何故アーセナルはリードを奪うと自陣に撤退してしまうのか
アーセナルにとって、4位の座をものにし、マンチェスター・ユナイテッドに勝ち点8の差をつける大チャンスでもあった試合で敗北した衝撃からは立ち上がれていないが、この試合でチームはいくつかの鍵となる瞬間で相手に敗北してしまった。
ユナイテッドはそれぞれの場面で経験とクオリティを見せ、アーセナルにはそれが出来なかったことが試合の命運を分けた。
ただし、我々は今のアーセナルがいささか経験不足であることは既に知っていたはずだ。より気になったのは、アーセナルが押していた時間帯にレッドデビルズ相手に試合を決めてしまわなかったことだ。
そして、このような展開は今季何度か見られてきた。
アーセナルは試合開始から2分で4本のコーナーを獲得するなど、試合への入り方は素晴らしかった。パーティは少し雑なプレイもあったが、チームのプレスは素晴らしく、カギとなるデュエルでは勝ち、正確にボールを動かしてユナイテッドのスキを突くことが出来ていた。
アウェイだが、アーセナルは自分たちのサッカーで相手を圧倒することに試合最初の20分は成功していた。このプレッシャーは結果的に先制点的につながった。少し奇妙な形だったとはいえ、展開的には妥当な得点だった。
今年のユナイテッドは前線のクオリティは備えているものの、チーム全体として良いプレイを見せているとはいえず、この試合でも自信はあまり感じられなかった。
スコアは1-0になり、アーセナルはその実力を見せつけるチャンスだった。
だが、我々は彼らが試合に帰ってくるのを許してしまった。監督は何度も選手たちにもっと上がるように伝えたが、我々は後ろに下がってしまった。
オーバメヤンはこの試合残念な出来だったが、それでもキャプテンはチームにもっと前に出るように指示を出していた。
もちろんこれはチームの誰か一人のせいにすることが出来る現象ではなく、チーム全体でハイラインを保つことが出来なかった。
アーセナルの選手たちはもっと自信をもってお互いを信頼すべきだ。
私はここまでアルテタの厳格すぎる攻撃へのアプローチに対して批判的だったが、今回の試合でリードした後に選手たちが自陣に撤退してしまったのはアルテタの指示によるものではないだろう。
タッチラインでアルテタはチームに向けてもっと前に上がり、攻撃するように叫んでいた。試合後の記者会見でチームはもっと容赦なく、良い時間帯に試合を決めてしまうべきだったとコメントしさえしたのだ。
今のアーセナルがリードを奪った瞬間に引いてしまい、委縮してしまうのはリーダーシップの欠如が原因の一つではないかと思う。
これを避けるためには、ジャカやティアニーのような、声を出してチームを引っ張れる選手が必要だ。パーティは質の高い選手だが、性格的にはシャイで内向的だ。気迫でチームを引っ張るような選手ではない。
さらに、彼はアトレティコでのプレイ経験が長く、引いて守り切るスタイルに慣れている。パーティがもっと高い位置から圧力をかけていけばチームにとってプラスになりそうな場面はいくつかあった。
また、もう一つ注目したい点は、アルテタは監督就任一年目は今季のようなスタイルを志向していなかったという点だ。
当時は3-4-3がメインで、より守備的で現実的、ユニットとして一体となってプレイし、トランジションで相手のスキを突くスタイルだった。
これはFA杯優勝という成功を収め、悪いアプローチだったわけではない。だが、今のアーセナルは進化の途上であり、カウンター主体のチームから試合を支配し続けるようなアプローチに転換するのは容易なことではない。
そもそもアルテタは今の形が理想なのであれば、監督就任当初からそれを目指すべきだったのではないかという意見もあるかもしれないが、なかなか難しい所だ。
例えばユルゲン・クロップはリバプールでの1日目から今と同じようなハイインテンシティなスタイルを志向しており、最初は結果はついてこなかったが、チームのメンバーが揃うにつれて結果が出始めた。
クロップのチームを観れば、チームにモレノやベンテケといった選手たちが居たとしても、90分を通してインテンシティの高い試合を展開しようとするだろう、ということは明らかだった。
アルテタはそれと比較すると、そこまで明快ではない。彼は攻撃的なチームを目指すと言うものの、今の所そこまで明確なアイデンティティは確立できておらず、これがチームを混乱させているという側面もあるだろう。
試合を観ていると、出場している選手たち自身が、試合を通してトップレベルのチーム相手に攻撃で圧倒し続けるという自信を持てていないように感じられる。
アストン・ヴィラやワトフォード、ノリッジやニューカッスル相手の試合ではアーセナルは試合をコントロールし、相手のブロックを攻略できることを示した。
だが、トップチーム相手にはアーセナルは自信を欠いている。
サカ、スミスロウ、マルティネッリは世代トップレベルのタレントだが、皆若い。そしてオーバメヤンは攻撃を継続するという意味では全く助けにならない。
欠点もあるが、他の選手と連携し攻撃に引き込むという点ではラカゼットの方が多くのものをチームにもたらしてくれる。少なくとも彼はパスの受け手になってくれるし、彼にボールを渡せばボールをすぐには失わず、攻撃を繋げてくれると思えるだろう。
ここまでのアルテタ体制下のアーセナルのビッグクラブ相手の勝利はほとんどすべてが3バックで引いて守り、カウンターというアプローチで臨んだ時のものだ。
次のステップはより攻撃的なアプローチを彼ら相手に見せることだろう。
もし守備的に望んでいれば、アーセナルが5-0や4-0、そして3-2での敗北を喫していたとは思わない。だが、1歩前に踏み出すためには諦めずに短期的な結果を犠牲にしなくてはならない時もある。
ただし、サッカーのは結果が全ての世界でもあり、チームは解決策を早急に見つけ出さなくてはならない。
試合のマネージメントと、安易に相手を勢いづけることとは紙一重だ。アストン・ヴィラ戦では65分時点でアーセナルは3-0でリードしており、ここでチームはゆったりと弾いて構えることを選択した。これは賢いゲームマネージメントだ。
だが、自信喪失気味のチーム相手に前半で1-0になったからといって手を休めるのはそうではない。
私はアーセナルが試合展開に関わらず、常に攻め続けて相手を圧倒するのは可能だと信じている。それにはジャカやティアニーといったリーダーに加え、夏にFWの獲得が必要だろう。
アルテタは継続してプレスと攻撃を促すメッセージを発し続けるべきだし、選手ももっと攻撃的なチームの一員だと自らを考えるべきだ。
The AthleticのJamesは今のアーセナルは成長痛を経験していると語ったが、確かにその通りなのだろう。ただ、アーセナルは早く大人になってしまう必要がある。
source:
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません