードだと考えたのかが明らかになりつつある。

もちろん単に時間が経ってファンがそれに慣れてしまったというのもあるだろうが、最近はなぜラムズデールを先発させないのだ、という声はあまり聞かなくなったし、ラヤはチームに適応し、安定してプレイできているように見える。

とはいえ、まだラヤがアーセナルファンからの支持を100%得ているわけではないようで、リバプール戦のハーフタイムのタイムラインに失点をラヤのせいにする声がかなりみられたのは少々驚いた。確かにあの場面はGKとDF両方の責任ではあるだろうが、とはいえ80%ほどはあれはサリバのミスであったように思われる。

今もまだ、ラムズデールの出番を待っているサポーターもいるだろうが、ラムズデールはこの夏移籍する可能性が高そうで、そうすればこのラヤ-ラムズデール論争も終わりを迎えるだろう。

ラヤは確かにチームで落ち着きを取り戻すのに少々時間はかかったが、既にエミレーツスタジアムでファンを煽ったりという姿も見せ始めている。

彼はディナーパーティで少し申し訳なさそうなサプライズゲストであることをやめ、より楽しみ始めることができているようだ。

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Posted by gern3137