ファビオ・ビエイラに関して 前編
昨夏のアーセナルのファビオ・ビエイラ獲得は最近の移籍の傾向から考えると、かなり衝撃的だった。このような高額の移籍金の大型移籍が公式発表の直前までほとんど情報がなかったのも驚きだったし、さらに、この時点でアーセナルが移籍市場で攻撃的MFを狙っているとは考えられていなかったからだ。
ただ、移籍金はそれなりに高額だったとはいえビエイラ獲得が将来性を見込んでのものだったのは間違いない。今の移籍市場では、ウクライナリーグで半シーズン活躍を見せた選手に90m£の移籍金がつくようになっており、数十m£程度での青田買い的な獲得は今後も続くに違いない。
だが一方で、ビエイラの獲得はアーセン・ベンゲル時代のアーセナルを彷彿とさせるものでもあった。
若く、フィジカルが売りではないが技術に秀でたプレイメイカーを特にチームの喫緊の補強課題には見えないが獲得する、というのはまさにベンゲル時代のそれだ。
獲得にあたって、アルテタは『ファビオはクリエイティブだし、攻撃に高いクオリティをもたらせるユーティリティ性を備えた選手だ』と彼が複数のポジションでプレイできるという点を強調した。
確かに、ユーティリティ性はアルテタにとってカギとなる選手の素質だ。
ポルト時代にビエイラは様々なポジションでその能力を発揮できることを示しており、展開に応じて試合中にポジションを変更することも多かった。
この点を考慮すると現在ほとんど替えがきかないといってもいいグラニト・ジャカ、ブカヨ・サカ、マルティン・ウーデゴールがプレイするポジションのどこでもプレイできる選手の獲得はスマートなものに思える。
上の3人は怪我などがない限り、ほぼ常にプレイするため、彼らのポジションの控えの選手の出場機会は非常に限られてしまう可能性が高いため、彼ら3人の控えを同時に務められる選手を獲得するというのは理に適っている。
このような選手は絶対的なスタメンの座を勝ち取れずとも、ある程度の出場機会があり、コンディションをシャープに保っていられるだろう。
今季のその良い例が冨安で、彼は昨季と比べると絶対的なレギュラーとは言えないが、それでも両サイドバックとCBをこなすことが出来るため、もしバック4の誰か一人でも離脱すれば最初に起用される選手だ。
そして、攻撃陣ではトロサールも似たような立ち位置となるかもしれない。もし全員が絶好調であれば、恐らく前線3人のスタメンはマルティネッリ、サカ、ジェズスの布陣となる可能性が高いが、彼も冨安と同じように、前線であればどこでも高い水準でこなすことが出来、彼ら3人のうちだれか一人でも調子を落とせば、まず最初に登場する選手だろう。
もしかすると、スミスロウも来季は似たような役割を担うことになるかもしれないが、これこそがまさにビエイラの獲得が少々驚きだった理由だ。
サイドと中央の攻撃的MFの控え、というのは一見スミスロウがプレイできるエリアに見える。どちらかというとビエイラは右寄りの位置が本職で、スミスロウは左サイドが得意という違いはあるが、左サイドにはトロサールもやってきた。
いずれにせよ、ビエイラとスミスロウが二人とも多くの出場機会をアーセナルで得る図はイメージしづらい。
(後編に続きます)
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興味深いです!翻訳ありがとうございます