データで見るアーセナルの選手たちのプレイスタイル

スタッツ・戦術

以前The Athleticで、データに基づいてGMM(混合ガウスモデル)というクラスタリング手法を用い、選手をDF、MF、FWのようなポジション(プレイする位置)ではなく、『ボックスクラッシャー』や『ターゲット』などプレースタイルに基づいて18種類に分類した記事が書かれており興味深かったのですが、その元となったDAVIESというデータベースの内容がすべて無料で公開されていることに昨日気付いたので、その中からアーセナルの選手をピックアップして彼らがどのようなスタイルの選手としてデータ上分類されているのか紹介していきたいと思います。

John MullerさんによるThe Athleticの記事

Mike Imburgioさんという方と、現在はNYレッドブルズでデータサイエンティストを務めGoldburgさんが共同で開発したスタイル分類&データベース。使用しているスタッツは全てFBref(Opta提供)のものとのこと。

CBとサイドバック

DAVIESではDFは6種類に分類されます。The Athleticの記事では『オーバーラッパー』『安全志向』のようなより遊び心がある名前が付けられていますが、もう少しダイレクトに和訳するのであれば『攻撃型サイドバック』『守備型サイドバック』『ボール前進型サイドバック』『守備型CB』『積極型CB』『ボール前進型CB』といったところでしょうか。以下アーセナルの選手のデータを何人か紹介します。

サリバ: ボール前進型CB

中央下のグラフがそれぞれの項目で各スタイルの選手ごとのリーグの平均を比較したものなのですが、同じ『ボール前進型CB』の平均と比較しても、ビルドアップへの貢献が非常に高いですね。

ガブリエル: 守備型CBとボール前進型CBが半々くらいだが、守備型CBが若干優勢

なんとなく前で積極的にボールを奪いに行っているイメージがありましたが、データで見る限り、そうでもないようです。やはりシュート、ボックス内での貢献がむちゃくちゃ大きい(主にコーナーキックだと思われる)です。

余談ですが、ガブリエルは同名の選手が多いのに加え、なぜかFBref上の登録名が『ガブリエル・ドス・サントス』になっていたため見つけるのに苦労しました。

冨安: 守備型サイドバック

こちらは去年ではなく21/22シーズンのデータなのですが、むちゃくちゃ純度の高い守備型サイドバックでした。昨季も守備型サイドバックですが、ボール前進の割合がかなり高まっています。

6番タイプ/ボランチ

最も低い位置でプレイするMFは守備的ボランチあるいはプレイメイク型ボランチの2つに分類されます。これは直感的な区別とそこまで乖離していない気がします。

パーティ: プレイメイカー型ボランチ

スタイル的に当然と言えば当然ですが、やはりパーティはプレイメイク型でした。ちなみに去年のライスも同じくプレイメイク型ボランチです。

8番タイプ/CMF

いわゆる古典的なトップ下ではない残りのMFは多くの場合『衛星型MF(ボールをもって前進させるのが得意なMF)』『クリエイト型MF』『ボール奪取型MF』の3つに分類されます。Mobile Midfielderは直訳するとよく動き回る、機動力のあるMF、という意味ですが、描写がかつてのジャック・ウィルシャーを彷彿とさせ、そういえば昔時々ウィルシャーが衛星のようにFWの周りをまわる、といった例え方をされていたことを思い出したので衛星型MFという訳にしてみました(FBrefのデータがある一番古いシーズンが17/18なのですが、実際にこの年のアーセナルでのウィルシャーは衛星型MFでした)。

クリエイト型MFというのが若干わかりにくいのですが、ここでいうMFというのは日本語のイメージよりも範囲が狭め、純粋な意味での(前線ではなくて)中盤でプレイする選手を指しており、8番タイプの選手で前線の一つ後ろで攻撃にかかわるような選手を指しているように思われます。

ジャカ: 色々ミックス

もうアーセナルから移籍してしまっていますが、ジャカのデータは非常に面白かったです。上が昨季のものなのですが、ボール奪取型MFとクリエイト型MFがほぼ半々、衛星型MF要素もかなり強く、さらにその下にあるTwo Way Creatorというのは一列前、というかより攻撃的な選手の分類(スミスロウがこれ)なので、かなり分類しにくいというか、様々な要素をあわせもつ役割を任されていたことがわかります。

また、さらに興味深いのはジャカはそれ以前はほぼ一貫してほぼ常に純度100%に近いプレイメイク型ボランチだったという点です。

クリエイター

クリエイターは意味合いはわかりやすいですが、クリエイト型MFと被ってややこしいので、時間のある際にしっくりとくる訳語がないかじっくり考えたいところです。クリエイター内の分類は比較的シンプルで『ワイドクリエイター』『セントラルクリエイター』『(攻守)万能型クリエイター』とわかりやすいです。

ウーデゴール: セントラルクリエイター

得点こそ多いもののザ・クリエイターというイメージのあるウーデゴールですが、やはりクリエイター内の3つの要素をまんべんなく兼ね備えており、中央で攻撃に参加するだけでなく、守備に戻り、サイドに流れ、というプレイスタイルを表しています。これは例えばアーセナル時代のメスト・エジルがほぼ純粋なセントラルクリエイターであったのと対照的です。

ドリブラー

ドリブラーはその名の通り、ドリブルを比較的多用し、クリエイターとFWの間をつなげるようなプレイを見せる選手です。より外側でプレイすることが多く、クロスを上げたりといったプレイが多い『ワイドドリブラー』と、中に入っていくことを好む『ダイレクトドリブラー』に分かれます。

サカ: ワイドドリブラー

カットインからの得点の印象も強いサカですが、全体を通してみるとかなりワイドドリブラー要素が強いです。ただし、21/22シーズンはダイレクトドリブラー75%なので、これに関しては昨季のアルテタの方針/戦術が透けて見えるように感じられます。

FW

突然普通のポジションのような名称になりましたが、DAVIESの分類では大項目名がフィニッシャーだったものの、サブカテゴリーの名前がすべてFWだったので、そのままFWとしました。ここからさらに『ボール前進型FW』『ターゲットFW』『衛星型FW』の3つに分かれますボール前進型と衛星型の違いは、ボール前進型はビルドアップに絡むなどしてパスでのボール前進を得意とする一方で、衛星型は自分でボールを足元にもってドリブルでボールを前線に運ぶ、という点です。

ジェズス: ダイレクトドリブラー+ボール前進型FW

FWに関しては、上の分類を当てはめるよりも、どちらかというとどのようなスタイルの要素をどれくらい持っているか、を見た方がどのようなタイプの選手かがわかりやすいような気がします。

そして、ジェズスは純粋にスタイルを見る限り、FWというよりむしろドリブラー、ということになるようです。昨季のエンケティアがほぼ純粋な衛星型FWで、去年のハーランドがターゲットFWと衛星型FWが半々くらい、という感じなので、(基本的に公開されているスタッツはボールを持っていないときのアクションのものはないので、この部分が考慮されないのは当然と言えば当然なのですが)ボールタッチが多くなく、スペースに走りこむことを得意とするようなストライカーは衛星型FWになるのではないかと思われます。


こちらが開発者のImburgioさんのツイッターです。サッカーのデータ分析界隈には時々『これが無料!?』と驚いてしまうほどのクオリティのものが公開されていますが、今回のツールもその一つでした。

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Posted by gern3137