ピエール=エメリク・オーバメヤンに関する話
ピエール=エメリク・オーバメヤンはシンプルな選手で、彼が得意なことは基本的に一つだけだが、ただしそれはサッカーにおいて最も重要なものだ。
彼はビルドアップへの貢献は少ないし、一対一でドリブル突破ができるわけではないし、チームメイトと連携したパス交換も得意ではない。
もちろんだからといってこれらのことがオーバメヤンに全くできないというわけではないが、これらは彼の強みではない。
彼の最大の強みは決定力ですらない。これにより、彼の特長を理解し、それを評価するのはより難しくなる。例えばカバーニと同じように、オーバメヤンは簡単なチャンスをは外すことも多いからだ。
オーバメヤンの最大の強みはペナルティエリアで、他には誰も見つけられないようなスペースに顔を出すことができることだ。
実際にはこれは非常に高度なスキルなのだが、ファンはこれには注意を払わず、このプレイの最後の局面、ゴールにボールをストライカーが悠々と流し込む場面しか見えない場合が多い。
昨年ギャリー・リネカーがアスレチックのインタビューで
「よく昔は『リネカーは試合を通して消えていたが、後半ロスタイムに正しいタイミングで正しい場所に現れた』のような書き方をされたものだが、彼らには私がそれまでに何度も何度も走りこんでいたのが見えていなかったんだろうね。実際に重要なのはスペースを見つけること、そしてその可能性が高そうなところを選んでギャンブルすることなのさ。
これは直感なんかではないんだ。走り込みを繰り返すことだ。ボールが出ないことも多いが、いざボールが届けば、素晴らしいチャンスになる」
とコメントしていた。
リネカーの言う通り、我々の多くはこれらのランに気づかないことも多く、オーバメヤンのような選手が実際にボールが出ない場面でも何度も走りこんでいるということを評価できない。
実際に何回かに一回の割合でこれらのランが成功した場合には、特典を決めるのは非常に容易に見えてしまう。
だからこそ、オーバメヤンやアグエロ、カバーニといった選手たちが、本来受けるべきだけの評価を受けないことも多いのだろう。
とはいえ、昨季オーバメヤンの得点数が減少したのは事実に間違いなく、得点できないのであれば、それ以外にオーバメヤンにできることは限られてくる。19/20シーズンはプレミアリーグ35試合に先発して22得点だったが、昨季は26先発で10点だった。
何度か指摘されている通り、アーセナルはボール前進とチャンス創出に問題を抱えており、これはすべてがオーバメヤンの責任というわけではないだろう。
ただし、どこに責任があるかとは関係なく、今季彼が得点数を上げる必要があるのは間違いない。昨季の彼はモチベーション面で問題を抱えている兆しも少しうかがえたし、ノースロンドンダービーを遅刻でメンバー外となったとき、その決定が気に入らないのが表情から見て取れた。
正直に言って、オーバメヤンの契約延長という決定は、戦術面よりもむしろPR面を考慮したものだったのではないかと思う。確かに、ほぼ独力でアーセナルに杯優勝をもたらした選手の売却を決断するのは非常に難しいことだったに違いない。だが、チームにとってはその方が良い決断だったように思える。
アーセナルの攻撃陣はタレントが多くいるが、バランスに問題があり、昨季の時点ですでにそれは明らかだった。この状態で、今のところアルテタとエドゥは巨額の給与を3年間払うことを決めた選手をうまく生かすためのプランを描けていない。
そして、この課題は今期も未解決なままだ。ラカゼット、ペペ、ウィリアン、オーバメヤンたちを同時に起用するのは難しいが、彼らは4人ともクラブに在籍している。
むしろ将来の希望であるだけでなく、現時点ですでにうまくバランスをとってくれているのはサカやスミスロウ、マルティネッリといった選手たちだ。
また、ペペが昨季後半にかけて好調だったという点もより問題を複雑にしている。
オーバメヤンと同じように、ペペもビルドアップへの貢献は見込めないが得点はできる、という選手だ。アーセナルはこのような選手を2人同時に攻撃陣に起用する余裕があるだろうか?
その意味ではマルティネッリもこちら側のタイプだといえるだろう。攻撃陣の他の選手と連携してチャンスを生み出すというよりも数字を残す、というタイプだ。
私が思うにオーバメヤンはラカゼットよりも優れたストライカーだが、ラカゼットの能力の方が今のアーセナルにはあっている。
既にスカッドは今後の中心となれるような優れたワイドアタッカーが台頭してきており、彼らにより必要なのは、フィルミーノのような、彼らをうまく生かせるようなストライカーだ。
エイブラハムの噂が出ていたが、彼はどちらかというとオーバメヤンよりもラカゼットよりだろう。オーバが最終的にチームを去る際に、アルテタが似たタイプのストライカーをチームに起用しようとするとは考えづらい。
アルテタは中央にファシリテータータイプの選手を起用し、サカやマルティネッリ、ペペといった選手たちが得点することを好むのではないだろうか。
オーバメヤンの中央起用はこれとは全く違うタイプの攻撃が必要になり、理想的には最低でも一人、サイドで彼のためにチャンスが作れる選手が必要だ。
例えば2月のホームのリーズ戦では、サカとスミスロウ、ウーデゴールに囲まれ、オーバメヤンはハットトリックを決めた。
重要な問いは、この形がアルテタの目指すものなのか、ということと、もしそうであるならば、マルティネッリとペペの立場はどうなるのか、ということだ。
対戦相手ごとに異なるメンバーで、異なるアプローチを起用するつもりなのだろうか?
これらは監督が監督が答えを見つけなくてはならないといだが、もちろんオーバメヤンはキャリアを通していつも行ってきたように、いつものやり方で、自分の力でこの問いを解決することも出来る。
大量に得点を挙げることでだ。
19/20シーズンを見ればそれは明らかで、ラカゼット、オーバメヤン、ぺぺの3トップはそこまで機能していたとは言えないし、マルティネッリも出場機会があり、バランス面での問題はあったが、それでもオーバメヤンは得点でその問題を解消していた。
少しくらいぎこちなく、機能していなくても、点さえ決まればそれでいいのだ。監督にとって攻撃のバランスを整えるのはそこまで重要な課題ではなくなる。
サラーは常に自分で点を決めようとし、チームメイトにチャンスを演出することがあまりないかもしれないが、自分で大量得点を挙げるので、それが議論になることはない。
現時点で、選手と監督双方の目線で見て、オーバメヤンの契約延長には疑問符が付き始めているが、まだこの問題は解決不可能なわけではない。
アルテタが考えなくてはならないことが多いだろうが、彼の戦術的な志向をオーバメヤンは気にかけずとも、たった一つのことだけ気にかければ良い。得点することだ。
そして彼は過去にそれを成し遂げてきている。
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