シャンペン・スーパーサカ
火曜の夜、サカはチェコ戦でイングランド代表として先発を果たした。彼のメンバー入りはサプライズで、メイソン・マウントがコロナによる自己隔離に行わなくてはならなかった、という事情がなければ先発はしていなかっただろう。
この日サカはアーセナルファンが既に知っていた事実、彼は例外的な素晴らしいタレントであるという事を示した。サカを毎週見ていないサッカーファンにとっては驚きだったかもしれないが、毎週見ている我々の方が誰よりも先に新たなスターの存在を知っていたというのは当然と言えば当然だ。
マンチェスター・シティファンは私より先にフィル・フォーデンの才能に気づいていたはずだ。
また、今季のアーセナルが8位に終わり、しかもそれより上の順位になった時期がほとんどなかったという点も影響にしているに違いない。今のアーセナルはかつてのように中立のサッカーファンが楽しみに試合を観るようなチームではないのだ。
さらに、自分がファンのチームが出場していないのであれば、決勝以外のヨーロッパリーグの試合を観る人も少ない。
サカの存在は秘密だったというわけではないが、彼が既に将来有望なだけではなく、超一流の選手であるという事実はまだそこまで多くの人に知られていなかったように思える。
また、イングランドファンがサカを評価するに至るまでに少し時間がかかったのには、サカが目に見えて分かりやすいスーパーパワーと言えるような能力を備えているわけではないという影響もあったかもしれない。
人々がジャック・グリーリッシュを気に入っているのは、単に彼がいい選手というだけではなく、彼のドリブルが目を引くからだ。
サカも良いドリブラーだし、他にも多くの長所があるが、どちらかというと万能型で、どれか一つが圧倒的というわけではない。
英国人選手にとって国内メディアで注目を集めるためのショートカットは当然イングランド代表としてワールドカップやユーロで活躍することだが、サカはチェコ戦でマンオブザマッチに選ばれた。この日から英国民に注目される存在となったわけだ。
みなさん覚えているだろうか、なんとイブラヒモビッチはイングランド戦で例のバイシクルキックを決めるまでは単なる格下相手に大量得点を決めるだけの選手だと思われていたのだ。
この時点であれはエールディビジ2度、セリエA6度、ラリーガを1度優勝した経験があったというのに。だがイングランドでトップレベルのタレントだという評価を得るにはイングランド戦ですさまじいゴールを決めることが必要だった。
だが一方で、アーセナルの選手がイングランドで次世代の新星として評価されるというのは特にイングランド人のアーセナルファンとしては諸刃の剣でもある。
まずはその選手のことを誇りに思う気持ちでいっぱいになり、私が18か月前からずっと見ていた選手の才能に国中がようやく気付いた、という奇妙な満足感を覚える。
しかし、イングランド代表(恐らく他国でも事情は一緒だろう)の注目度はとてつもないものだ。アーセナルの選手にファンから寄せられる怒りのコメントの一部はやりすぎではないかと感じられることもあるが、それすら主要大会でイングランド代表の選手に浴びせられるものと比べればかわいいものだ。
また、こういった大会はよりカジュアルなサッカーファンの注目も集める(もちろんそれは悪いことではない、誰もがサッカーを楽しむ権利がある)。
恐らく感染症の研究者パンデミックの最中に経験している状況とこれは似ているだろう、何年も自身の専門研究を続けてきたと思ったら、周囲の人々がまるで専門家であるように話を始めるのだから(もちろんこれは少し誇張が混じっており、我々アーセナルファンがサカについて彼らと同じくらいの専門家である、というわけではない)
さてこのような事態になると、自身のクラブの選手が代表のスターであるという喜びは褪せてしまい、花輪を掛けられたと思ったらナイフをかわさなくてはならなくなる。
我々はこれがユーロ96のヒーローとなったデイビッド・シーマンに起きるのを目撃した。彼のこのような地位は余計な注目を集めることとなり、彼はスケープゴートになってしまった。注目というのは特にGKにとっては敵となるものだ。
シーマン以降もスポットライトが当たって以降不調に陥るイングランド代表のGKは多い。ポール・ロビンソン、ジョー・ハート、ロブ・グリーン、スコット・カーソン、リチャード・ライト、クリス・カークランド、フレイザー・フォスターやジャック・バトランドといった選手のキャリアは勢いを失ってしまった。
もちろんこういった流れをひっくり返すことのできる選手というのも存在しており、デイビッド・ベッカムがその例だ。
だが一般的には、一度イングランドファンに存在を認識されてしまうと、彼らの怒りに晒されてしまうことになる。
ハリー・ケインは昨季の得点王だが、保守的なスタイルのイングランド代表での3試合で平凡なパフォーマンスを見せたというだけの理由でこの3週間で急に使い物にならない選手になってしまったと断言するファンが何人もいる。
とはいえ、私はサカについて心配しているというわけではない。彼はプレッシャーにうまく対処できるだろうと確信している。エリートプレイヤーの誰もが通らなくてはならない道ではあるからだ。
だが私が心配しているの私たちで、親愛なる読者の皆さん、アーセナルファンだ。今後サカの一本のパスミスがメディアでまるでサカが大したことない選手であるかのように取り上げられるたびに、彼を擁護するのに疲れることになるだろう。
代表とクラブの試合というのは全く異なり、一緒に練習する時間が非常に限られている以上、我々がプレミアリーグのトップレベル、あるいはチャンピオンズリーグで見慣れているような連携は期待できない。例えばフランス代表はタレントで溢れているが、大してエキサイティングなチームとは言えない。
これもファンがフラストレーションを溜める要因の一つとなる。ファンが非現実的な期待を抱いてしまうからだ。シーマンやアダムズといった選手が経験した通り、我々の愛する選手が批判にさらされることは多い。
かつてオアシスのドキュメンタリーでノエル・ギャラガーが語った通り『タブロイド紙がかかわってくると、ダークサイドに堕ちてしまう』のだ。
だからこそ個人的には、アーセナルの選手がイングランド代表でプレイするのは少ない方が良いと思っている。アーセナルの選手がボールを受けるたびに、不要な注目を集めないように、きちんとパスを成功させるかどうか息をのんで見守らなくてはならないからだ。
私は正直イングランドの試合を観る時にこのような緊張感から解放されたいと思っているが、とりあえずは我々のゴールデンボーイが評価されるのを見守ろう。
次の試合でサカがどのようなプレイを見せたとしても、いきなりメディアから悪役に去れるという事はないだろう。だが、今後彼のプレイがより注目を集めることは間違いない。
サカがそれに対処できるのは間違いない、だがアーセナルファンにその準備は出来ているだろうか。
source(当該サイトの許可を得て翻訳しています):
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません