アーセナルのリーダーたち 後編
前編はこちら:
そして、アーセナルには加入直後にリーダーシップグループの一員に選ばれたガブリエル・ジェズスもいる。彼は比較的静かな人物のようだが、他のチームメイトにとっての模範となるという意味では、彼がアルテタが高く評価する素質を備えていることは簡単に見て取れる。
監督の言葉のうちで強く印象に残るものというのは時々あるものだが、ヨーロッパリーグのボドグリムト戦でジェズスがベンチから出場した際のコメントはまさにそれだろう。
試合展開はかなり余裕のあるものとなっており、チームもそれを感じているように見えた。
だが2-0の状態でジェズスが登場すると、84分にファビオ・ビエイラへの3点目を演出して見せた。アルテタは試合のインテンシティが下がり始めてきていたことに懸念を感じていたに違いない。
試合後、アルテタはジェズスがこの試合で見せた熱意と真剣さを評して『この5年で全てを勝ち取ってきたにもかかわらずだ。彼以外の選手にとって何をすべきか想像するのは簡単だろう、彼に続くことだ』とコメントした。
このような姿勢こそが、ジェズスが移籍初年度からリーダーシップグループの一員に指名された理由に違いない。
彼の移籍に際してペップ・グアルディオラも『彼はプレイ時間が5分しかなかったとしても人生で最も必死な5分を見せてくれるんだ』と、似たコメントを残していた。
ジェズスはチームに明快な指示を飛ばしたり、人を組織し、ロッカールームで演説をするようなタイプの選手ではない。だが、彼はアルテタがチームに臨む基準を身をもって示す存在なのだ。
ウーデゴールがアーセナルの頭脳だとすれば、ジェズスはアーセナルの肺だと言っていいかもしれない。
そして、アーセナルにはグラニト・ジャカもいる。恐らく、彼は最もイングランドのサッカーファンが想像する『伝統的な』意味でのリーダーシップを備えた選手と言っていいだろう。
彼は相手チームとの諍いがあれば真っ先に飛び込み、得点あるいは失点後に円陣に選手を呼び寄せる、頼りになるチームの柱だ。
興味深いのは、かつてジャカは同時にチームのテクニカル・リーダーでもあったという点だ。加えて、エメリ体制のアーセナルでは実際にキャプテンマークを巻くキャプテンでもあった。
ただし、これは上手くいかず、今はより象徴的な意味でのリーダーの役割を果たしている。
私は昨夏アーセナル女子チームの活躍を祝うチームの一員としてアーセナルを訪れているのだが、私含め、この一団はアーセナル男子チームのスタッフや選手たちには顔を知られておらず、彼らは我々が誰なのかわからなかったはずだ。
我々は少々の気まずさを感じながら、アーセナル男子チームのスタッフと並んで選手たちの到着を待っていたのだが、そんな中ジャカは律儀に我々外部からのゲスト一人一人に握手をしながら目を見て『おはよう』と声をかけていた。
ジャカは我々が誰であるのか、そもそもなぜ我々があの場にいたのか知らなかったに違いないが、当たり前のように我々一人ずつと挨拶を交わした。
もちろんこれ自体は非常に些細な事ではあるかもしれないが、なぜ彼がアーセナルで尊敬を集めているのかがうかがえる。彼はアーセナルでプレイすることを非常に真剣にとらえており、それこそが先ほど私がジャカは最も伝統的な意味でのリーダーシップを備えていると評した理由だ。
彼はチームのメンバーやスタッフの尊敬を集め、その責任を受け入れ楽しんでいる。彼はチームの心臓なのだ。
もちろんアーセナルでリーダーシップを備えているのはここまで触れた3人だけではない。ジンチェンコは間違いなくチームの頭脳、肺、心臓としての素質を備えているし、サカやガブリエル、ラムズデールも同様だろう。パーティもチームの頭脳の一部であるはずで、マルティネッリはもしかすると足かもしれない。
とはいえやはり、チームのリーダーとして中心となっているウーデゴール、ジェズス、ジャカの2人がスカッドにもたらしているものは明らかで、今季の最終盤に向けて一層彼らの力が必要になることだろう。
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ディスカッション
コメント一覧
冨安選手の名前がいつ出てくるのかを期待して最後まで読みましたが、出てきませんでした。今のレギュラーへの賛歌ということで仕方はありませんが、今の強うさの維持のためには、人材もさることながら、アーセナルのチームの文化をどう見ているのか(美しいサッカーなのか、強いサッカーなのか、魂を燃やす全力サッカーなのか)で、コラムの品質が決まる。そこまで踏み込んで欲しかった。あるいは、次回のコラムに書かれるのかも知れたいとの期待をもって後編を待つすることにしたい。
活動に敬意を表します。そしてリネカー氏の発言と、その後の収束の仕方にも。民主主義社会。自由闊達な意見の数々が物事を前進させますが、その自由をどう解釈するか。人心を下方誘導しない、という事は大切だと思われます。
…やはり私のキャプテンに対する意見はまたいつか、という事に。