我々はカイ・ハヴァーツを忍耐強く見守らなくてはならない
先日、ノッティンガムフォレスト戦直後にカイ・ハヴァーツに関しての記事を書いた。
この記事の中で『ハヴァーツは(エジルやジルー、ジャカと同じように)ファンの意見を真っ二つに割るような選手となるだろう』と書いたが、ほんの2週間でこの言葉は現実のものとなりつつある。
今のアーセナルファンの空気感は昨季終盤のそれと似て、少々緊張感が漂っている。アーセナルがタイトル争いに絡んで当然だろう、という期待を背負いながら新シーズンに臨むのは15年以上ぶりのことだ。
そして、現在のプレミアリーグにはマンチェスター・シティがおり、彼らと優勝争いを演じるためには、シーズン序盤で会っても、ほとんど勝ち点を落とすことは許されない。
そして、このような状況はファンの間に緊張感をもたらした一方で、コーチングスタッフには昨季と同じことをしていてはマンチェスター・シティには及ばない、という見方をもたらしたようだ。
だが、フレキシブルで相手にとって予測が難しいチームを構築することと、不必要に戦術を複雑にしすぎてしまうことのラインは非常に微妙だ。
その象徴かつ監督が向かい合っている課題の中で最も大きなものがカイ・ハヴァーツの先発起用だ。
ハヴァーツはチェルシーであまりパッとしない3年間を過ごし、この期間中、誰も彼がどのようなポジションが最も向いているのかわからないようだった。
もちろんチェルシーで同じように高額移籍金で獲得されながら輝けなかったアタッカーはこの数年で何人もおり、その点で多少同情の余地はあるが、とはいえチェルシーから高額移籍金出獲得されてきた選手、というだけでハヴァーツへのファンからの評価が非常に厳しいものになるのはわかり切っていたはずだ。
個人的には、ハヴァーツのパフォーマンスはフォレスト戦では悪く無く、クリスタル・パレス戦ではまずまず、そしてフラム戦ではあまりよくなかった、という程度だと思うが、とはいえ実際のパフォーマンス以上にハヴァーツがファンからの怒りを浴びているのは予想外、というわけではなかった。
まず、ハヴァーツに関して弁護の余地があると思われる点を考えてみよう(これを客観的な分析と捉えるか、ただ私が彼のために言い訳を並べていると受け止めるかはあなた次第だ)。
第一に、ジャカに代わってハヴァーツ、という変更が注目されているが、チームの変化はそれだけではない。ハヴァーツの中心となるプレイエリアであるチームの左側は色々な変更が加えられている。
昨季の絶対的メンバーであったジンチェンコは今季まだ一度も先発していないし、開幕からの三試合でアーセナルあhティンバー、冨安、キヴィオルと3連続で左サイドバックを変更している。同じく昨季の絶対的な左CBのガブリエルもプレイしていない。
ハヴァーツはセカンドストライカーのような役割を担うが、前線もエンケティアやトロサールと入れ替わっている。起用される時は左サイドにサポートに流れることが多いジェズスもまだ先発に復帰できていない。
今季アーセナルはトーマスが右サイドバックを務めるシステムへと基本の形をシフトしており、これにより、昨季非常に上手くいっていた右サイドの形も再構築する必要が出てきている。
まだ選手たちが慣れ切っていない形で戦っていることの影響は明らかで、それはフラム戦の失点にも表れていた。
まだアルテタは現在新しいパートナーシップとローテーションを作り出そうとしているところなのだ。
確かに56分で試合がビハインドであるにもかかわらずアタッカーが交代する、というのはその日のパフォーマンスの低調さを示しており、フラム戦で、機能していなかったキヴィオルとハヴァーツの左サイド、という形を変えるアルテタの采配は上手くいったが、この試合ではトロサールとパーティも交代となっており、単にハヴァーツのパフォーマンスが悪かったから交代となった、という単純な話ではない。
交代で入ったジンチェンコが左サイドをスムーズにし、そして同じく途中出場のファビオ・ビエイラが輝いたが、このようなパフォーマンスこそがアルテタがハヴァーツに求めていたものだったに違いない。試合後にアルテタがハヴァーツに関して残したコメントが、監督が彼の役割と責任をどう見ているかを示している。
今季すでに彼は何点も決めていてもおかしくないチャンスがあり、それが彼に足りないものだね
アルテタがハヴァーツを得点が出来るアタッカーとして期待していることは間違いなく、彼がプレシーズンのバルセロナ戦で挙げたような得点の形をテンプレートして考えているはずだ。
確かに、ここまでの所ハヴァーツはこのような形を再現できていないし、チェルシーに在籍していたのでアーセナルサポーターにとってもなじみのある選手で、その分ハードルが上がるのは当然ではある。
そして、最近のアーセナルがチェルシーから獲得した選手があまり大きな成功を収められていないというのも事実だ。
とはいえ、これらの選手獲得が失敗だったという判断を下す上で、出身クラブは関係ないし、またハヴァーツはボディランゲージが少し緩慢に見え、スタッツ上ではデュエル勝利数も問題ないし、特に空中戦では多く競り勝っているにもかかわらず、それらが評価されない一因となっているように思われる。
このため、物凄いスピードでアーセナルファンの間でハヴァーツに対してのネガティブな評価が積みあがってしまった。
そして、比較対象となるデクラン・ライスは更なる高額の移籍金でアーセナルにやってきた選手だが、ハヴァーツよりもスムーズにチームに溶け込んでいるように見える。
だが、ライスのように、ボールに多くかかわれるポジションの選手と、オフザボールで仕事をすることが求められる選手の適応の難しさには違いがあるかもしれない、と祈を考慮する必要はあるだろう。
サリバやジンチェンコ、ジェズスのように一瞬でチームに適応できる選手もいれば、ホワイトやパーティのように、チームでの立場を確立するまでにある程度の時間を要する選手もいる。
もちろん、時間さえ与えればハヴァーツはアーセナルで機能する、と断言することは出来ないが、現時点で彼の評価を定めてしまうのがあまりに早すぎるのは間違いない。
ずっとアーセナルファンからの不満をぶつけられ、最後の最後にファンからの信頼を勝ち取ったジャカの代役としてやってきたのがハヴァーツである、というのは少々皮肉にすら感じられるが、ハヴァーツはファンからの信頼を勝ち取るのに、ジャカほどの年数はかからないことを願おう。
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