セレブレーション警察とアーセナルの一体感に関して

語ってみたTim Stillman,海外記事

2006年の10月、アーセナルはエミレーツスタジアムにワトフォードを迎えた。晩秋に差し掛かったこの日、ガナーズは3-0で悠々とした勝利を収めた。この日はアーセン・ベンゲルのアーセナル監督就任10周年の記念式典があり、スタジアムには『もう10年!もう10年!』の声が響いてた。

しかし、そこからの10年間で少しずつ彼への信頼を失うファンも増えていった(もちろん、最後まで信頼を失わなかった者も多く居た。)

なぜこのような話を持ち出したかというと、私の記憶にある限り、これがアーセナルファンが本当の意味で一体だったと感じられた最後の一日だったからだ。

そこからはベンゲル時代終盤になるにつれて監督の去就を巡ってファンの意見は割れ、スタジアムの空気は良くないものになっていった。アウェイ遠征先でアーセナルファンは仲たがいするようになったどころか、ベンゲル最終年にはそれすら通り越してもう無気力になってしまっていた。

その後任のウナイ・エメリ率いるアーセナルもファンをまとめるのには失敗してしまった。

しかし、少し時間はかかったものの、ミケル・アルテタはそれを成し遂げたように見える。

パンデミック時の無観客試合期間を経て、最近のエミレーツスタジアムを訪れる観衆は若返りつつあり、より若者が増えていることは以前も書いたが、チームと同じように、スタジアムの空気もよりフレッシュになっている。

今ほどアーセナルが好調でなかった時期でも、サポーターとチームの絆が少しずつ深まりつつあるのが感じられた。

そして、ついに今では、アーセナルのホームゲームでもミケル・アルテタを称えるチャントが歌われるまでになった。シーズンチケットを保持しているファンが居ないクロックエンドの下側の席、アウェイ席のすぐ隣のよりチケットの価格が安いエリアがエミレーツスタジアムで若いファンの中心地となっており、ここから新しい空気、そして新たなチャントが生まれている。

これらのファクターと、若く新たな息吹が吹き込まれたチームが合わさり、ここ15年間、エミレーツスタジアムが建てられて以来感じられていなかったような一体感を生み出しているのだ。

かつての雰囲気を取り戻すのに15年かかってしまったのは、ハイバリーからの移転と無関係ではないだろう。エミレーツにもハイバリーを懐かしむファンは多く居たし、かつてとは席が異なるものになり、知り合いと離れることとなってしまったファンもいた。

だが、既にハイバリー時代を知らないファンも多く現れている。

とはいえ、今の良い空気の最大の要因はチームがピッチ上で見せるパフォーマンスと振る舞いだろう。

ルーベン・ネヴェス、そしてアシュリー・ヤングがそれぞれウルブズとアストン・ヴィラ相手の勝利を祝うアーセナルを揶揄するようなコメントを残したが、アーセナルの選手たちとファンがリーグ中位のイングランド中部のクラブ相手に勝利をしたことだけを喜んでいるのだと考えたのだとしたら、それは勘違いというものだ。

彼らはこの試合でたまたま対戦相手だっただけで、我々は、過去との決別、そしてもう何年もアーセナルファンが経験していなかったような明るい未来を祝っていたのだ。

直近の過去の負担に縛られていない選手たちの姿は非常に新鮮だった。

ウルブズ相手にアーセナルは10人で泥臭く守り切って勝利を収めたが、これは最近アーセナルではあまり見なかった光景だ。ヴィラ戦の終盤のフリーキックを守りきるためにアーセナルの選手たちは自陣に集合した。緊張感のある最後の一場面だった。恐らく、試合のラストプレーがレノのロングキックだったとしたら、恐らくセレブレーションの様子は少し異なったものになっていただろう。

もちろん、セレブレーションを控えたり謝罪する必要など全くないのだが。選手たちとファンが試合の勝利を祝うべきではないという主張は何とも馬鹿げている。

では一体我々は何を祝えば良いというのだろう?得点をしても、まだ勝利したわけではなく、その後失点する可能性があるので祝うべきではないとでもいうのだろうか?シーズン終了後に順位が確定するまでセレブレーションを控えるべきだとでも?その数年後に離婚する可能性もなくはないので結婚式では乾杯は控えるべきか?

アーセナルファンが最近見せている『セレブレーション』は必ずしも何かを成し遂げ、結果を出したことを祝っているわけではない。むしろ、アーセナルが正しい方向に進んでいるという確信を味わい、一体感を楽しんでいるのだ。

これは十分にアーセナルファンにとって祝う価値のあることで、今のアーセナルが明日から世界トップレベルのチームとして戦える、と言いたいわけではない。

もちろん、我々以外の誰かがセレブレーションに関してどう思うかは大した問題ではないのだが。彼らには言わせておけばよい。我々にとっては何を祝っているのかは明らかなのだから。

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Posted by gern3137