【戦術コラム】進化するアーセナルの右サイド

スタッツ・戦術Lewis Ambrose,海外記事

先週は最近のアーセナルの左サイドに起きている変化について考察をした。

次は、先週末の試合もあって注目を集めているアーセナルの右サイド、特にウーデゴールとサカ、セドリックの関係性がいかにしてアーセナルとワンランク上のレベルに引き上げたかを解説していこうと思う。

チャンスを作るために数的不利に打ち勝つ必要があったサカ

サカは台頭直後からアーセナルのスターだったが、得点やアシストを量産し始めたのは比較的最近のことだ。

かつてのアーセナルの攻撃はティアニーのオーバーラップに頼った左サイド偏重の形が多く、そのバランスをとるため右サイドバックの冨安は下がって控えていることが多く、かつウーデゴールは裏への抜け出しなどを行うタイプではないので、サカはチャンスを作るためには2,3人を独力で突破しないといけないという状況も多かった。

これが特に明確に見えたのが12月のノリッジ戦とウエストハム戦だ。サカがボールを受けると、ウーデゴールは内側でボールの受け手にはなるが、相手DFを引き連れて走るようなプレイを見せることはなく、サカは数的不利に陥った。

ウーデゴールがパスのオプションとなってくれなかった、というわけではなかったのだが、彼のプレイはサカをマークしている2,3人のDFを彼から引き離すようなものではなかった。

もちろん、サカは2,3人を引きはがすポテンシャルがあるため、それでも機能はしていたが、サカの攻撃力をこれが最大限活かせているとは言えなかった。

特にノリッジ戦では右サイドバックをベン・ホワイトが務めたため、オーバーラップもほとんどなく、これは顕著だった。

ウーデゴールは常に中にいたわけではなく、サイドに流れていくこともあったが、これはボールを受けに行くためで、サカのマークの軽減を意識したプレイではなかった。

遥かに流動的になったアーセナルの右サイド

だが、今のアーセナルの右サイドはこの頃とは全く別物だ。

左サイドと同じようにアーセナルの右サイドもポジションチェンジが増え、非常に流動的になっている。これにより、右サイドバックの負担は増しているが、一方でサカがボールを持った時に孤立するというケースが減り、彼が相手にしなくてはならない相手DFの数が減ったし、アーセナルが相手を押し込めるようになり、より高い位置でサカがボールを持てる場面も増えた。

これにより、サカがボールを持った時に決定的な仕事が出来る可能性が上がった。

上の二枚の画像はブレントフォード戦での一幕だが、ウーデゴールがサカを外側から回り込むように走り込んでおり、ブレントフォードのDFはそちらのオーバーラップに気をとられ、サカがボックス内のスミスロウにパスを通すだけの余裕が生まれている。

このシーンとノリッジ戦で何度も見られた静的なポジショニングとの違いは明確だ。

最終的にオフサイドで取り消されたものの、ここからボールはスミスロウ、ジャカ、ラカゼットと繋がりゴールに収まった。

最近のアーセナルでは、このようなウーデゴールのランの数が増えている。彼はサカの周りでスプリントを行い、パスの受け手となる、あるいは外に注意を引きつけてサカが中にカットインできるようなスペースを作り出している。

上の場面では、サカは回り込んだウーデゴールにパスを出さず自分で中に入っていくことを選択したが、もしかすると外でフリーとなっていたウーデゴールにパスを出した方が賢い選択肢だったかもしれない。

また、ウーデゴールだけではなく、ウーデゴールが相手を引き付けるのと同時にラカゼットが外からボックス内に相手DFを引き付けて入ることで相手がサカに2人マークを付けることを難しくする、という場面も見られた。

サカへの第3のサポート

加えて、サカをサポートする動きは右サイドバックからも見られ、アーセナルはこちらのサイドでさらに相手を引き延ばせるようになっている。

下の場面では、ウーデゴールがベン・ホワイトからボールを受けようとしているが、この時に相手の5バックの一人を前につり出している。

これによって空いたスペースにサカは走り込んでいるが、この時に2人のDFは中央のラカゼットと大外のセドリックも見ないといけない形になっている。

これにより、相手DF全員が、スペースを埋めてマークをフリーにするか、そのまま選手についていくかの難しい答えを出すことが必要になる。これは、昨季のより動きが少なかったアーセナルの攻撃時にはあまり見られなかった状況だ。

ワトフォード戦でも、何度もセドリックがサカとウーデゴールの外側を回っていく場面があった。普通であれば、MFは中に留まり、サイドバックが大外を上がって、それに合わせてウイングが中に入る、という場面だが、最近のウーデゴールは中でボールを待つのではなく、中と外両方から縦への走り込みも見せるので、サカが中に入った時に相手をしなくてはならないDFの数が減っている。

更に、サカの周りには見方が居るので、素早い連携からそのうちの誰かをスペースに放つことも可能となる。

ウーデゴールのこのような深い位置への走り込みは、確かに彼がボールを受けるのは難しくするかもしれないが、相手のDFをピン止めし、彼の後ろにチームメイトが走り込んでカットバックを受けるスペースを空けるという効果がある。

両サイドでポジションチェンジを駆使するアーセナル

そして、左サイドと同じように右サイドのポジショニングも非常に流動的だ。いつも5レーンに誰かが居るようにはなっているが、同じポジションにいるのがいつも同じ選手とは限らない。

ウーデゴールが外に流れた時には、上で述べたウーデゴールの様な縦への走り込みをセドリックが行い、かつサカがウーデゴールのためのスペースを演出する場合もあるし、ウーデゴールとサカのポジションが入れ替わることもある。

このような流動的なランが増えていることで、サカの能力が最大限発揮できるだけではなく、右サイドの3人の選手全員のパフォーマンスが上がっているし、互いがより近い位置でプレイできている。このため、サカとウーデゴールの素晴らしい連携がより活きるというわけだ。

アーセナルは左右両サイドで進歩を遂げており、大きな一歩を踏み出したように感じられる。この新しいパターンが、冨安健洋の復帰時にどのような形となるかは興味深い。

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本日のニュースレターでは今日登場したウーデゴールやベン・ホワイトとといった夏の新加入選手について考察しています!

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Posted by gern3137