ラカゼットのレガシー
アレクサンドル・ラカゼットのアーセナルでのキャリアは非常に興味深い。
アーセン・ベンゲルが彼を獲得した時点で既に、ベンゲルはラカゼットの獲得にそこまで乗り気ではなかったのではないか、という様子が見受けられた。
ベンゲルはオリビエ・ジルーの後継/アップグレードを何年も探しており、スアレスやイグアイン、ベンゼマやヴァーディといった選手たちがターゲットとなったし、ウォルコットやジェルビーニョ、サンチェスといったサイドの選手たちのストライカー起用を試したりもした。
もしベンゲルが本気でラカゼットの獲得を望んでいたのであれば、実際に獲得した2017年夏の1年前、あるいは2年前の夏にも獲得を行うことができたはずだ。
そして、その後半年後にすぐにオーバメヤンを更に獲得した、という経緯から見ても、ラカゼットはプランAではなかったと認めているようなものだろう。
そして、もう一つ個人的に気なるのは、逆に、ラカゼット自身は彼のアーセナル移籍をどのようにとらえているのだろうか、という点だ。
彼は結局アーセナルでチャンピオンズリーグをプレイすることはなかったし、フランス代表のスカッドに食い込むことも出来なかった。彼はアーセナルで移籍当初に自身が望んでいたような成長を遂げられただろうか?アーセナルでプレイするということが彼の選手としての評判を上げてくれただろうか?
だが、ラカゼットのアーセナルでのキャリアの最後の6か月は、最初の6か月とある意味でシンメトリーとなっている。
ラカゼットはそのアーセナルでのキャリアを通して、常に良い友人であり攻撃のパートナーであるオーバメヤンの陰に隠れてきた。確かにこの二人はダブル主演俳優なのだが、スポットライトを多く浴びる方は決まっていた。
だが、これからシーズン末までの期間中、ラカゼットがアーセナルに移籍してきた直後と同じように、そのオーバメヤンはチームに居ない。
これはあくまで私の想像なのだが、恐らくベンゲルはラカゼットのことを技術面では申し分ないが、得点力は十分ではないと考えていたのだろう。この点ではオリビエ・ジルーと共通しているが、チームにオーバメヤンがやってきたことによって、ラカゼットの得点数の少なさは、ジルーと同じように批判されることはなかった。
だが、オーバメヤンの退団、そしてアーセナルがこの何年かで初めて現実的にトップ4を狙える位置につけていることが合わさり、ついにラカゼットの得点力にアーセナルファンの視線が注がれる時が来た。
ラカゼットはかなり不思議なポジションに置かれている。彼は契約満了の数か月までの間クラブのキャプテンを務めることになり、チームを栄光へと導く機会を与えられているが、恐らくそれに成功しても、実際にラカゼットがチャンピオンズリーグにアーセナルで出場することはないだろう。
今後数か月が、ラカゼットがどのような選手としてアーセナルファンの記憶に残るかに決定的な役割を果たすに違いない。
もちろん、キャプテンというのはチームを代表する選手だし、もうすぐラカゼットはアーセナル在籍歴が5年に近づこうとしており、実質的にも若手たちを率いるリーダー的存在だ。
さらに、この役割を彼はピッチ上でも果たしている。ラカゼットの役割は(ファンとしてはもう少しそれも見たいとは言え)そこまで得点やシュートの比重は大きくなく、むしろアーセナルの若きサイドアタッカーたちの能力を引き出すのが仕事だ。
今季アーセナルの90分当たりのシュート数ランキングを見ると、ペペ、サカ、スミスロウ、マルティネッリとサイドの選手たちが名を連ねている。
契約満了に伴う退団が近づいているにもかかわらず、ラカゼットがキャプテンに指名されたというのは、彼のプロフェッショナリズムの証明だろう。
彼は暫定監督を除いて3人の監督の下でプレイしているが、彼ら全員と良好な関係性を保ってきた。他のアーセナルに高額の移籍金と共にやってきた選手たちがどうなったかを考えると、50m£の選手が退団時にクラブから今後の活躍を願ってもらえるのはレアなケースにすら感じられてしまう。
彼は次世代のアーセナルへの引継ぎという非常に重要なタスクを担っており、CL出場権獲得と共にこれを完遂させてクラブを去ることになれば、これはトロフィーとは違うが、ラカゼットが残す素晴らしい置き土産となるだろう。
もしかすると、この間にアルテタはまさに文字通りの引継ぎをチームで進行させており、次期キャプテンを既に決めている可能性もある。
人格面で信頼しているからこそ、退団が決定的なラカゼットをアルテタはキャプテンに指名したのだろうし、彼がチームに残すレガシーは数字にあらわせる成績以上のものがあるのだろう。
だが、サポーターがラカゼットのレガシーをどうとらえるかはおそらく今季の残りによって決まる。
オーバメヤンがいない今、彼があと何ゴール決められるかには今までよりも大きな注目が集まるはずだ。チームメイトを活かすのも重要だが、やはりどうしてもストライカーは得点できるかどうかで評価される。
もちろん、アーセナルでのラカゼットのキャリアを通して、彼の決定力は悪くない。ただ、問題は彼のシュート数があまりに少なすぎるという点だ。彼がシュートを打つためには、すべての条件が整っている必要がある。は非常に完ぺきなタイミングでしかトリガーを引かない。
再びラカゼットにスポットライトがあたる時がやってきた。
残りの期間でどのような活躍を見せたとしても、彼がレジェンドと称えられクラブを去ることにはならないだろう。逆に、この数か月の結果がついてこずとも、ラカゼットは失敗した獲得だった、ということにもならないはずだ。
アーセナルは今季末に向けて明確な目標があり、ラカゼットがそれにどのように具体的に貢献できるかは、ファンが彼をどのような選手だったと記憶するかに大きな影響を与えるだろう。ファンの心の中には、クラブのキャプテン、そしてメインストライカーがこの目標達成にどのように貢献すべきかという明確な像があるはずだ。
もしかすると、これはラカゼットにとっては少々アンフェアな要求ですらあるかもしれない。だが、もしラカゼットがチームをトップ4へと導くことが出来れば、彼は朝日の光を浴び、銀の大砲を煌めかせながらクラブを去ることが出来るだろう。
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ブレントフォード戦では、ジャカがキャプテンマーク着用を拒否したわけではなく、そもそも副キャプテンはティアニーということで任命されていたため、彼にキャプテンマークを渡すようエディーに指示した、ということだったようです。
昨日のキャプテンマークを巡る騒動は、ジャカがキャプテンマーク受け取りを拒否したわけではなく、そもそもがアーセナルのキャプテンマークの序列がラカゼットの次はティアニーということで定められていたため、ジャカがエンケティアにティアニーに渡すよう伝えた、ということだったそうです https://t.co/bcPhutle3n
— 山中拓磨(Takuma Yamanaka) (@gern3137) February 20, 2022
もしかすると、来季はティアニーがアーセナルのキャプテンに就任する可能性もあるのかもしれません。
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