ガブリエル・ジェズスはスペースを求めない

分析Tim Stillman,海外記事

先日のセビージャ戦でガブリエル・ジェズスはチームを勝利に導く活躍を見せた。センセーショナルなアシストと素晴らしいゴールでアーセナルの2得点を生み出し、彼自身のCLでの好調を継続した。

シティ時代に彼はCLで41試合で23得点を挙げているし、アーセナルでのCLでのグループリーグ2試合ともで得点を挙げている。

ジェズスの実得点が継続してxGを下回っているというのはよく話題にはなるが、もともとジェズスはブラジル時代から、カップ戦などの大舞台に強い選手だ。

一番最初に彼がパルメイラスで台頭した際に世間の注目を集めたのが、コパ・リベルタドーレスでの5試合4得点という大活躍だった。

この年のコパ・リベルタドーレスでのパルメイラス全体のパフォーマンスが良いとは言えなかったが、当時まだ10代だったジェズスはアルゼンチンでも最も威圧感のあるスタジアムの一つであるロザリオセントラルでのアウェイ戦で2得点を挙げて退場になる、というドラマチックなパフォーマンスを見せ、圧倒的なアウェイの環境でも輝ける、世界で最も恐れ知らずのFWの一人だという評価を得た。

より興味深いのは、ジェズスは国内リーグではなく、CLなどの国際大会ではxG20.0から27点を挙げているという点だ。

2017/18シーズンからの累計でプレミアリーグではxG77.5に対して実得点が63にとどまっているのとこれは対照的だ。

ジェズスは恐らく決定力さえ向上すれば世界でもトップ3からトップ5のストライカーになれるはずだが、どういうわけか、欧州コンペティションでは彼には天性の嗅覚が備わるのだ。

ジェズスに関して魅力的なのは彼がストライカーにとっておそらくもっとも重要な素質である決定力以外のほとんど全てを兼ね備えている、という点だ。彼はユース時代はストライカーではなく、子供時代のあこがれはロビーニョで、左ウイングとしてプレイしていた。

パルメイラスで中央でプレイすることになったのもある種の偶然が重なり、ドゥドゥとアレクサンドロの2人のセンターフォワードが怪我をしていたため監督が彼のストライカー起用にトライし、上手くいった、という経緯だった。

だが、ストライカーとしてプレイし始めたのが他の選手よりも遅いからこそ、ゴール前での圧倒的な落ち着きのようなものを彼は備えていないのかもしれない。

一方で、ジェズスは逆にウイングのようなシュート感覚をまだ残しているように見える。彼は中央ではなくハーフスペース、あるいはさらに外のエリアからのシュートは非常に上手い。

セビージャ戦の得点がまさにその例だが、外から中に入って素晴らしいシュートをゴールに沈めて見せた。これはまさに一流のウイングのようなゴールだ。

CLのランス戦でのゴールも同じように、ハーフスペースからのシュートで、二コラ・アネルカを彷彿とさせるような得点だった。

国内での試合でもそれは比較的頻繁にみられ、ピッチの真ん中では冷静さを欠いてしまうことがあるが、サイドからのシュートを得意としていることがわかる。

彼は冷静に流し込むようなシュートよりも力強い、あるいは少しカーブがかかったようなシュートが得意で、これはより角度がある位置からのシュートに適しているのだ。

また、ジェズスがよりサイドからの得点を得意にしているのはもう一つ理由があるように思う。

得点を量産するワールドクラスのストライカーの多くは皆、相手DFからひっそりと離れ、フリーでスペースに走りこむ能力を備えている。

ハーランドやアグエロ、オーバメヤンといった選手たちが良い例だが、彼らは気づけば1m程度相手のマーカーからの距離を確保できており、だれにも邪魔されることなくシュートを放つ。

だが、ジェズスは誰もいない場所で輝くというよりも、より込み入った場所で真価が発揮されるような選手だ。DFと向かい合い、非常に狭いスペースへとドリブルで抜けていくことができるし、マルティネッリへのセビージャ戦の素晴らしいアシストでも見せた通り、彼はフィジカルでの戦いを挑むことをむしろ好む。

フェイントやターンで相手をかわすだけでなく、ジェズスは相手のCBに跳ね飛ばされながらも空中戦を挑むことに全くためらいがない。

だが逆に、彼は時間もスペースもない状態でのプレイを常に意識しており、得意としているからこそ、逆にゆっくりとできる場面では冷静さを欠いて見えるのかもしれない。

まるでビョークのアラーム・コールに登場する『居場所が少ない方が余裕は多い』という歌詞の一節のようだ。

上のマンチェスターユナイテッド戦でのゴールがそのよい例だろう。もしこれが、シンプルに広大なスペースが与えられたGKとの1対1であれば、枠外にシュートを外してしまっていた可能性もあったのではないかと感じられる。だが、ちょうどジョニー・エヴァンズがジェズスを止めるために戻ってきたため。彼は相手をかわすことを選択し、そのまま直感的にシュートを打つことができた。

なぜか彼はフリーでボールを吸い寄せるようなゴールネットとGKを視界に収めながらシュートを打つよりも。相手DFの存在がすぐ近くに感じられるような場所でプレッシャーを受けながら打つ方がシュートの精度が増すのだ。

そして、このことがジェズスがこれまでにPKに13度も失敗していることと関係しているのではないかと思われる。

もしPKが何匹かの怒れる熊に追い立てられながらシュートを放つ競技であれば、彼の成績はもっと良くなっているに違いない。

ジェズスは首に刃を突き付けられて初めて輝きだす。

この性質により、時折彼はフラストレーションのたまるフィニッシャーとなるが、逆にアーセナルにとって素晴らしい、魅力的で流動的なストライカーともなるのだ。

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Posted by gern3137