チームのメンタル面とバランス、継続したチューニングの必要性 前編

分析海外記事

良いチームというのは、良い料理と同じように、良質な材料と素晴らしい風味がうまく混ざり合って生まれるものだ。それぞれ個別に見ると、味気のない材料や刺激が強すぎるものもあるかもしれないし、単品では物足りなかったり、逆にほかの材料の味を消してしまったり、ということもあるかもしれないが、きちんとした配合でブレンドすれば、それらの素材がお互いを高めあったり、互いのバランスをとったりをしてくれるのだ。

サッカーチームでもそれは同様で、GK10人のFWではよいチームは作れない。バランスとケミストリーこそが重要で、チームにはティエリ・アンリとレイ・パーラーの両方が必要だ。

ミケル・アルテタはアーセナルでその正しいバランスを見つけ出すまでに少し時間がかかった。そもそも彼が引き継いだチームは非常にアンバランスで、質不足に加えて年齢面のプロフィールもよくなかった。

選手の性格的にも、それはアルテタが求めるものとは異なり、ロッカールームの雰囲気は今とは異なった。

チームと同じように、これもバランスの問題であり、単純に性格面で問題を抱えていた選手がいた、というわけではないのかもしれない。おそらくより重要なのはそれぞれの選手が互いに与え合う影響だ。

例えば、ガソリンは少々不快な匂いは放つかもしれないが、単品で見れば非常に役立つ便利な代物だ。ただし、そこに火をついたマッチを放り込んでしまうと、それは大きな問題となる。

この数年間ずっと、アルテタとエドゥはチームの正しいバランスを探し求めてきた。興味深いの今のチームの左利きの選手の多さだ。ほとんどの試合でガブリエル、ジンチェンコ/ティアニー、ジャカ、ウーデゴール、サカは先発することが多く、フィールドプレイヤーの右利きの選手と左利きの選手の比率はほぼ50:50であることが多い。

富安が左サイドバックで起用されることも何度もあったが、彼の左足の精度は高いため、このケミストリーを損なうことはない。そして、ウーデゴール、サカあるいはジャカの代役としては同じく左利きのファビオ・ビエイラが控えている。

欧州でここまで多くの左利きの選手を先発起用するチームは多くないし、これが意図的にアルテタが望んで実現させていることなのは間違いないだろう。

一方で、戦術面や技術から離れ、アーセナルの選手たちのフィジカル、そして年齢面のプロフィールを見てみると、非常に長くにわたってアーセナルは正しいバランスを見出すことができていなかった。

インビンシブルズ以後、アーセン・ベンゲルはより若いチーム作りを目指したが、例えば2005/06シーズンのアーセナルはアウェイで11敗を喫してしまい、特にドログバやシアラーといったフィジカルに秀でた相手に失点することが多かった。

その後、ベンゲルはこの問題に対処するために4-4-2より一人多くMFを起用する4-3-3/4-5-1へとシフトした。だが今度は、ベンゲル時代の終盤、そしてエメリ時代にかけて、アーセナルのスカッドは年齢面でバランスが取れているとは言えなかった。

2017年にアーセナルがCL出場権を逃したことで、キャリア終盤を迎えつつあるベテラン選手の補強にクラブは乗り出し、即戦力を加えることで、CL出場権を取り戻そうという策を取った。

エジル、オーバメヤン、ムヒタリアン、ソクラティス、ダビド・ルイス、ウィリアンといった選手たちがアーセナルの中核となるべく連れてこられた。この方針がうまくいかなかったことは言うまでもないだろう。

もちろん、これは必ずしも彼らがキャラクター的に問題を抱えていたり、選手としての素質に問題があったということを意味しない。

単純に彼らが合わさった結果できあったチームがうまくいかなかった、というだけのことだ。

この時のアーセナルはすでにキャリアで多くを成し遂げた選手が多すぎた。

ミケル・アルテタとジョージ・グレアム体制初期の類似性を指摘する声が上がっているが、確かに、グレアムがチームを引き継いだ当初もスカッドには給与や評判ほどの活躍を見せられていなかったA代表レベルのスターが多く在籍していた。

その後、ケニー・サンソムやトニー・ウッドコック、スティーブ・ウィリアムズといった影響力の強い選手たちは放出され、アカデミー出身のマイケル・トーマス、ポール・マーソン、トニー・アダムズといった選手たちがとってかわった。

そして、より若く、ハングリーな下位のクラブからスティーブ・ボールドやリー・ディクソン、ナイジェル・ウィンターバーンといったメンバーも加わった。

これらの選手たちが合わさって数年間は素晴らしいパフォーマンスを見せたが、最終的にはグレアムのアプローチは厳格すぎた。監督というのはいつ手綱を締め、いつ緩めるかというのも重要だ。グレアム時代の選手たちは最終的に疲弊してしまった。

この点では、アルテタもグレアムと同じようなプロジェクトを任されていた。何度か痛みを伴う改革を敢行し、スター選手の放出を行ったことも似ている。ユース選手の登用だけではなく、より将来性のあるベン・ホワイトやらむずでーるといった選手たちの獲得も行った。

新たに台頭するチームの旗頭としてリーダーに指名されたのはマルティン・ウーデゴールで、この夏には25歳で経験と若さのバランスが絶妙で、勝者のメンタリティを持つジェズスとジンチェンコも加わった。

注目すべきは、アーセナルが2000年代前半の"プロジェクトユース"の過ちから学んでいる、という点だ。近年のアーセナルは若手志向ではあるが、当時ほど若手変偏重ではない。今のアーセナルの主力は22-25歳だ。

そして、同時にチームには数人は突出したキャラクターを持った選手も必要だ。選手たちのすべてのエゴを消してしまうべきではない。

ジョージ・グレアムのチームには天性のリーダーである若きトニー・アダムズがいたが、それでもポール・デイビスらを手元にとどめたし、ケビン・リチャードソンやブライアン・マーウッドといった選手を獲得することもした。

オーバメヤンがアルテタに関して『彼は監督の言うことを何も言わずに聞くような、若い選手が必要なんだ』というコメントした動画が出回り話題になったが、確かにこれは少しばかりの真実を含んでいるかもしれない。

だが、彼は今のチームを率いる存在として、グラニト・ジャカの存在を忘れている。

ジャカはアーセナルから多くのベテランが去り、自身のリーダーとしての役割が明確になったことで以前よりもはるかに効果的にその役を務めている。

そして、この夏にはガブリエル・ジェズスもアーセナルに加わった。なぜ加入直後の彼が副キャプテンの一人に任命されたかというと、それは彼がそれに相応しい性格の持ち主だからだ。彼は10代のころからずっと素晴らしいメンタリティの持ち主だった。

以前グアルディオラはジェズスの性格を評して『彼を5分だけ出場させたとしよう。それでも彼は自分の人生の中での過去最高の5分間をチームに提供してくれるんだ』とコメントしていた。

先日ジェズスはヨーロッパリーグのボド/グリムト戦で途中から投入された。ヨーロッパリーグのグループリーグの試合というのは彼のようなスターにとっては華やかな舞台とは言えないが、ジェズスは再びチームの勢いを取り戻し、ビエイラに魔法のようなアシストを見せた。

試合後、アルテタは『これまでに全てを勝ち取ってきたジェズスがどのようなプレイを見せたのかをよく見てくれ、お手本にしてほしい』とコメントしていたが、これは彼から選手たちへのメッセージに違いない。

(後編に続きます)

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Posted by gern3137