ガブリエル・ジェズスの得点力不足の理由に迫る
ガブリエル・ジェズスは彼のキャリアを通してほとんど常に、実得点がxGを下回ってきている。彼は素晴らしいクオリティを備えているが、決定力はそこまで秀でているとは言えないのだ。だが一方で、彼のシュート技術が低いようには見えない。では、なぜジェズスは得点がそこまで伸びないのか、今回は考察していきたいと思う。
①ジェズスは生来のストライカーではない
あまり知られていないことだが、実はジェズスは元々ストライカーとして育ったわけではない。2018年のW杯を契機に再びサイドでプレイすることが増えたジェズスだが、これは別にサイドにコンバートされたというよりも、元のポジションに戻ったというだけなのだ。
ジェズスは基本的にはユース時代はずっとウイングでプレイしており、ロビーニョがアイドルだと語るなど、パルメイラスでデビューを果たした際にもウイングだった。
だが2016年にパルメイラスでFWにけが人が相次いだため、監督がジェズスのストライカー起用を試してみた3戦4得点とこれが大当たりとなった。
そして、同時期にはブラジル代表もずっと中央でプレイできるストライカーを探し、ロビーニョやタルデッリといった本職がサイドの選手を試してみたり、フレッジやジョーという、ブラジル代表のストライカーとしては少し物足りない選手を起用したりなどをしていた。
そんな中、2016年にティテがブラジル代表の監督に就任し、いきなり若きジェズスの才能に賭けてみることを決めた。
彼がメンバー入りどころかいきなり先発メンバーとなったのは、ジェズスのポテンシャルと他のオプションの不在という両方の理由が影響しているはずだ。
だが、ジェズスがもともとはストライカー出身の選手ではない、ということは覚えておくべきだろう。
②自分自身にプレッシャーをかけすぎる傾向がある
私が思うに、ジェズスがマンチェスター・シティで実得点がxGを下回ったのには心理面の要因が大きく影響している。
ジェズスはかなりメンタル面で敏感なタイプの人物であり、それは2019年のコパアメリカの決勝で退場になってしまった時の様子からも明らかだ。
Gabriel Jesus já tem cara de chorão e ele chorando de verdade é uma graça pic.twitter.com/jb53oU6JLC
— melo (@amandmeloo) July 7, 2019
この時彼はピッチを去る前にVARを押したという理由で、さらに追加での一試合出場停止も食らっている。2018年のW杯で満足なパフォーマンスを残せずかなり批判されていたこともあって、その翌年の大会ではかなり気合が入っていたようだ。実際のところ、この試合で彼は得点を決めており、結果的にブラジル代表も勝利したが、それでもここまで動揺していた。
そして、マンチェスター・シティ時代には常に彼の前にはレジェンドのセルヒオ・アグエロが居た。ジェズスがストライカーとして出場するレアなチャンスが訪れた際には、凄まじいパフォーマンスを見せない限り、アグエロからポジションを奪って先発メンバーに次戦でも選ばれることはないと思っていただろう。
そのようなプレッシャーが、彼のゴール前での落ち着きにも影響を与えていたのかもしれない。
そして、彼は母国ブラジルでも2018年のW杯で得点できなかったことを激しく批判されていた。その激しさは、ジェズスに中央でプレイすることを続けることを考え直させ、サイドへの転向を申し出たほどだった。
時折ジェズスは自分のプレイだけではなく、チームの全体に対しても、責任感を感じすぎてしまう傾向がある。
この点がよくわかるのがジェズスのシティ時代のCLでの成績だ。ジェズスはCLではxG11.2に対して実得点20を挙げており、大きくxGを上回っている。したがって、抜群の決定力を発揮しているのだ。
グループステージでアグエロではなくジェズスがFWとして起用されることが多く、また、プレミアリーグほどの注目が集まらず、リラックスしてゴール前でプレイできることが影響しているのかもしれない。
実際の所、ジェズスはグループステージだけではなく決勝トーナメントでも重要なゴールをいくつか決めているが、これらは基本的にジェズスがサイド起用の際に生まれており、やはり、チームの中心として、自分が絶対に点を決めなくてはならない、というプレッシャーはかかっていないような状態だ。
例えば、ジェズスはオーバメヤンのような得点特化型の選手とは違い、得点以外にもチームへの貢献が多い。したがって、何戦か得点がなかったとしても、そこまで気にしすぎなくても良いはずだが、やはり少し得点が止まっていることで、ジェズス自身の中では少し考えてしまう所があるのだろうか。
運動量の豊富さ
そして、もう一つ重要なのは、ガブリエル・ジェズスが非常に運動量豊富でどこにでも顔を出すタイプの選手であるという点だ。彼は常に走っているし、サイズはないが、相手のCBとのデュエルを繰り広げ、そして勝利を収めることも多い。
マンチェスター・シティ対談に際して、ペップ・グアルディオラはジェズスについて『彼を5分だけ出場させたとしても、彼は人生の中で最も全力の5分を提供してくれるんだ』と語っていた。
もしかすると、その献身性と引き換えに、少しだけゴール前での落ち着きが失われているのかもしれない。より体格に優れ、ジェズスほど細かく走り回らずとも相手DFとのデュエルに勝利を収められる選手、あるいは、そこまで運動量が多くなく、ゴール前にボールが来るのを虎視眈々と待つようなタイプのストライカーの方がゴール前での落ち着きがあるということは言えるだろうか。
確かに、セインツ戦でウーデゴールからのスルーパスにジェズスが走り込んだ際、少しだけ疲れて見えた。もちろんそれは当然でもあるし、これは試合全体を通してというよりも、その瞬間的なもので、彼は毎試合物凄いエネルギーをもって試合に臨んでいるのだが、やはりゴール前ではゆったりと深呼吸を一度するくらいの余裕があった方が決定力も上がるかもしれない。
まとめ
データで見ると、ガブリエル・ジェズスは元々非常に運動量豊富だが決定力はそこまで高くない選手である、というのはアーセナルはわかっていたはずだ。一方で、だからこそジェズスが備えている魅力的な能力もある。
世界でもベストなストライカーと比べると、多少はジェズスには彼らに及ばない点もあるかもしれないが、現状のアーセナルが獲得できる可能性があった選手の中では、最高のFWの一人であることは間違いない。
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ディスカッション
コメント一覧
まぁ得点こそ伸びてないかもだけど、試合を見れば、ジェズスが起用され続けてる理由もわかると思う。自分が点を取るかではなくチームが勝つかが重要なので、FWなのだから点を取るべき、みたいな考え方はただ古いだけですね。