ニューカッスルの買収と、現在のサッカー界の不都合な真実に関して by arseblog

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サウジアラビアのコンソーシアムによるニューカッスルの買収が話題になっている。

彼らはプレミアリーグに、単なるサウジアラビア国家の傀儡企業ではない、と保証しているそうだが、それを信じる者は誰もいないだろうし、そもそもプレミアリーグは実態のある企業であれ、実質的には背後にいるのがサウジアラビアという国家そのものであれ、特に気にかけたりはしないだろう。

ニューカッスルファンにはこれを好意的に受け止めている者も多い。彼らはマイク・アシュリーが大嫌いで、彼が去り、その代わりのオーナーは世界一億万長者かもしれないのだから、歓迎する気持ちもわかる。

仮に新オーナーがスタン・クロエンケだったとしても、マイク・アシュリーではないというその一点のみでニューカッスルファンは大喜びすることだろう。嫌悪の念が強すぎると、どのような代役ですら歓迎できてしまうものだ。

スポーツウォッシングに関する記事をいくつか読んだが、最近のサッカー界について最も心冷えるのが、このようなスポーツウォッシングのためにサッカークラブが利用されるのが避けられないところまで来てしまったということだ。

サッカー界のトップに立つ人物たちが、サッカーをこのような状況にしてしまったのが残念でならない。

今や、サッカーファンは自分がサポートするクラブが競争力をつけて欲しいと思ったら、億万長者、オリガルヒ、あるいは国家がクラブを買収してくれることを願わなくてはならなくなってしまった。

これは非常に陰鬱なことだ。

サッカー界のオーソリティたちは、ある程度のファイナンス面での平等性を維持しようとするような施策(FFPよりもより歯ごたえのあるもの、という意味だ)を打つ代わりに、彼らは世界中の億万長者に媚を売り、その結果、サッカーに対する伝統的なファンの意見はほぼすべて無視されるようになっている。

ファンの都合ではなく、大手の放映局の都合で試合の日程は決まり、億万長者のオーナーが移籍市場を動かし、結果として選手たちと代理人はそこに付け込んで破格の報酬を得る。

広告代理店と金融業界のマーケター、ギャンブル会社がサッカーを利用してとんでもない量の広告を展開し、今や仮想通貨業界の会社まで参入し、ファンがクラブに影響を及ぼす一つの手段であるかのように変装させ、本来は価値のない彼らのシットコインをファンに売りつけている。

私は別にニューカッスルファンを批判したいわけではない。当然ながら、アーセナルファンも、自分たちのクラブのオーナーを棚に上げて、他クラブのファンに道徳的な説教をする立場にはない。

我々のオーナーはウォルトンファミリー(ウォルマート)と非常に深いつながりがあり、彼らはその労働習慣、労働組合を軽視する姿勢、労働環境などを通して、アメリカ社会に大きな悪影響を与える存在だ。

ラムズをLAへと移転させたことを巡ってクロエンケは訴訟に巻き込まれているし、彼が保有する会社は、大の大人が無防備な動物たちをライフルで殺害して、それをスポーツと呼び、トロフィーのように見せる番組を放映している。

さらに、クロエンケは人々をホームレス状態に追い込むこともしている。恐らくこれですら氷山の一角にすぎないだろう。

我々のスタジアムとユニフォームのスポンサーはエミレーツ航空で、そもそもその親会社のエミレーツグループは、ドバイの政府直轄の投資会社の傘下にある。

ドバイでは、同性愛は違法だ。

私はアーセナルがLGBT+の権利と尊厳を認めるためのレインボーキャンペーンを展開することを誇らしく思う。クラブが、そういった団体のサポートをすることを素晴らしいことだと思う。

なぜなら私は、社会で誰も恐れを抱いたり、非難されることなく自分らしくいることが許されるべきだと思うからだ。

だからこそ、それに対する障害を取り除こうとする運動に手を貸すアーセナルは素晴らしい行いをしていると思う。

だが、それは我々がエミレーツをメインスポンサーとしている、ということと相容れるものだろうか?

これが認知的不協和というやつだ。

アーセナルの袖スポンサーは"Visit Rwanda"だ。ルワンダの大統領ポール・カガメがアーセナルファンであるため、このようなつながりが生まれたのだと思うが、ルワンダには汚職や政治介入が渦を巻いている。

Economistの記事によると、カガメは『ルワンダの民主主義を粉々に粉砕し、常に90%以上の得票率で大統領に当選してきた。海外の批判者は皆殺害され、これが彼の諜報機関の仕業であるという証拠は挙がっていないが、カガメは公の場で、彼らの死も当然だ、という発言もしている』のだそうだ。

また、彼は自身に批判的な報道を握りつぶすことも行っている。国境なき記者団によると、RPF(カガメの党)は、8人の記者の殺害あるいは失踪に関与しており、12人の記者を投獄し、約30人の記者が身の危険を感じ亡命を強いられている。

これらはあくまで記者の話で我々とは直接関係ないことだから、何も心配する必要はない、という姿勢がただしいのだろうか?

もしそう考える人がいるなら、恐らく彼/彼女はニューカッスルの新オーナーと馬が合うことだろう。

もしあなたがサウジアラビア国内での人権問題に懸念を感じているとすれば、それは自然なことで、政治的な立場など関係なく、それは当然抱くべき懸念だ。

とはいえ、それを理由にニューカッスルファンが新オーナーを歓迎するのを批判する、というのは少し奇妙に思える。

他のクラブのオーナーも同じような問題を抱えており、なぜニューカッスルファンのみ清く正しい振る舞いが求められなくてはならないのだ?

スポーツウォッシングに関する記事は、そもそもそういった後ろ暗い点のあるオーナーたちがどうしてプレミアリーグで熱望され、歓迎される存在になってしまったのかに焦点を当てるべきだ。

もちろん、そういったダブルスタンダードを適用しているのはアーセナルファンだけではない。アーセナルのオーナーに関する負のイメージなど、他クラブのオーナーの評判に比べればまだかわいいものだ。

チェルシー、マンチェスター・シティ、PSG。そしてボードに並ぶスポンサー企業達。

既に金はサッカーの芯まで腐敗させているのだから、今更道徳面で問題のある新オーナーがニューカッスルを買収したからと言って、大騒ぎするのもおかしなことだ。なぜなら、もう何年も、それはプレミアリーグでは当たり前の光景になっているのだから。

もしかすると、ニューカッスルの件に関しては一線を越えているという見方もあるのかもしれない。これを許してしまえばサッカー界にとって大打撃で、最後の一撃となってしまうかもしれないと。

だがあるいは、今のプレミアリーグのトップのクラブが、自身の脅威となる資金力を備えた競争相手を望んでいないだけ、という見方も出来る。

どちらにしろ、もうずいぶん前に我々が愛したサッカーは死んでいるのだ。それに何の注意も払わなかった連中が、今更騒ぐのも妙な話だ。

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Posted by gern3137