アーセナルが学んだ3つの教訓

分析Tim Stillman,海外記事

この2-3年でアーセナルは大きく前進したといっていいだろうが、2023年はガナーズにとって素晴らしい1年というわけではなかった。

この10年間(あるいはもっと長い期間)の他の年と比べれば良いパフォーマンスを見せる試合が増えたのは間違いないが、昨季の終盤に対戦相手がアーセナルの戦い方に慣れ始めたこともあり、勢いは落ちてしまった。

シーズンオフを挟んで今季のアーセナルはよりゆったりと落ち着いたスタイルを志向しており、これにはメリットもデメリットもあるが、まだ攻撃と守備のバランスは完ぺきとは言えず、調整の余地がある。

今季のアプローチには少々昨季露呈したアーセナルの弱点を補おうという意図が強すぎる(もちろん、それは実際に対処の必要があることではあるにせよ)部分もあるように思われる。

では実際に、昨季から今季にかけてアーセナルが学んだ教訓、そしてどのように改善していくべきなのかを見ていこう。

異なるプレースタイルの使い分け

まず昨季のアーセナルの課題だったのが、相手のカウンターへの対応だ。確かにこれは大きな問題だったし、実際に今季は非カウンターの機会を減らせてはいる。ただ、全試合でこの修正を適用する必要があるのだろうか。

10月のシティ相手の勝利ではトランジションや不安要素をできる限り取り除けるほど試合をコントロールできることをチームは示した。その前の4月のエティハドでの試合ではグアルディオラのチームが落ち着かないアーセナルをトランジション合戦へと持ち込み、中央でボールを奪うと攻略してしまったのとは対照的だった。

今季の試合とコミュニティシールドも合わせ、アルテタが昨季の試合から教訓を学んだのだろう。

同様に、アンフィールドでのリバプール戦でもアーセナルは被xGを0.9に抑えることに成功した。

確かにこれらの試合ではきちんと守りを固めることは必要だろう。クロップのリバプール相手にオープンな攻め合いに持ち込まれてしまっては大けがをしてしまう。アーセナルはこの試合をボクシングのような打ち合いではなくチェスの試合に変えることができた。

しかし、このようなアプローチをアーセナルは全ての対戦相手に採用する必要はないだろう。守備的に試合に臨むチーム相手にはアーセナルはボール保持時にもう少しリスクをとってもいいはずだ。

より高い位置でのカウンタープレスや、ハイリスクハイリターンのトリッキーなパスにトライしてもい。その方が良く組織された守備に対してのプレッシャーとなるはずだ。

実際にアーセナルは先日のブライトン戦でこれにトライし、FA杯のリバプール戦でも攻撃の布陣は少々いつもと異なり、似たような兆しは見えた。

リバプール戦で問題だったのは戦い方ではなくむしろファイナルサードで自信を欠いた選手が多かった点だ。サカ、マルティネッリ、ジェズス、ウーデゴールといった選手は皆トランジション時に活きる選手たちだし、デクラン・ライスは世界最高のボール奪取能力を備えている。

もちろんこれはそこまで簡単に実施できる策ではなく、例えばリバプールはケイタやシャキリ、チアゴといった選手たちを加えて攻撃に変化をつけようとしたが、どれも結果はパッとしなかった。

アーセナルのケースでは、ブレントフォードやエヴァートン相手にトロサールをゼロトップとして起用し、マルティネッリにより自由を与えるのはある程度機能しているように見えた。

また、リバプール戦ではハヴァーツのトップでの起用も行っており、アルテタももう少し攻撃のバリエーションを増やす必要があると考えているはずだ。

過密日程に慣れている選手の獲得

昨季のアーセナルを大きく変えたのは夏のガブリエル・ジェズスとジンチェンコの獲得だったが、この1年間は彼らはコンディション上の問題を抱えがちだ。

シティ時代からジンチェンコはフィットネス面での問題を抱えていたし、ジェズスはそこまで怪我が多い選手というわけではなかったが、シティ時代は全試合にフル出場を続けるという選手ではなく、どちらかというと今のアーセナルでのトロサールのような使われ方をしていた。

いきなり週3で試合をプレイすることを求めるのは難しい要求であったかもしれない。

同様のことがトーマス・パーティにも当てはまる。彼はアーセナル移籍後怪我が非常に増えたが、アトレティコ・マドリード時代は平均して一試合当たり62分しか出場していなかった。もしかすると、彼の肉体的な限界をアトレティコは把握しており、早い段階で交代させることを心掛けていたのかもしれない。

一方で、ベン・ホワイト、ガブリエル、デクラン・ライスやカイ・ハヴァーツとはアーセナル移籍前からすでに安定してフル稼働でプレイしてきた実績のある選手たちだ。そして、彼らはここまでの所非常にけがに強いことを示している。このような要素も、新たな選手獲得ターゲットを選定する際にはエドゥとアルテタは考慮すべきかもしれない。

余剰要員の放出

以前記事で私は『もしアーセナルの攻撃の解決策がスミスロウやネルソンといった選手の内部昇格であるというのであれば、それは素晴らしいが、そのような決断は明確な根拠と確信の基に下されるべきである』という旨を書いたが、 今季になって、そうではなかったがことが明らかになっている。

スミスロウとネルソンは全く監督からの信頼を増しているようには見えず、ファンが彼らをメンバー外とする決断の是非を判断できるだけのプレイ機会すら得られていない。

彼らに出場機会を与えないこと自体が誤りであったかはわからないが、いずれにせよ、もし選手が監督からの信頼を失っているのであれば、そういった選手は速やかに放出すべきだ。

もし去年の一月にアーセナルがムドリクを獲得していたら、ネルソンは夏にクラブを去っていただろう。だが、結果的に契約満了からの再延長となったことで、フリー移籍と同等の待遇なので彼の給与は大幅に上がったはずで、彼の放出は難しくなっているに違いない。したがって、ネルソンとの契約延長はアーセナルが彼に対しての移籍金を得ることを見越してのものだった、という見方が正しいのかについてはあまり自信が持てない。

近年のアーセナルが唯一ある程度の移籍金を得ることに成功している選手売却は『良い選手だが最高というわけではない』若手たちの放出だ。チェンバレン、イウォビ、ウィロック、マルティネスといった選手たちはクラブによってアーセナルはかなりの移籍金を得たが、クラブは選手が市場価値を失い、移籍金がつかなくなってしまうまで留めてしまうことが多すぎるように感じられる。

アルテタは選手の放出に消極的のようだが、もしかするとエドゥはもっと強いスタンスで選手を起用するか放出するかどちらかを迫るべきなのかもしれず、これが誰の責任なのかを知るのは難しい。

だがいずれにせよ、現在アーセナルはFFP上の制約から補強のためのやりくりに苦戦しており、かつ、ベンチにはアルテタが信頼をもって起用することのないアタッカーが座っているため攻撃陣のローテーションが少ない、という事態に陥ってしまっている。

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Posted by gern3137