アーセナルのスカッド刷新におけるリチャード・ガーリックの役割
2021年の夏の移籍市場はすぐそこに迫っており、アーセナルが大幅なスカッドの入れ替えを行うだろうと見られている。
この移籍市場でテクニカルな判断を行うのは監督のミケル・アルテタとテクニカルディレクターのエドゥだ。彼らはラウール・サンジェイの解任を受けて移籍市場の主要な仕事を担当している。
サンジェイほどは注目を集めなかったが、もうひとりアーセナルを去ったのが契約担当のハス・ファーミーで、彼の穴を埋めるためにアーセナルは1月にリチャード・ガーリックの任命を発表した。
彼は法律系のバックグラウンドがあり、ウエストブロムで2010-18年まで管理職についていた。彼の主な仕事は選手や代理人相手の契約交渉で、これに加えて、クラブの規則を制定したり、その違反者の処罰の決定などにも携わっていたそうだ。
どうやら彼はユーモアのセンスもあるようで、新聞のインタビューでガーリックはこう語っていた
『交渉中に代理人が、彼の母が庭に新しいゲートをいくつかつけるからそれをクラブが買わなくてはならない、と要求してきたんだ。「彼の週給を考えたら息子がそれくらい支払う余裕はあるだろ?」と返してやったよ』
また、代理人のついていない選手との交渉では以下のような出来事があったそうだ。
給与と契約ボーナス額はとんでもないものだった。だがさらにとんでもなかったのは契約解除条項で、もし我々が降格した際に、特定のクラブからオファーが届いた場合はフリー移籍を可能にするように、というものだった。その5クラブというのはマンチェスター・ユナイテッド、リバプール、レアル・マドリード、バイエルン・ミュンヘン、ハンブルクだったんだがね。笑いをこらえるのに必死だったよ。それを言うならウエストハム・エヴァートン・サウサンプトンだろ!とね。トップ6なんてとんでもない。
バイエルン・ミュンヘンの名前を聞いたときは隣にいたテクニカルディレクターに「こいつは我々をからかっているのか?」と目線で聞かなくちゃならなかった。結局我々はこの条項を彼の契約に含めることに合意したよ。だって、そんなクラブからオファーが来ることがありえないのはわかり切っていたからね。
長年ウエストブロムで務めたのち、ガーリックはプレミアリーグのフットボールディレクターの職に就いた。
アーセナルでの彼の仕事の一つは、サッカー界の組織との外交役を務めることだろう。彼自身がFAで勤務した経験があるし、今アーセナルと非スーパーリーグ参加クラブとの関係は冷え切っている。
ビッグ6の上層部は皆プレミアリーグの委員会から外されており、もしかするとヴィナイに代わってアーセナルの代表としてプレミアリーグ関連の会合には出席することになるかもしれない。
だが、ガーリックの一番最初の仕事は残り2年となっているエミール・スミスロウとの契約延長をまとめることになるだろう。陰鬱なアーセナルの今季において彼の台頭は一筋の光のようなものだが、選手側はアーセナルを愛しているはずだし、そこまで難しいタスクではないだろう。
問題はその次で、アーセナルは2023年に契約切れとなるレノ、ベジェリン、ジャカ、ネルソンといった選手たちの将来に関してそろそろ決断する必要がある。もちろん残り契約が一年となっているラカゼット、チェンバース、エルネニーはなおさらだ。
実際に誰を放出し、誰と契約延長を目指すのかという決断自体を下すのはアルテタ/エドゥになるだろうが、ガーリックはそれに沿って交渉を行う必要がある。
もう一つ興味深いのは、アーセナル取締役会におけるティム・ルイスの役割だ。彼は実質的にアーセナルにおいてクロエンケが最も信頼を置く人物で、したがってアーセナルの経営状況を考えるに、ガーリックは多くの関係者の利害を調整しながら交渉を行う必要がある。
例えば、ラカゼットを例にとってみると、もしかすると買い手が現れなければアーセナルはラカゼットとの契約延長に動くかもしれない。1年延長をオファーしているという報道もある。これらの詳細を詰めるのはガーリックの仕事になるだろう。
先日アスレチックが、ハス・ファーミーがアーセナルを去った理由の一つはエドゥの権限が拡大したことにフラストレーションを覚えたからだという興味深い報道を行っていた。
全ての補強はエドゥを軸に行われるべきだと考えているらしい。もしこれが事実であればエドゥが移籍金や給与の限界なども決めるのかもしれない。
これは少しベンゲル時代に彼が全てを行っていた時のことを思い起こさせるものがあり、実際にはこういった事柄は契約のエキスパートに任せるべきなのではないか、と感じられなくもない。
だが一方で、責任の所在は明確になるだろう。
夏の時点でアーセナルは攻撃的MFの獲得に失敗し、選手放出も上手く進められず2人の選手を登録外にすることを強いられた。
もちろんCOVIDの年であったというのはあるが、それでもこれが彼の責任であることは間違いなく、またより専門的な知識を持つ人物からのアドバイスを仰ぐ余地はあるかもしれない。
報道ではエドゥがバロガンの残留を決断させるうえで重要な役割を果たした層で、これに関しては評価されるべきだろう。この夏のアーセナルの課題の多さを考えると、むしろエドゥは純粋にテクニカルな領域にフォーカスするべきかもしれない。
ガーリックの存在がエドゥの重荷を軽減してくれることだろう。
ガーリックはサッカークラブにおける契約管理や法律面という意味ではファーミーよりも経験豊富だし、彼の知見がクラブが正しい方向に進めるのを助けてくれることを願おう。
ソクラティスやエジルといった選手たちの退団によりアーセナルの支払う給与は既に減少しているが、アーセナル退団が噂されている選手の多さを考えると、これはさらに減るだろう。
昨夏パーティとアワールの同時獲得という試みはアーセナルの選手放出が上手くいかなかったため失敗に終わったが、既にスカッドのスリム化は進みつつあり、状況は変わっている。
アーセナルは夏に大きく動く可能性はある。その際の懸念点はやはりその資金の使い道で、アルテタとエドゥはこの点ルーキーと言って良く、ガーリックの仕事はアーセナルの長期的な利益を損なわないような形でこれらの契約を着地させることだろう。
アーセナルの最近の選手獲得を見れば、払い過ぎを避けるという意味で改善の余地が大きいのは明らかだ。ガーリックがいれば、アーセナルは物事をよりスムーズに行えるようになるかもしれない。彼の仕事はもう始まっている。
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「ジャーナリズムにおける不正は、今も広く残っている」王子様の言葉は、プレミアファンには当然に響く。ネオフーリガンと彼らの結託はサッカーを滅ぼす。人身売買を当然のように語る風潮、ガセと事実のパッケージング。これらが人品を下降させ、言葉の暴力の嵐を呼ぶ。今、アーセナルファンに出来る事は何か。
建前を繰り返すアルテタに勇気を。